ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,211 / 2,518

第1211話 戦闘終了

しおりを挟む
 先頭を走っているライガが聖国の軍に接触した。音は聞こえなかったが、その光景に合わせた音をつけるとすれば、

 ドゴォーーーン!!

 と言った感じだろう。一振り何人と言った感じで、人がポンポンと飛んでいくのだ。

 ライガが今突っ込んでいった場所は、神殿騎士ではなく強めの兵士が集まっているエリアなので、ライガの強さが極まって見える感じだ。

 それにしても、残っていた兵士が半数になったとはいえ、こちらよりは人数が多いのに何で打って出る事にしたのだろうか? もっと数を減らしてから攻めればいいのではないだろうか?

 平地での戦いになれば、ある程度レベル差があっても多い方が有利になるんだと思うんだけどな。レイリーには何か理由があるのかな?

 ん? マップ先生に気になる情報が表示された。

 前線で暴れていたライガが、スカルズのメンバー2人と一緒に後方に下がり始めた。その場所の映像を拡大すると……ライガが2人に引きずられている。何か命令無視でもしたのだろうか?

 あれ? 向かっている先には、治療院に勤めている人がいるんだけど……どうしてだ? あの人たちは前に出ないって話じゃなかったのか?

「どういうことだ! レイリー!」

 俺は魔導無線に向かって叫んだ。そうするとすぐに反応が返ってくる。

 レイリーの反応は、元々は前線に出さない話だったが、野戦病院に連れてくる前に亡くなってしまった兵士がいる……と聞いて、思い悩んでいたそうだ。前線にいればあの人は助かったのかもしれないと。エリクサーが切れた直後に重傷を負ってしまった兵士がいたのだとか。

 それは治療院の人が考える事じゃない! と咄嗟に叫んだが、レイリーも治療院の人に同じ事を言ったらしい。他にも説得をしたが、レイリーは納得させることができなかった。

 それでもレイリーは、前線に出ない様に色々対策をたてたのだが、力技で突破されてしまったのだとか。治療院の人たちはそこまで強くないはずなのに。

 でも話を聞いてみれば簡単だった。いくら対策をたてた所で、兵士が強引に治療院の人を拘束できるわけでは無かったのだ。拘束すれば仲間がケガをした時に治療してもらえない、だからといって放置はできない。

 この板挟みになった兵士の心境で、肝の座った心の強い女性を止める事など不可能だろう。いや、この場合、覚悟を決めた女性を止められる人はいないかもしれない。

 最終的には、兵士のために動いているのだし……

 だからレイリーは、条件を出したのだとか。

 それが、塹壕から打って出てからしばらくは待機。そして、ライガとスカルズの護衛をつけるので、護衛の近くに必ずいる事……だってさ。

 でも、打って出る必要が何処にあった?

 それは、今回参加している兵士による懇願で平地での戦闘を行う事を決めたらしい。経験を積みたいという建前で、自分たちの街を襲おうとした聖国の奴らを倒したいと目が語っていたらしい。

 色々口を出したいが、レイリーからの要請は無いので介入はできない。任せると決めたのに、この戦闘の終盤に来て介入するとかできないよな。

 文句を言うのは全てが終わってからだ。治療院の人にもしっかりと話をしないとな。

 殲滅戦が始まって3時間、敵側の負傷兵や体調不良等で動けない兵士以外で、ほとんど生きている者はいなくなっていた。

 こっちの兵士は、更に15人が亡くなってしまった。15人中10人がほぼ即死する攻撃を受け亡くなってしまっているため、治療が間に合わなかったのだ。残りの5人は、冒険者に毒を使われて解毒薬のランクが足りずに治療できなくて亡くなってしまった。

 だけど、治療院の人が前に出た事で100人程は死なずに治療ができたと推察されている。

 圧倒的にこちらの軍が強い事は分かっていたが、ここまで死者の数に違いが出るのだろうか?こちらがもっと死ねばいいというわけでは無いが、不思議に思ってしまう。

 そして、毒を使った冒険者は、武器を取り上げられ同じ毒で殺されている。

 敵の陣地に乗り込んだこちらの軍は、病気に苦しんでいる兵士を殺し始めている。マップ先生の光点の減り具合で把握している。聞いてはいたけど、あの状況の兵士達を殺すのにためらいを感じているのは、俺が地球生まれだからだろうか?

 ダブルの冒険者の近くに行くと、動きが悪くなっているが抵抗を見せているような光点の動きを見せている。冒険者は全員殺す事にしたのかな? それにしては、囲んだ後にこちらの軍の動きはないけど……

 あ! レイリーが来たみたいだ。何か話すのだろうか? 殺すだけなら、兵士でも問題なく達成できるはずだもんな。

 10分程様子を見ていると、3人いるうちのダブルの冒険者の1人の光点が消えた。そいつがトップのクランの光点も全部消えた。話し合いが決裂したのかな?

 そして他の冒険者は、兵士に囲まれて塹壕に向かっている。良く見たらレイリーの他にライガも来てるな。敵の数が減ったから、治療院の人はスカルズに任せてたのかな? あぁ、ケモミミ3人娘も来てるみたいだな。

 動きが悪くなっているとはいえ、高ランク冒険者が多いから当たり前の事か。

 結局、聖国の生き残りは冒険者56人だけだった。それに対してこちらの軍の最終死亡者は49人。どちらかが死ぬまでの殲滅戦だったのに、こちらの被害は1%に満たない……この差は何だろう?

 レイリーが生かして捕まえた冒険者の処遇を伝えに来た時に聞いてみた。

 簡単に言えば、回復できる手段が多かった事だ。特に、エリクサーや高ランクのポーションは、戦争で使われる事はまず無いからな。それに治療にあたる魔法使いが、圧倒的に多く技術も高いため戦線に復帰できる兵士が多かったための結果だ。

 一番は塹壕の存在だ。塹壕内で人数の不利はなく、こちらの思惑通り戦えた事が被害が少なかった大きな理由だろう。

 戦争前の予想では5~10パーセントの被害が出ると予想していたようだが、かなり少なく済んだとレイリーは喜んでいたが、250~500人は死ぬと予想していたとか。これを初めから知っていたら、最初から介入したと思う。

 あれ? 何で俺って、戦争なのに死者が出ない方向に考えてたんだ?

『それは、主殿が強すぎるからですにゃ』

 ダマが俺の心を読んで念話をしてきた。

 危険な状況に陥った事はあっても、負けた事ってなかったな。フレデリクで奴隷兵に襲われた時以外は、快勝だった気がするな。あ! フェンリルの時はいったん撤退して、秘密兵器まで使ったな。

 そういえば、冒険者の処遇は奴隷に落とすそうだ。しかも、使い捨てを念頭に置いた奴隷兵とするようだ。ディストピアやゴーストタウン等、俺の管理下にある街では奴隷の扱いは他の街に比べてはるかに良いが、犯罪奴隷に対しては非常な程扱いが悪い。

 犯罪奴隷になった奴によっていろいろ違うが、今回の冒険者は兵士より過酷な訓練をして戦闘能力を上げるらしい。ただ過酷な訓練をさせるのではなく、適切な食事の管理までして肉体まで改造するレベルで強化して、前に送り出す奴隷兵にするのだとか。

 王国の奴隷兵を思い出すような扱いだな。しかも、絶対に解除できないツィード君特製の奴隷の首輪をつけているので、解除する方法はマスターによる解除のみだ。

 でも、死んだ兵士達の代わりにはならないよな。、49人の家族に対する補償をしっかり考えておかないとな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

処理中です...