ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1199話 踏ん張り所

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 疑問に思った事があったので、レイリーに聞いてみた。

「でも、ゴーストタウンや綾乃がいた帝国から、売りに出されたものがあったりするんじゃないか?」

「そう言った物は、ブラックマーケットでも法外な値段がついています。それこそ財政が傾く覚悟で購入しないと買えない程高いです」

 何でそんな事を知っているんだ? そこで、俺はある人物の顔が浮かんだ。

「もしかして、ゼニスか?」

「分かってしまいましたか? 完全に流出を防ぐ事は出来ないので、ある程度意図的に放出しています。管理してブラックマーケットに出しているのです」

 まさかの黒い商売を街ぐるみでしているみたいだ。どんな街でも、ブラックマーケットは必要悪として存在するが、ゴーストタウンでは街がブラックマーケットを管理しているようだ。

 ブラックマーケットの表のトップは、ゼニスやゴーストタウンの領主では無く、ゼニスがどこかから拾ってきたマフィアのボスみたいな人だとの事。表面上全く繋がりはないが、ゴーストタウンで地下道等は作りたい放題なので、接触を知られる事は無い。

 そんな男がブラックマーケットを管理しているのだとか……心配になったのは、違法性のあるモノが売り出されていないか心配になった。

「シュウ様、裏ではあのゼニスが管理しているんですよ。懸念されているような物は売られていません。そう言う物を持ちこんだ人間は、例外なく牢屋行きですね」

 心配しているような事は何もなかった。さすがゼニスだ。

「でもさブラックマーケットって、後ろ暗い物を売る場所じゃないのか? イメージ的に違法性の高いものが売られている感じがするんだけど」

「ゴーストタウン以外ではそうかもしれないですね。他のシュウ様の街でも、多少違法性のある物もありますが、麻薬と言った悪影響のある物や違法奴隷以外は、容認しています。気になるようでしたら、ゼニスの方に聞いてください」

「ゴーストタウンだけじゃなくて、商売と名のつくものは全部ゼニスが管理してたり?」

 そうですよ。とレイリーは笑顔で答えてくれた。最後にレイリーが、高ランクの魔法薬は法外の値段を設定して、欲しいと思っている人達を調べ情報を収集するそうだ。有用な人間には、情報提供や協力をしてもらいやすく売るそうだ。

 こういった取引は、ブラックマーケットではよくある話だとか。

 もちろん、害悪になる人間にはそういった取引はせず、財政が傾く覚悟でなければ買えないそうだ。実際に払うなら、売らないという事は無いらしい。

 色々知らない事があるんだな。

 レイリーは、明日に備えて前線で待機すると言って出て行ってしまった。

 5日目は、予想通り聖国に神殿騎士の5000人の援軍が到着した。大きな衝突は無かったが、弓による牽制があった。俺たちが竜騎士を使って陣地に行っている眠らせないための爆撃の意趣返しでやってきたと判断されている。

 竜騎士による爆撃は続いている。それにより、聖国の軍はかなり疲弊している。聖国は睡眠をとらせるために隠れて移動して寝させようとするが、俺たちには丸見えなので陣地以外にも爆撃して邪魔をしている。

 ここまで疲弊していれば、睡眠の邪魔をしても寝続ける兵士は出てくる。どちらかというと、気絶して寝ている感じに近い気がする。質の高い眠りでは無いので疲れが取れずに辛そうな顔をしている。

 まぁ、攻めてきたからには手加減はしないけどな。

 6日目……聖国が大きく動いた。援軍が到着した事により、最大動員数は15000人程。後3日後に近くの街からの援軍が15000人が到着する。兵の数が倍になる。

 戦力的には、今集まっている聖国の兵士に比べれば、後発の兵士はレベルも低く数以外のアドバンテージは無いだろう。

 3日前の衝突した際に1000人程が継続戦闘が不能になっているので、14000人程が聖国の兵力となっている。その内の半数が攻勢に出てくるようだ。

 前回のように3方向からの攻撃では無く、正面からの力押しだ。壁で誤魔化してはいるが、俺たちが動員できている兵数が少ない事がバレているようだ。中立地域の兵士と冒険者が参加してくれているが、戦闘可能な人員は……

 兵士が3000人、冒険者が2000人の合わせて5000人程が戦闘可能な人員である。聖国に比べて士気が高いとはいえ、こっちは全力であたらないといけない。聖国は入れ替える事が可能なのだ。状況は厳しいと言わざるを得ない。

 ただ、今回の戦争でディストピアの冒険者は参加していない。いや、こう言うと語弊があるな。ディストピアの特性上、参加させていないのだ。

 俺の街の兵士に、奴隷や元奴隷に対して何か言う奴はいない。だけど、他所から来た冒険者が自分の意思で戦争に参加しているとはいえ、そういう人間達に対して偏見や侮蔑をするやつらは絶対いるのだ。

 ディストピアの行政府のグリエルには、毎日毎日冒険者からの請願が来ているのだとか。ディストピアは、他の中立都市とは違いほぼ独自に生活しているため、住人の多くは他の街の人間と接点がない。

 だけど、みんなが街を作った俺に感謝しているのだとか。これは、ゴーストタウンでも言える事なのだが、ディストピアは特にその傾向が強い。それが、税金をとっていないのに、自主的に行政府にお金を置いていく事からもよくわかるだろう。

 感謝が強いためか、兵士も冒険者も簡単に命を懸ける傾向がある。そのせいで、今回の戦争では特に使い難い人員なのだとか。兵士は守る事を仕事としているので、動員しているが冒険者は違うからな。

 ディストピアの冒険者の中には、魔法が得意な人が結構な数いるので今いれば戦力になったが、今はいない人達の事を考えてもしょうがない。

 正面戦力比は5:7、レベルを考慮すれば同等と言った所だろう。今日は虎の子の魔法部隊を使うようだ。昨日、魔力を回復する魔法薬……マナポーションの在庫を確認していた。マナポーションを使ってまで魔法で攻撃するのだろう。

 しばらくすると、聖国の軍とこちらの軍が接触する。作戦は変わらず、こちらは打って出ずに、塹壕やトーチカを作った陣地に引き込む形で戦闘が開始された。
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