ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1180話 大掛かりな計画

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 俺はたっぷり2週間使って、フレデリクの街の水道計画の原案を完成させた。完成させたというが、原案は原案なので、何処から土を持ってきてどこら辺に積むか、貯水池となる場所の管理等について簡単にまとめただけである。

 何故フレデリクかと言えば、この世界で初めて入った街で、試験農園もやってみたので、今回も試験的な事をフレデリクで焼てみようという思い付きだ。本当に開始されるのかは、グリエルやガリア、ゼニスに領主代行等々を集めた会議で決定するんだけどね。

 そういえば3D画像なのだが、マップ先生はもともとディスプレイの中に3Dで表示されるのだが、その機能がいつの間にか変化していて、立体的に空間投影されるような形で表示する事ができたのだ。それをカメラを使って画像を取り込んで、パソコンに表示できるようにした。

 これを発見したのは、原案を作り始めて4日目の昼くらいだったかな?これのおかげもあって、予想以上に早く原案の作成が可能となった。

 どのように作成したかというと、A列車〇行こう! みたいなゲーム感覚で場所を指定して物を配置していく形だ。建物を建設する必要はないし、そのための資材集めも必要ない。簡単なゲーム感覚で作ってしまった。

 それがいい事なのか悪い事なのかは俺には分からないが、魔法がある世界なので元の世界に比べれば早く作れるかもしれないな。

 いや、重機が無いからさすがに無理か? 俺たちクラスの魔法使いがいれば簡単だろうけど、基本的には人力でやる予定だし、最後の補強として土魔法で強化する形になると思うからな。

 今は、みんなを魔導通信でつなげて会議をしている。魔導列車があるので、1日あれば全員が集合できるのだが、移動に時間をかけるのがもったいないので、映像と音声を表示する形で会議をしている。

 発言する人は基本的に一人ひとりで、疑問があればチャット機能を使って周囲に伝える方法をとっている。対面していても、複数人で声を出すと混乱するからね。チャット機能をうまく活用している。

 とはいえ、タイピングが苦手な人もいるので、音声機能を使って文字に変換できるシステムを搭載しているので、苦手な人でも大丈夫! 発言する人以外の音声は切れているので、他の人に聞かれる事は無い。

 日本の国会みたいに、汚いヤジを聞く必要もないし、妨害される心配もない。あれはあれで政策に問題があるので抗議しているって側面もあるだろうけどね。人数の多い政党が強引に審議を終わりにさせるための、対抗手段みたいな物もあるからな。

 とはいえ、今の所俺の管理下にある街の領主代行は、問題があればすぐに報告や連絡をしてくれるので、それについて検討する事が素早く出来ている。

 民主主義国家とは成り立ちが違うから、ヤジなんてないのは普通か? 普通なのか?

 王国では、政敵がいて結構面倒な問題になっていたよな? う~む……意見を言い合っている場所を見たわけでもないのでそこら辺はよくわからないが、日本のそれと大して変わらない状況なのではないか? と思った。

 そこまで考えて、ふと思った事がある。

『力に魅了された人の醜い争いの1つが、政治なのではないか?』

 という事だ。

 力にもいろいろあるだろうけど、政治家の力って権力……社会に与える影響力の事だよな。その力をふるいたいがために政党を組んでいるのが日本、王国はその権力を得たいがために派閥を作る。根本的な行動原理は、民主主義とか王政は関係ないのかもな。

 ただ、社会構造的に民主主義国家は、圧政は行えない。王国……貴族制であれば、重税をかけても問題はないが、日本ではそれは無理である。日本にも税金で苦しんでいる人はいるが、根本的な問題として貴族制で困窮しているのとは、まったく理由が異なるのだ。

 そこまで考えて、日本の常識とこの世界の常識を比べる事の無意味さを感じて思考を止めた。

 そんな事を考えていても、グリエルとガリアがしっかりと会議を進めてくれている。

 どの街も、俺の管理下に入ってからは、衛生面の改善により死亡者が減っている。それに、治療院を作った事によりケガによる死亡者も減り、怪我をして働けず家族が奴隷になるという事も無くなっている。

 治療院が格安、気持ち程度のお金で治療するため、元々街にいた治療師などからは批判が出ているが、暴利をむさぼっていた奴らなので、住民からは非難され街から出て行っている。中には「俺が治療院を運営してやる」なんて上から目線の奴もいたが、問答無用で追放した。

 現状で何の問題もないし、運営の大半は商会の人間がやっているので、商売としてもしっかりと成り立っている。

 街の人たちの広義の意味での健康のために設置したのが治療院なのだ。赤字になってもいいように、商会と抱き合わせで進出させているのだ。孤児院は商会の金で運営させていたが、今では孤児院も教育の一環として始めた、養鶏や農業で採算がとれてしまっている。

 商会が先行投資して土地等を確保できているための結果なので、孤児院だけの成果ではないけどね。

 っと話がそれた。

 衛生面が良くなる事によって、住民の死亡率が下がり健康でいられる人の数が増え、安定した街運営ができる事を全員が理解しているので、水道の件についてしっかりと話が進んでいる。

 そこでフレデリクの領主代行が、

『貯水池の水源は川を使うんですよね? 川の水を水源にあげるのが、バレルで採用された足踏みポンプですね? 水質は大丈夫なのでしょうか?』

 それを聞かれて、グリエルが俺に視線をむけてきた。

「えっと、水質の確保については色々考えてはいる。ろ過器を使って水を綺麗にしながら送り出す予定だ」

 そう言ってから、簡単にろ過器……という程大層な物ではないが、ろ過の仕組みについて説明する。

 今回俺が考えているのは、1段を3~4つ水槽に分け、それを縦に4段積み上げ5段目に貯水池と管理棟を建てる。

 各段で、砂や砂利、小石を使った簡単なろ過をするが、4段目から5段目に入れる際に、上から

 布⇒砂⇒活性炭⇒砂利⇒活性炭⇒小石⇒きめの細かい布

 と言った感じの手作りに近いろ過器の説明をした。念のために作っといてよかった。

 俺は目の前……カメラの前で、泥水を上から入れ、出てきた水を全員に見せる。音声は全員分がオンになっており驚きの声が聞こえた。

「こんな感じで、汚れた水もろ過できます。商会では、この小型の物を冒険者に販売しています。行商人等は、水の出る魔導具を使いますが、魔力を温存するためにこう言った物を使っているんです。そうだよな、ゼニス?」

 そう尋ねると首を縦に振り肯定してくれた。

「今回はそれを大掛かりにして、貯水池に設置するという形かな。もちろんそれだけで水を賄えるとは考えていないので、今回街に設置した水道の魔導具も貯水池に設置するつもりです。住民に手伝ってもらい1リットルいくらといった感じで、買い取る方式も導入できればと思います」

 貯水池の水量に限界はあるので、人数を考えながらだが街にお金をばらまく形だ。はした金ではあるが、住民からすれば使っていない魔力をお金に変えれるのだ、貯水池まで行く必要はあるが、それだけでお金が手に入れられるなら悪くない話だと思う。

「色々と研究をしなければいけないと思いますが、現存する技術だけで作る事が可能です。ろ過器も付け替えができるように研究しなければいけません。地下を巡らせる水道管の整備も考えなければいけません。

 問題は多々ありますが、時間は沢山あります。孫世代から着工できれば十分に間に合うはずなので、これからも持続的に考えていきましょう」

 そう言って俺は話を止める。

 この事業は今すぐに始めなければならない事では無いのだ。長い目で見て、色々検討して問題なければ着工でいいのだ。検討に20年30年かかろうが、街に設置された水道の魔導具が壊れる前に完成すれば問題ない!
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