ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,168 / 2,518

第1168話 面倒くさいけど!

しおりを挟む
 サラディルの街を出て、勇者と逆賊貴族の兵士を大きく迂回するように、簡易シェルター型ダンジョンへ向かう。

「シュウ君、思ったんだけどわざわざ、地上を移動する必要も無いと思うんだけど」

 ミリーにそう言われて、馬鹿正直に簡易シェルター型ダンジョンに向かおうとしていた時に、正攻法でなくてもいいのに! って考えていたはず。それなのに、地下を進むっていう発想が欠けていたとは……最近頭が固くなってるな。

 ただ、現状では見晴らしがよすぎるので、ブラインドになっている場所まで移動して、マップ先生で俺たち以外の存在がこちらを見ていないかを確認する。

 問題が無かったので、魔法で地下への入口を作成する。一応、ミリーの家族にダンジョンマスターである事はしばらく教えないつもりなので、魔法で代用する事にしたのだ。ここら辺はあらかじめ会議で決めていた事なので、色々考える必要もなかった。

 この方法をとれば、簡易シェルター型ダンジョンも魔法で作ったと、ミリーの家族は考えてくれるだろうという判断だ。

 そもそも、魔法でどんなことができるのか分かっていないミリーの家族……弟妹は、すごーい! ねね! あれって何? など、大はしゃぎでミリーに色々聞いている。

 年齢的にミリーの事を覚えていないんじゃないか? と思う年齢の弟も、ミリーが母親に似ているからか、親しみを持っているのかもしれないな。

 方角を確認しながら掘り進めていく。ミリーの家族は、これがどれだけズレた事をしているか分からないので、いちいち言い訳する必要も無くて楽な物だ。

 入口は入ってすぐに塞いだので、今は所々に通気口をあけながら空気を取り入れて進んでいる。後でダンジョンマスターのスキルで潰してしまえば、使われる事も無いので大丈夫だろう。

 さて、到着した。ミリーの両親は、ミーシャを見て初孫! と感動してすり寄って行ったが、ミリーに力尽くで引き留められている。弟妹たちも猫とケットシーの防御を突破できずに、にらみ合いが始まってしまったのだ。

 そこへ、

「ようこそ、ミリーさんのご家族様。ミーシャ様をかまいたい気持ちはわかりますが、まずは身綺麗にしていただきたいと思いますので、ミリーさんについてお風呂へ入ってきてください。使い方を教えるのは、ミリーさん1人で大丈夫ですか?」

「あ~、お風呂の使い方は問題ないですよ。頻繁に入れないだけで、湯船にも入った事はありますからね」

 そう言ってミリーが家族を引き連れて、お風呂場へ向かっていく。そもそもミリーの家族は、ここにお風呂がある事自体不思議に思っていない様子だ。疎いと言ってもこれはどうなのだろうか?

 ターゲットになっていたミーシャや、一緒にいたスミレやブルムも、何か面白い事をしているくらいの感覚で、手を叩いたりして大はしゃぎだったな。人見知りとかしないのだろうか? 我が子ながら少し心配になってくるな。

「さて、ミリーと家族さんはお風呂へ行ったな。俺たちは俺たちのするべきことをしよう。ある程度状況は把握できているよな?」

「街の外に、この前捕まえた勇者と敵のはずの、この国の兵士が一緒にいるので不思議とは思っていました」

 これは、こっちに残っていたキリエのセリフだ。年長組はみんなついて来ていたので、こっちに残っている中でまとめ役をしていたキリエが発言した形になる。

 リンドとカエデは、娘たちの世話があるので基本はノータッチだった。

「恐らく考えられるのは、王国の貴族がこの機に真紅の騎士団を排除したいと考えている……可能性だろう。で、貴族の兵士だけであれば多少のケガ人は出るけど、問題は無かったのだが勇者が加わると、戦力的に死者が大勢出てもおかしくない状況だ」

「……ですが、私たちがいちいち関わる必要は無いと思いますが?」

「これはあくまで俺個人の独断と偏見による意見だと思ってほしい」

 俺はそう前置きをして、考えている事を話していく。

 王国で俺たちに友好的な存在はそう多くない。真紅の騎士団と国王とその周辺。実力的にも権力的にもトップやトップに近い人間が多いが、それでも組織に縛られているので勢力が減れば、俺たちが自由に活動する事が難しくなる。

 活動が難しくなる、というのは比喩みたいな物だが、俺が管理している街に悪影響が及ぶ可能性が高くなるという事だ。フレデリクもリーファスも、今は普通に王国と取引しているが、それができなくなる可能性が高くなると考えている。

 それでも魔導列車による貿易が可能なので問題は無いのだが、人の移動ができなくなる事は大いに問題になってくる。

 冒険者も集まってきているし、商人たちも集まってきている。反対に、街から行商に出ている人たちもいる。俺たちを排除したいと考えている一派に……例えば街道封鎖を行われれば、その人たちが帰ってこれなくなるという事だ。

 本当に作り話レベルの発想の部分もあるのだが、それでも俺の言いたい事を理解してくれたようで、真紅の騎士団にいなくなられては困るという事で、ある程度の介入をしようという事になった。

 最初は、ちょっと助言だけして放置する予定だったのにね。目標の第一であるミリーの家族の安全は確保できているので、少し俺たちに有利に働くように動こうという事だ。

 準備を始めた俺たちは、普段あまり使わないガチ装備の一つを身に着けている。全員がレッドドラゴンの素材を使用した武器防具を装備しているのだ。

 この装備をした理由は、真紅の騎士団のトレードマークは赤、見た目で仲間だとイメージさせられる物を選んだからだ。もう1つの理由は、この装備は対毒の事も考えて設計されている装備であるため、フルフェイスの装備であり顔を隠せるという事だ。

 見られた所でかまわないのだが、真紅の騎士団の秘密兵器と思ってもらえれば儲けもの? 位の考えでチョイスしている。

 あと、フルフェイスなので、小型の魔導無線も内蔵されており、連絡を取り合う事が簡単にできる事もポイントが高い。密閉されているので、周囲の音を取り入れいる機構もクリエイトゴーレムで作っているのだが、どうしても数ミリ秒のズレがあるので高速戦闘の場合は、音での反応がし辛くなってしまうのだ。

 準備が終わり、外に出て真紅の騎士団からの合図を待つことになった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

処理中です...