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第1137話 思ったより……
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「おっ? 坊主じゃねえか。今日は急に来てどうしたんでい?」
領主館の領主代行のいる部屋に通され、ここをまかせているドワーフの一言目だ。
そしてその隣では、秘書ではなく執事がいて領主代行を思いっきり殴ったり蹴ったりしているが、領主代行は何も感じていないのか完全に無視である。
「代行! 領主様に向かってその話し方はないです!」
と言いながら、攻撃を続けているが、ドワーフは「気にするな! ガッハッハ!」と笑っている。この人本当に頑丈だよな。
典型的なドワーフで樽みたいな体型をしている事もあり、かなり打たれ強いのだ。何でそんな事を知っているかと言えば、たまに遊びに来る時に今回と同じような光景をいつも見ているからだ。この執事、そろそろ武器を持ち出すんじゃないかと、俺は睨んでいる。使うなら木刀とかから始めてね。
「執事君。この爺さんに言っても無駄だからいいよ。それより聞きたい事があって来たんだ」
「坊主が俺に聞きたい事か?」
代行がそう言うとどこから取り出したのか、木刀が握られており頭に振り下ろされた。フラグ回収早くね?
「フンヌッ」
バキッ!
代行が気合を入れた声を出して木刀を頭で受け止めると、木刀が真っ二つに折れた。ここが異世界だから分からなくもないけど、地球でこの光景見たら目と頭を疑うな。
「甘いわ! 出直してこい!」
執事は、あんたが領主様に向かって失礼な事を言わなければ、私もこんな事はしません! 今度は鉄の棒でも用意してきます! みたいな事を言っている。
このドワーフ、元々竜騎士だったのを歳で引退して、鍛冶仕事に戻った人だからな、レベルが高いんだよね。それに対してこの執事は、ゴーストタウンの兵士と同水準ではあるが、ただそれだけなのである。
「爺さん本当に脳筋だな」
「のうきん? なんだそれは」
「脳まで筋肉でできているっていう造語だよ」
「脳まで筋肉……筋肉は打たれ強い……うむ。その言葉は私のために作られたような言葉だな! 頭まで頑丈! いい言葉ではないか!」
本来は揶揄する言葉なのだが、この爺さんは脳筋にポジティブな意味を見つけて、自分の長所と結び付けていた。日本で自分の事を脳筋っていえば多分、残念な目で見られることになるぞ。
「そんな事はどうでもいい、聞きたい事があるんだ。今さっき、ちょっと高価な食事処で食事してたら、自分は特別だ! とか言ってる貴族が、無理やりウェイトレスを買おうとしてたんだけど、そういうのって結構な頻度であるのか? 選民思想の強い貴族ってまだここに来てたりする?」
「ふむ……確か先月か先々月の会議で話し合った内容だな。ちょっと資料を持ってきてくれないか?」
爺さんは急に真面目な顔になり、俺の後ろで控えていた職員に指示を出している。真面目になると有能だから、ここをまかせられるんだよね。これが真面目な時もあんな感じなら、即刻グリエルが代えているだろうし。そうじゃないって事は、有能ではある証拠だ。
「資料が届く前に私から」
そう言って執事が話し出した。
聞いた内容をまとめると、選民思想の強い貴族は王国に多いようだ。帝国は実力主義が強いので、親の七光りでバカをする子供は多いとの事だ。
特に王国のそういう貴族は、大半は親に問題があるらしい。中立地域の人間とは価値観が違い、自分たちの方が偉いと考えているようだ。そういう教育をする親も、その親からそう教育されており、自分が間違っている事に気付けないとの事だ。
単なるバカなのだろう。それよりも貴族だったら何をしてもいいのか? 可愛い娘がいたから抱いてやる! みたいな事が当たり前に起きているのだろうか?
テンプレ的に言えば、高貴な私の子種をやっているのだから、金を貰いたいくらいだ! みたいな感じか? 大体小説のああいう話って、子どもがもしできても認知せずほったらかしだろ? 好きでもない人の子を身ごもって、女手一つで育てていかなければならない立場の方を考えろよ!
地球の貴族でこういった話はあるのかは知らんけどな。一昔前だけど地球でも、戦争で強姦される女性は珍しくないって話だしな。
従軍慰安婦問題もあるけど、それをいつまでも言っている国だって、他の国に軍隊を派遣した時に、やりたい放題しているのに責任取ってないんだけどな。
そんな事を考えていたら部下の人が戻ってきたようだ。
「先々月の会議だったか。話した内容は、こいつの話した通りだな。で、そう言った貴族だが、昔に比べれば減って入るな。それでも、1ヶ月に2人位はそう言ったバカが出てくるな」
「貴族もバカばかりではないだろうけど、貴族の数に対して多くねえか?」
「それはですね。直系では無くても貴族の端くれだから、本家の威光を借りて悪さをしているんですよ」
それを聞いてなるほど! と思った。
「で、対策って何かしてる?」
「見回りもしていますが、ある一定の地区毎に詰所を建てています。目安は詰所から5分以内でいけない所は無い位ですね。距離にすると大体2キロメートル程かと」
フル装備でマラソン選手より普通に早いな。
「来てもらう時には、詰所まで行かないといけないのか?」
「いえ、緊急用煙幕が街の各所にあります。それを使えば、近い所からいくつかの部隊が駆けつけますね」
思ったよりしっかりしているようだ。詰所にいる人は半待機で、監視員以外は詰所の中で自由にしていていいらしい。
特に独り者の若い兵士たちは、休日はいらないから半待機でもいいので、働かせてほしいとお願いされるくらいだとか。半待機でも給料が出るから特に人気だとか。無理のない程度に頼む。
と言った後で、実際は詰所で待機していた方が、女性と知り合える可能性が高いので人気なのだとか。
ゴーストタウンで女性に聞いた、人気のある恋人の職業は! というアンケートで圧倒的に兵士が多かったのだ。安定した給料が保証されているのが大きい。
その上、単身用と家族用の住宅も準備されており、指定の場所であれば安く借りられるのだ。必然的にお金に余裕が持てるのだとか。
それを聞いた俺は、詰所が婚活会場みたいになっているのでは? と少し変な事を考えていた。
「何か問題が出そうだったら、いつもみたいに報告してね」
そう言って領主館を後にした。
領主館の領主代行のいる部屋に通され、ここをまかせているドワーフの一言目だ。
そしてその隣では、秘書ではなく執事がいて領主代行を思いっきり殴ったり蹴ったりしているが、領主代行は何も感じていないのか完全に無視である。
「代行! 領主様に向かってその話し方はないです!」
と言いながら、攻撃を続けているが、ドワーフは「気にするな! ガッハッハ!」と笑っている。この人本当に頑丈だよな。
典型的なドワーフで樽みたいな体型をしている事もあり、かなり打たれ強いのだ。何でそんな事を知っているかと言えば、たまに遊びに来る時に今回と同じような光景をいつも見ているからだ。この執事、そろそろ武器を持ち出すんじゃないかと、俺は睨んでいる。使うなら木刀とかから始めてね。
「執事君。この爺さんに言っても無駄だからいいよ。それより聞きたい事があって来たんだ」
「坊主が俺に聞きたい事か?」
代行がそう言うとどこから取り出したのか、木刀が握られており頭に振り下ろされた。フラグ回収早くね?
「フンヌッ」
バキッ!
代行が気合を入れた声を出して木刀を頭で受け止めると、木刀が真っ二つに折れた。ここが異世界だから分からなくもないけど、地球でこの光景見たら目と頭を疑うな。
「甘いわ! 出直してこい!」
執事は、あんたが領主様に向かって失礼な事を言わなければ、私もこんな事はしません! 今度は鉄の棒でも用意してきます! みたいな事を言っている。
このドワーフ、元々竜騎士だったのを歳で引退して、鍛冶仕事に戻った人だからな、レベルが高いんだよね。それに対してこの執事は、ゴーストタウンの兵士と同水準ではあるが、ただそれだけなのである。
「爺さん本当に脳筋だな」
「のうきん? なんだそれは」
「脳まで筋肉でできているっていう造語だよ」
「脳まで筋肉……筋肉は打たれ強い……うむ。その言葉は私のために作られたような言葉だな! 頭まで頑丈! いい言葉ではないか!」
本来は揶揄する言葉なのだが、この爺さんは脳筋にポジティブな意味を見つけて、自分の長所と結び付けていた。日本で自分の事を脳筋っていえば多分、残念な目で見られることになるぞ。
「そんな事はどうでもいい、聞きたい事があるんだ。今さっき、ちょっと高価な食事処で食事してたら、自分は特別だ! とか言ってる貴族が、無理やりウェイトレスを買おうとしてたんだけど、そういうのって結構な頻度であるのか? 選民思想の強い貴族ってまだここに来てたりする?」
「ふむ……確か先月か先々月の会議で話し合った内容だな。ちょっと資料を持ってきてくれないか?」
爺さんは急に真面目な顔になり、俺の後ろで控えていた職員に指示を出している。真面目になると有能だから、ここをまかせられるんだよね。これが真面目な時もあんな感じなら、即刻グリエルが代えているだろうし。そうじゃないって事は、有能ではある証拠だ。
「資料が届く前に私から」
そう言って執事が話し出した。
聞いた内容をまとめると、選民思想の強い貴族は王国に多いようだ。帝国は実力主義が強いので、親の七光りでバカをする子供は多いとの事だ。
特に王国のそういう貴族は、大半は親に問題があるらしい。中立地域の人間とは価値観が違い、自分たちの方が偉いと考えているようだ。そういう教育をする親も、その親からそう教育されており、自分が間違っている事に気付けないとの事だ。
単なるバカなのだろう。それよりも貴族だったら何をしてもいいのか? 可愛い娘がいたから抱いてやる! みたいな事が当たり前に起きているのだろうか?
テンプレ的に言えば、高貴な私の子種をやっているのだから、金を貰いたいくらいだ! みたいな感じか? 大体小説のああいう話って、子どもがもしできても認知せずほったらかしだろ? 好きでもない人の子を身ごもって、女手一つで育てていかなければならない立場の方を考えろよ!
地球の貴族でこういった話はあるのかは知らんけどな。一昔前だけど地球でも、戦争で強姦される女性は珍しくないって話だしな。
従軍慰安婦問題もあるけど、それをいつまでも言っている国だって、他の国に軍隊を派遣した時に、やりたい放題しているのに責任取ってないんだけどな。
そんな事を考えていたら部下の人が戻ってきたようだ。
「先々月の会議だったか。話した内容は、こいつの話した通りだな。で、そう言った貴族だが、昔に比べれば減って入るな。それでも、1ヶ月に2人位はそう言ったバカが出てくるな」
「貴族もバカばかりではないだろうけど、貴族の数に対して多くねえか?」
「それはですね。直系では無くても貴族の端くれだから、本家の威光を借りて悪さをしているんですよ」
それを聞いてなるほど! と思った。
「で、対策って何かしてる?」
「見回りもしていますが、ある一定の地区毎に詰所を建てています。目安は詰所から5分以内でいけない所は無い位ですね。距離にすると大体2キロメートル程かと」
フル装備でマラソン選手より普通に早いな。
「来てもらう時には、詰所まで行かないといけないのか?」
「いえ、緊急用煙幕が街の各所にあります。それを使えば、近い所からいくつかの部隊が駆けつけますね」
思ったよりしっかりしているようだ。詰所にいる人は半待機で、監視員以外は詰所の中で自由にしていていいらしい。
特に独り者の若い兵士たちは、休日はいらないから半待機でもいいので、働かせてほしいとお願いされるくらいだとか。半待機でも給料が出るから特に人気だとか。無理のない程度に頼む。
と言った後で、実際は詰所で待機していた方が、女性と知り合える可能性が高いので人気なのだとか。
ゴーストタウンで女性に聞いた、人気のある恋人の職業は! というアンケートで圧倒的に兵士が多かったのだ。安定した給料が保証されているのが大きい。
その上、単身用と家族用の住宅も準備されており、指定の場所であれば安く借りられるのだ。必然的にお金に余裕が持てるのだとか。
それを聞いた俺は、詰所が婚活会場みたいになっているのでは? と少し変な事を考えていた。
「何か問題が出そうだったら、いつもみたいに報告してね」
そう言って領主館を後にした。
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