ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1127話 予想外

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「やはり、魔物の数が増えているでござる!」

 何度も確認したバザールがそう声を上げる。俺も前の画面をいじって確認するが、減った分だけ相手側の魔物が増えているのだ。

 数にすると全部で80位なのだが、不意に数字が増えるのだ。

「……どういうことだ? 何で1階じゃなくて8階の魔物の数が増えるんだ?」

 3人で混乱している間に、配置していた鬼人と狼たちはドンドンと突破されていく……

「シュウ、それも気になるけど、相手の魔物が強くなってない? いくら相手が数で有利だったとしても、8階に配置した魔物ってそこまで弱くなかったはずよね?」

 実力的にはAランク上位からSランククラスの魔物なはずなのに、結構早いペースで潰されていくのだ。

 しかも戦闘の行われてる部屋ではなく、移動中に増えているようでカメラを設置できていないため、状況を正確に理解できないのだ。

「このまま攻め入られたとして、1匹でも9階を抜ければ現状と同じ事が起こるなら……って、それでも10階を抜ける事は無理か。ならそこまで気にする必要はないのかな?」

「確かに10階には走り抜ける方法が通じないのは分かるけど、やっぱり油断しすぎだと思うよ。相手に有利になるような設計とか、舐めてるとしか思えないしね」

 正直負けてもリスクは無いし、10階を突破できるわけが無いからあまり気にしてなかったけど、真剣勝負にしては相手を舐めすぎてるな。両頬を叩いて気合を入れる。

「よっし! 意識を切り替えよう。バザール、魔物の配置を変えるぞ!」

 そう言いだした俺にバザールは、いいのか? と言うような表情。いや、骸骨だから表情はないけど、振り返って首を傾げたので、問題ないとジェスチャーをする。

「攻め手には、投入できる最高戦力を送り出しているから、攻略は問題ないと思うけど、問題は8階にいるこの集団だよな。出来るなら9階10階を使わずに、何とかしてみせたい所だな」

「シュウが本気になった?」

「そうでござるな。今更な気はするでござるが」

 2人が俺の事をそう評価する。

「で、どうするつもりなの?」

「ん? ダンジョンはこれ以上いじれないから、最初に言ったように魔物を入れ替えるよ。鬼人たちを引き上げさせて、ゴーレム系を投入する。前にヴローツマインから連れてきたゴーレムたちを、ノーマンが強化して鍛えた奴がいるから、それを限界まで送り込む」

「え? でもゴーレム系って動きが遅いよね? 今回の相手はスピードが早いタイプなのに大丈夫なの?」

「恐らく問題ない。防衛重視で育てられたオリハルコンゴーレムは、俺でも壊すのに苦労するレベルで頑丈だからな。それにタイプの違うミスリルゴーレムは、かなり早いぞ。ノーマンが何をしたか知らないけど、撃たれ弱くなっているけど、その分早く動けるようになってるからな」

「ゴーレムが早く動くでござるか? 人造ゴーレムみたいにでござるか?」

「それはないって、あいつらは別格だよ。Lvがないから正確な数字は分からないけど、魔力量だけで言えば、Sランクの魔核も複数使ってるから、かなりの高Lvになると思うよ」

 そんな事を話している間にも、バザールは手配を始めている。ゴーレムはダンジョン農園の一角で活動しているので、そこから連れてくる形なので近い事が功を奏している。

「鬼人たちが結構やられたな。全員引き上げさせてって、ゴーレムたちが行くまでに、相手の魔物が階段に到着しないよな?」

「少し微妙なタイミングでござるな」

「それまでは、9階に配置しているバッハとワイバーン家族以外の数合わせの魔物を上げておくか」

「耐久力の高い熊たちでござるな。時間稼ぎって意味では十分でござる。ゴーレムが到着するまでは、そいつらで粘るでござる!」

 鬼人たちが引き上げた所に熊……グリズリー系の狂暴な奴らを解放する。

 相手の魔物は、俺たちのゴーレムが到着する前に、9階への階段のある部屋に到着した。ほぼ100対100の戦闘のためか、なかなか数が減らないのが助かるな。

 乱戦になるとSランクの魔物も倒すのに苦労するのだろう。

「それにしても、いつの間にか相手の魔物の数が100匹に戻ってたな。しかもさ、Sランクっぽい奴が増えてた気がするんだけど、気のせいかな?」

「こっちの魔物もいるでござるからよく見えないでござるが、確かに増えている気がするでござる」

「多分10匹に増えてるわよ。さっき通り抜けた部屋のスロー映像見てみたけど、その位いたわよ」

 いつの間にか確認していた綾乃がそんな事を教えてくれた。

「いつ見てたのかは気になるけど、それより問題なのは……Sランクの魔物が増えているっていうのが気になるな。どうやって増えているかは分からないけど、Sランクの数が増えればワイバーンたちが危ないかな? あいつらは上から攻撃させるだけのつもりだから大丈夫か?」

「ダンジョンだから壁があるし、三角飛びみたいに壁を走ったり蹴ったりして、とどくかもしれないよね」

 ん~どうしようかな……バッハなら死ぬ事は無いだろうけど、ワイバーン1体はバッハより弱いから心配だな。

「んば~」

 俺の膝の上で遊んでいたミーシャが、俺のダンジョンマスターのスキルボードをバンバンと叩き始めた。遠ざけようとすると、泣き始めてしまったのでミリーを呼ぼうとしたら、すぐそばにリバイアサンが来ていた。

 リバイアサンは、10階の守りとしてこっちに来てもらっていたのだが、ミーシャの事が気になったのか近くに来ていた。

「あだ~んだ!」

 泣き止んだミーシャがリバイアサンに向かって、何かを言ったのは分かった。特に意味のない言葉だったはずだが……

「キュオン!」

 と、リバイアサンが鳴いたのだ。そうすると急に移動を始めてどっかに行ってしまった。

 え~、ちょっと待てって! お前には10階の守りをまかせる予定なんだから、戻って来いって!

 あっ!

 俺が慌てて立とうとしたため、膝にいたミーシャが床にぶつかる勢いで転がり落ちそうになってしまった。慌てて抱きかかえ、勢いを殺し切れなかったので体を反転させて背中で着地する。

「あぶねえ……バザール、ちょっとリバイアサンを探してきてくれねえか? すぐに突破される事は無いと思うけど、9階まで抜けられたら、あいつがいないと水が維持できなくなるからな」

「気にしなくても大丈夫でござる。検索したらリバイアサンは、ダンジョンに向かっているみたいでござる」

 おろ? なぜ指示もしていないのに、リバイアサンがダンジョンに? 倒れた俺の上でアダアダ言いながら、俺の事を叩いてはしゃいでいるミーシャを見て……お前か?
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