ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,098 / 2,518

第1098話 間違った笑顔

しおりを挟む
「シュウ……さすがにその顔はやめた方がいいと思うわよ」

 娘たちが寝入ってから30分位経った頃に、カエデに言われた一言だ。久しぶりに会った事もあり、いつも以上に顔が酷いことになっていたようだ。だけど、そんな事は気にしない!

「大きくなってもそんな顔してたら、確実に嫌われるわよ」

 次にリンドから言われた一言に、戦々恐々とする。

「それは絶対に嫌だ。でもこんなやって触れ合えるのは今だけでしょ? そしたらこんな顔を見せる事なくない?」

「シュウ君……今はまだいいかもしれないけど、子どもの記憶って意外に残ったりするっていうわよ? その記憶の断片に今の顔が残ってたら、私たちが嫌いになる事は無くても、娘たちは違うと思うわよ?」

 そう言われて、油の切れたブリキの様にギギギっと、音がしそうな感じでミリーを見た。結構苦い表情をしているので、本心で言っているのだと分かった。そして、他の2人も同じような表情なので、本当にヤバいのかもしれない。

 そんな事を話していると、猫たちが俺の近くに来てニャーニャー騒ぎ出した。ブルムのお尻を嗅いだ後に騒ぎ出したので、ブルムのオムツ交換のようだ。

 ニャーニャー騒いでいたのと、オムツの中が不快になった事に気付いて、ブルムが泣きだした。慌ててリンドが抱きかかえて、ベッドに寝かせて交換をしようとしたところで、ケットシーに部屋から追い出されるようにタックルを受けている。

 交換するから出ていけって事だろう、お腹の上で寝ているミーシャを起こさないように、抱いてからそっと体を起こしてミリーに渡そうとしたが、

「まだ寝てるみたいだから、廊下に連れてってもいいわよ」

 おぉ! 久々の抱っこでの移動! っと、顔が崩れているのが自覚できたので、シャキッとした顔に戻そうとする。だけど、一緒に廊下に出てきたミリーに笑われた。

「シュウ君、多分だけど……真面目な顔をしようとしているなら、かなり失敗しているわよ」

 そんなバカな! 驚いている顔をすると、更に笑われた。そんな感じで和んでいると、ミーシャが目を覚ましてむずがり泣き出しそうな雰囲気になったので、あやすように体を揺らすと誰かに抱かれている事に気付き相手を見ていた。

 俺だと気付くとさっきの続き! と言わんばかりに俺の事を攻撃し始めた。まぁ攻撃と言っても、俺の胸や顔をペチペチしているだけだけどね。でもミーシャはそれが面白いのか、ペチペチしている間はテンション高くキャッキャと笑っているので、俺もつられて笑ってしまう。

 そんな感じでブルムのオムツ交換を待っていると、急にミーシャも泣き始めて俺が何かしたかと思って慌てたが、足元の猫がミーシャも排泄をしたようだと訴えてきたのでミリーに任せた。

 この後はまた寝るだろうからと、部屋に戻るのは難しいのでのんびりと過ごす事にした。

 みんなが再度寝たみたいで、カエデとリンドがミリーに任せて俺の所へ来て、娘たちの1ヶ月の成長の動画を見せてくれた。

 いつの間にか集まってきた従魔たちが部屋に入りきれなかったので、場所を変えるというハプニングがあったがいつもの事なので気にする人はいなかった。もちろん、他の嫁達も勢ぞろいしている。

 鑑賞する場所は食堂で、机の上にはお菓子も飲み物もセットされている。

 娘達にあった時にも思ったが、本当に大きくなったな。一回り位は大きくなってるのかな? ミーシャは見ていない所で1回ハイハイしたけど、他の娘たちのハイハイは初めての瞬間を動画に収める事ができたようで、その瞬間を見た母親3人がめっちゃ喜んでいた。

 その動画を見て本人たちは恥ずかしがっているのがまた可愛い。あっ! ミリーってそれを見られたくなかったとか?

 娘たちの成長を堪能した後は、娘たちの成長を話の肴にして雑談が始まった。先程の動画はループで流しており、従魔たちはそっちに釘付け。俺たちは話に夢中になっている。

 ハイハイするようになったら、今度はいつ話すようになるのかな? と言う話になっていた。その中で自分が一番最初に呼ばれるんだ! とめっちゃ意気込んでいた。だけどそれは俺に譲ってくれないかな?

 そんな感じで1日が過ぎて、それから1週間は特に何もなかった。

 そんな頃に土木組がディストピアに戻って来た。もっと時間がかかるかと思っていたが、これ以上私たちがやると街のためにも、今回の予算的にも良くないので仕事を切り上げて帰って来たとの事だ。

 そういえば、グリエルが街を作るにあたって、俺のポケットマネーからお金を出す事にしたが、際限なくお金を出すのは問題なので、上限を決めてそれを超えないように、調整するとか言ってたな。

 これ以上街を発展させる時は、街で得た税金を使う事になるので、早めに移住を始めたいという話が上がっているそうだ。食料品に関しては商会が一手に担うので問題ないが、食料生産は出来る限り早く始めたいので、特に農業従事者の移住は早くしたいらしい。

 そこら辺はグリエルとガリアに任せているので、受け入れの準備が整い次第自由にしていいと言ってある。すでに全部丸投げしているので俺の手を離れている。まぁ相談されたら頑張るけど、今までそんな事なかったしな。

 土木組も帰って報告をするとすぐに、娘たちの所へ突撃していた。自分の下の世代は街にいっぱいいるのだが、土木組として働きだしてからは、どちらかと言うと可愛がられる方なので、娘たちの事を可愛がっている。

 娘たちが大きくなった時に、自分が特別だと思わないといいな。そうなったら最悪怒らないといけないかもしれないしな……嫌な想像は現実になる事があるので、すぐに意識を入れ替えた。

 1週間の間に久々に工房へ顔を出したが、バザールも綾乃もグリエルから報告を受けていたみたいで、ダンジョンの事は興味が無いようだった。

 1ヶ月の間は特に何もなかったようで、話す事は本当に無かった。

 また物作りの時間が始まるのかな?
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。  主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。  こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。  そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。  修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。    それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。  不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。  記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。     メサメサメサ   メサ      メサ メサ          メサ メサ          メサ   メサメサメサメサメサ  メ サ  メ  サ  サ  メ サ  メ  サ  サ  サ メ  サ  メ   サ  ササ  他サイトにも掲載しています。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

クラスまるごと異世界転移

八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。 ソレは突然訪れた。 『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』 そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。 …そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。 どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。 …大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても… そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。

クラス転移で裏切られた「無」職の俺は世界を変える

ジャック
ファンタジー
私立三界高校2年3組において司馬は孤立する。このクラスにおいて王角龍騎というリーダーシップのあるイケメンと学園2大美女と呼ばれる住野桜と清水桃花が居るクラスであった。司馬に唯一話しかけるのが桜であり、クラスはそれを疎ましく思っていた。そんなある日クラスが異世界のラクル帝国へ転生してしまう。勇者、賢者、聖女、剣聖、など強い職業がクラスで選ばれる中司馬は無であり、属性も無であった。1人弱い中帝国で過ごす。そんなある日、八大ダンジョンと呼ばれるラギルダンジョンに挑む。そこで、帝国となかまに裏切りを受け─ これは、全てに絶望したこの世界で唯一の「無」職の少年がどん底からはい上がり、世界を変えるまでの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 カクヨム様、小説家になろう様にも連載させてもらっています。

最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)

排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日 冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる 強いスキルを望むケインであったが、 スキル適性値はG オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物 友人からも家族からも馬鹿にされ、 尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン そんなある日、 『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。 その効果とは、 同じスキルを2つ以上持つ事ができ、 同系統の効果のスキルは効果が重複するという 恐ろしい物であった。 このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。      HOTランキング 1位!(2023年2月21日) ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)

処理中です...