ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,068 / 2,518

第1068話 まさか……

しおりを挟む
 手動みじん切り器が完成した週は、慌ただしく過ぎる事になった。

 基本的に、朝から晩までそれにかかりっきりと言う形で終わったのだ。それでも予測必要数の2割にも届いていないのが現状だ。

 他の工房の人間に、一から教える事の大変さが分かった。なにせ、まだ他には公開していない、水車動力や足踏み動力のドリルの説明からしなければならなかったからだ。

 初めて見る不思議な機械に興奮しっぱなしの他の工房の人たちだったので、落ち着かせるためにドワーフのおっちゃんが自慢げに説明するから、さらにテンションが上がって、初日は特に大変だった。

 残りの2日でかなり急ピッチで仕事を教える班と、必要数まで作り続ける班とに分かれた。俺たちは、もちろん説明には向かないので、ドワーフの工房でみじん切り器作りに精を出していた。

 人が足りないので、駆り出された形だ。俺たちのする工程は至極簡単なのですぐに、誰でも出来るようになる作業だ。ドワーフたちが教えているのは、歯車を使った構造を分かりやすく説明して加工できるように指導する事だ。

 時間がかかるが大変でも頑張ってもらわなければならないな。そこができれば、各工房の下働きでも、力の余っている人間はいるので固定する作業は問題ない。

 とはいえ、得意な分野があるらしく、歯車を作る工房それを連結する工房、刃をつける軸を作る工房等々に分かれているらしい。軸を作る工房ってそんなに仰々しいものかと思ったら、綺麗に回すためには均一な加工が必要らしく、結構難しい様だ。

 昨日は、みじん切り器が完成した日のドワーフ的なノリで、朝までミンチ機でソーセージを作りながら、飲み明かしたのだ。おかげで腕が痛い。1週間で2回も腕の筋肉痛に悩まされるとは思わなかった。

 ただ、飲みすぎで二日酔いになるのは避けるため、今回はしっかりとお酒の量をセーブしている。それにしても、あまりお酒は得意じゃないのに、ドワーフたちの飲みの場に入ると酒が上手く見えるんだから不思議だよな。種族特性でもあるんじゃないか? と思う程だった。


 そして今日は休日。今日は我が娘たちの成長の様子を見ている。

「やっぱり、ミリーの娘のミーシャは成長が早い気がするな。スミレとブルムは、まだ首が座り始めたばかりなのに、ミーシャは大分しっかり首が座ってるもんな」

「そうですね。ミーシャだけ、気持ち大きいですし。他の種族の子供の成長って見た事が無かったから知らなかったのですが、弟や街の赤ちゃん達も同じくらいの成長速度だったはずです。なので、ミーシャだけが異常に早いという事は無いはずです」

「ドワーフは、正直気付いたら育ってるからどの時期に、どんくらい成長しているかなんて、分からないのよね」

「私はハーフだし、身近にはヒューマンの子供しかいなかったからな。それでも成長の早さは、ミーシャ未満、スミレとブルム以上って感じだったと思うけどな」

 3人の娘を見ながら、子どもを産んだ3人とそんな風に話している。本当に成長速度が違うのだろう。獣人は成長が早いとかあるのかな?

「ミリー、獣人の寿命ってどの位なんだ?」

「ヒューマンと大して変わらなかったはずよ」

 まぁそうか、作り替わったとはいえ遺伝子的に言えば、俺はヒューマン種のはずだから、それと子供を成せるって事は遺伝子的には、ほぼ一緒ってことなはずだからな。地球で言えば、ヒューマンと獣人が、白人と黒人みたいな違いなのだろう。

 だから寿命がたいして変わらないのは分かるが、ドワーフは何故なのだろう? 精霊種だからか? 普通に考えて、見た目は似ていても種族がまるっきり違うから子供は成せないはず。猫が犬を産むようなもんだぞ。

 まぁ子供ができるって事は、何かしらの理由があるはずだし、深く考えても俺は科学者でもなければ研究者でもないので分からん!

「何だろな。まぁ、3人共元気に育ってくれてるみたいで嬉しい限りだ」

「そうね、最近はシュウ君も忙しくしているし大変よね。気になったのだけど、チビ神様からお願いされている、神のダンジョンはどうするの?」

 ん? そういえば、そんな事もあったな。でも、

「それは気にしなくていいよ。あれは、チビ神が神界での発言力を上げるためだけに、俺にイケイケって言ってるだけだしな。すでに2つ解放してるんだから、文句を言われる筋合いはないさ。それに、この世界に送り込まれた時は、基本的に干渉しないって言ってたはずなのに、めっちゃ干渉されてるけどね」

 簡単にこの世界に来た時の前、神界での話をする。

 3人共納得はしてくれたようだ。それに、子どもたちがいるのに、わざわざ危ないことをするつもりはないぞ! お父ちゃんは娘たちのために頑張るのだよ!

 妻たちは、チビ神と言えど神様、ないがしろにしていいのか? と言う感じで聞いてきたが、元々は不干渉予定だったのだから何の問題も無いのだ! あっ、妻たちは一応チビ神をかなり敬っているので『チビ神と言えど』みたいな事は言っていない。

 納得している様子では無かったが、問題ないと押し切った。

 その時に『無視すんじゃないわよ! あんたの奥さんたちみたいに私の事を敬いなさい! 崇めて気持ち良くさせなさい!』と空耳が聞こえてきたので、きれいさっぱりと無視して話をしている。その後もなんか空耳が聞こえてきたが、よく覚えていない。

「早くしゃべる様にならないかな。早くお父さんでもパパでも何でもいいから、俺の事を呼んでほしいな」

「気が早いわよ。獣人の子は、早い子で10ヶ月くらいで呼ぶようだけど、一般的には1歳位よ。まだ3ヶ月にもなってないのに無理よ。まだお座りもできないし、ハイハイだってしてないわよ」

 ドワーフは、時間間隔が俺たちと違うのか、気付いたら喋っているとの事だ。もっと子供に興味持ってよ! って、別に興味がないわけじゃないか。1000年は生きるドワーフたちなら、長くても100年のヒューマン種や獣人たちと、時間間隔が同じなわけないか。

 単純に10分の1。気付いたらっていうのは、分からなくもないけど、時間の流れは一緒なんだけどな。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。  主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。  こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。  そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。  修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。    それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。  不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。  記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。     メサメサメサ   メサ      メサ メサ          メサ メサ          メサ   メサメサメサメサメサ  メ サ  メ  サ  サ  メ サ  メ  サ  サ  サ メ  サ  メ   サ  ササ  他サイトにも掲載しています。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

クラス転移で裏切られた「無」職の俺は世界を変える

ジャック
ファンタジー
私立三界高校2年3組において司馬は孤立する。このクラスにおいて王角龍騎というリーダーシップのあるイケメンと学園2大美女と呼ばれる住野桜と清水桃花が居るクラスであった。司馬に唯一話しかけるのが桜であり、クラスはそれを疎ましく思っていた。そんなある日クラスが異世界のラクル帝国へ転生してしまう。勇者、賢者、聖女、剣聖、など強い職業がクラスで選ばれる中司馬は無であり、属性も無であった。1人弱い中帝国で過ごす。そんなある日、八大ダンジョンと呼ばれるラギルダンジョンに挑む。そこで、帝国となかまに裏切りを受け─ これは、全てに絶望したこの世界で唯一の「無」職の少年がどん底からはい上がり、世界を変えるまでの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 カクヨム様、小説家になろう様にも連載させてもらっています。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

クラスまるごと異世界転移

八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。 ソレは突然訪れた。 『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』 そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。 …そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。 どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。 …大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても… そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。

処理中です...