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第1066話 みじん切り器の行方
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腕の痛みで目が覚めた。
「腕が痛てえ、あのドワーフ共、遠慮なしにこき使いやがって」
昨日、手動みじん切り器の試験運用。実験で、これでもかと言う位のミンチ作成耐久レースが行われたのだ。
俺は、数回使ってみて問題がなければ、誰かに耐久テストをしてもらって終わりと思っていたのだが、ソーセージ作りに燃えたドワーフに捕まって、2時間もミンチを作り続けさせられたのだ。
そのおかげで、今日は右腕が痛い。漫画とかアニメでありそうな、右腕だけ肥大化してないか心配になるくらい酷使した。
朝食をとって工房に向かうが、やる気が萎えているため何もする気になれなかった。
「どうしたでござるか? 1人で黄昏てアンニュイでござるか?」
「いや、昨日の耐久レースの所為で右腕が痛いんだよ」
「ちょっと、こんな所で卑猥な発言はよすでござるよ」
バザールが何を言っているのか初めは理解できなかった。
落ち着いて考えて見ると、右手を酷使したという俺の発言から、バザールが卑猥な話をと言ったのだ。それを踏まえ考えると……てめぇ!
自分でもどうやったか覚えていないくらいスムーズに、無駄のない動きで、収納の腕輪からハリセンを取り出し、無駄のない身のこなしでバザールの頭を叩いていた。
「痛いでござる。なんか落ちていたから、ジョークで場を温めたでござるのに」
「悪質なジョークは断固として反対する! つか、お前はあれだけミンチを作らされて、筋肉痛になったりしないのか?」
骨形態ではなく、肉体を形成した状態のバザールにそう質問する。
「はぁ、何を言っているでござるか? 元々骨しかないでござる。どんなに酷使しても痛む筋肉は無いのでござる!」
あぁ、工房では、骨形態より肉体を形成している状態の方が長いため忘れていたが、こいつは骨だった。全力でドヤ顔をしている所を見ると、久々にアンデッドジョークを言えて嬉しかったのだろう。
「まぁ、生身じゃないお前には分からない悩みか。とりあえず、ミンチの作りすぎで右手が筋肉痛なんだよ。だからやる気が起きなくてな」
「じゃぁ今日はゆっくりするでござるか?」
それもいいかもしれないな~と、そんな事を思っていると、
「でも、手動みじん切り器が完成したでござるから、工房は忙しいでござるよ? ドワーフのおっちゃんおばちゃんたちが、信頼できる工房に話をつけに行くらしいでござるが、しばらくは需要を満たすために、大量に作らないといけないでござる」
そうなんだよね。みじん切り器ができたから量産しないといけないんだよな。刃の部分に関しては、昆虫の魔物のドロップ品、しかも使い道がほとんどなかった物を、利用できたのでかなり値段が抑えられたのだ。
売り出す値段は、銀貨3枚。3000フランとなった。昆虫のドロップ品の刃は、冒険者ギルドに持っていくと1つ50フランで買い取ってもらえる。
ゴーストタウンで最低限の生活をするためには、宿代が200フラン、食事が1食で100フラン合わせて500フランで何とかなるので、1人の食い扶持を稼ぐためには、ドロップ品の刃を10個集めればいいのだ。
今までは500フランも大変だった初心者冒険者には、大いに助かっているようだ。お金が稼げなかった初心者冒険者は、宿に泊まらず空き地で集まって寝たり、食事は1日1回にしたりと大変な思いをしていたようだ。
それでもゴーストタウンは、ダンジョン内にあるので、気候は安定していて他の街に比べれば野宿が気にならないレベルみたいなので、最近では初心者はまずゴーストタウンに迎えと、言われているくらい環境的には良いらしい。
ただ、そのまま犯罪に手を染める初心者もいるため、ゴーストタウンの治安はなかなか良くならない。取り締まっても次から次に湧いてくるからな。
ちなみに、商人たちもゴーストタウンを目指してくる者が多いので、普通の相乗り馬車より安いお金で乗る事ができるそうだ。まぁ、商人からすれば、ゴーストタウンにわざわざ持っていくものがあまりないのだ。
特産品を大量に持ち込んでも売れ残る可能性があるので、拠点にしている街から通りの街で商品を売っていきつつ、ゴーストタウンで売れそうなものがあれば、買うようなスタイルらしい。
その時にどうしても荷台のスペースが余るので、そういった冒険者を乗せて街で品出しを手伝ってもらう代わりに、安く乗せてくれるらしい。それに、初心者と言えど戦力にはなるので、いざとなれば道中の護衛にも使うようだ。
「と言うか、たかがみじん切りとミンチが作れる道具が、1週間生活できる値段で売られても買わないんじゃないか?」
「甘いでござる。基準にしているのが初心者冒険者ではだめでござる。ゴーストタウンの裕福ではないが、生活している人たちがターゲットでござるよ」
いい肉を食べるのは贅沢だが、安い魔物の硬い肉なら普通に購入できるラインの人たちからすれば、ちょっと奮発すれば手に入れられる範囲なのだそうだ。
ちょっと奮発すれば、子どもに手伝わせて硬い肉とは思えない、美味しい料理を作れるのだ。十分買う価値はあるとブラウニーが言っていた。
ただし、手動みじん切り器を購入するためには1つだけ条件があった。ブラウニーたち主催の料理教室に参加して、学んだ事をテストして合格点をもらえたら、販売する形になっているらしい。
なんでそんな事になっているかと言えば、扱いによっては危険であるため。衛生管理がきちんとできていない人がいるため、洗い方や保管の仕方をしっかりと教えるためだそうだ。
何やかんや話していると、ドワーフも揃って、みじん切り器の生産の話になった。こっちに来て知り合った工房で、信頼できる所と協力体制がそそのったそうだ。あれ? まだ朝なのに既に協力してくれる工房が決まってるの?
ドワーフの情熱がここまで凄いとは思わなかった。お前ら、22時過ぎまで普通に飲んでたのに、いつ協力の交渉なんてしてたんだよ。相変わらず、間違った方向に全力を出してるな。
「工房長、協力体制を整えたのだが、本当に歯車の事を広めていいのか?」
「ん? 歯車を広めるのに何か問題でもあるのか?」
「問題と言えば問題だが。それは、技術を隠さないでいいのかと言う事じゃ。今までも似たような物はあったが、理論的にして構造も分かりやすいので、すごい技術だと思うのだが」
「あ~気にしないでいいよ。広まればその内、誰かが違う発想でもっといい物や応用して色々つくってくれるだろうしな。広めてほしくない物はしっかりいうから大丈夫だ。
どうせ、固定型ドリルや回転ノコギリ、鑢を広める時にバレるしな。蒸気機関とかに関しては現状動きは悪いけど、それでも広めるのはやめてほしい。動力は水車か足踏みに限定して広めてほしいかな」
「了解だ。それなら、工房長の工房には、人を近付けさせないようにしないといけないな。午後はそこら辺の改修をするからよろしく頼む」
この工房に人をまねいてレクチャーをして、分業する事になったようで、一時的にこの工房に部外者がくるので、その対策として俺たちの工房へ入る出入り口は1つにして、盗まれた際に困る鍵ではなく管理しているブラウニーのチェックを入れるようするみたいだ。
後に判明したが、それでも侵入できるモノが1種族だけいた。ニコたちスライムズだ。体を変形させられるニコたちにとっては、手間はかかるけど入る事ができるらしい。丸いフォルムがデフォルトだから形が変わると分かっていても、不思議な感じだった。
「腕が痛てえ、あのドワーフ共、遠慮なしにこき使いやがって」
昨日、手動みじん切り器の試験運用。実験で、これでもかと言う位のミンチ作成耐久レースが行われたのだ。
俺は、数回使ってみて問題がなければ、誰かに耐久テストをしてもらって終わりと思っていたのだが、ソーセージ作りに燃えたドワーフに捕まって、2時間もミンチを作り続けさせられたのだ。
そのおかげで、今日は右腕が痛い。漫画とかアニメでありそうな、右腕だけ肥大化してないか心配になるくらい酷使した。
朝食をとって工房に向かうが、やる気が萎えているため何もする気になれなかった。
「どうしたでござるか? 1人で黄昏てアンニュイでござるか?」
「いや、昨日の耐久レースの所為で右腕が痛いんだよ」
「ちょっと、こんな所で卑猥な発言はよすでござるよ」
バザールが何を言っているのか初めは理解できなかった。
落ち着いて考えて見ると、右手を酷使したという俺の発言から、バザールが卑猥な話をと言ったのだ。それを踏まえ考えると……てめぇ!
自分でもどうやったか覚えていないくらいスムーズに、無駄のない動きで、収納の腕輪からハリセンを取り出し、無駄のない身のこなしでバザールの頭を叩いていた。
「痛いでござる。なんか落ちていたから、ジョークで場を温めたでござるのに」
「悪質なジョークは断固として反対する! つか、お前はあれだけミンチを作らされて、筋肉痛になったりしないのか?」
骨形態ではなく、肉体を形成した状態のバザールにそう質問する。
「はぁ、何を言っているでござるか? 元々骨しかないでござる。どんなに酷使しても痛む筋肉は無いのでござる!」
あぁ、工房では、骨形態より肉体を形成している状態の方が長いため忘れていたが、こいつは骨だった。全力でドヤ顔をしている所を見ると、久々にアンデッドジョークを言えて嬉しかったのだろう。
「まぁ、生身じゃないお前には分からない悩みか。とりあえず、ミンチの作りすぎで右手が筋肉痛なんだよ。だからやる気が起きなくてな」
「じゃぁ今日はゆっくりするでござるか?」
それもいいかもしれないな~と、そんな事を思っていると、
「でも、手動みじん切り器が完成したでござるから、工房は忙しいでござるよ? ドワーフのおっちゃんおばちゃんたちが、信頼できる工房に話をつけに行くらしいでござるが、しばらくは需要を満たすために、大量に作らないといけないでござる」
そうなんだよね。みじん切り器ができたから量産しないといけないんだよな。刃の部分に関しては、昆虫の魔物のドロップ品、しかも使い道がほとんどなかった物を、利用できたのでかなり値段が抑えられたのだ。
売り出す値段は、銀貨3枚。3000フランとなった。昆虫のドロップ品の刃は、冒険者ギルドに持っていくと1つ50フランで買い取ってもらえる。
ゴーストタウンで最低限の生活をするためには、宿代が200フラン、食事が1食で100フラン合わせて500フランで何とかなるので、1人の食い扶持を稼ぐためには、ドロップ品の刃を10個集めればいいのだ。
今までは500フランも大変だった初心者冒険者には、大いに助かっているようだ。お金が稼げなかった初心者冒険者は、宿に泊まらず空き地で集まって寝たり、食事は1日1回にしたりと大変な思いをしていたようだ。
それでもゴーストタウンは、ダンジョン内にあるので、気候は安定していて他の街に比べれば野宿が気にならないレベルみたいなので、最近では初心者はまずゴーストタウンに迎えと、言われているくらい環境的には良いらしい。
ただ、そのまま犯罪に手を染める初心者もいるため、ゴーストタウンの治安はなかなか良くならない。取り締まっても次から次に湧いてくるからな。
ちなみに、商人たちもゴーストタウンを目指してくる者が多いので、普通の相乗り馬車より安いお金で乗る事ができるそうだ。まぁ、商人からすれば、ゴーストタウンにわざわざ持っていくものがあまりないのだ。
特産品を大量に持ち込んでも売れ残る可能性があるので、拠点にしている街から通りの街で商品を売っていきつつ、ゴーストタウンで売れそうなものがあれば、買うようなスタイルらしい。
その時にどうしても荷台のスペースが余るので、そういった冒険者を乗せて街で品出しを手伝ってもらう代わりに、安く乗せてくれるらしい。それに、初心者と言えど戦力にはなるので、いざとなれば道中の護衛にも使うようだ。
「と言うか、たかがみじん切りとミンチが作れる道具が、1週間生活できる値段で売られても買わないんじゃないか?」
「甘いでござる。基準にしているのが初心者冒険者ではだめでござる。ゴーストタウンの裕福ではないが、生活している人たちがターゲットでござるよ」
いい肉を食べるのは贅沢だが、安い魔物の硬い肉なら普通に購入できるラインの人たちからすれば、ちょっと奮発すれば手に入れられる範囲なのだそうだ。
ちょっと奮発すれば、子どもに手伝わせて硬い肉とは思えない、美味しい料理を作れるのだ。十分買う価値はあるとブラウニーが言っていた。
ただし、手動みじん切り器を購入するためには1つだけ条件があった。ブラウニーたち主催の料理教室に参加して、学んだ事をテストして合格点をもらえたら、販売する形になっているらしい。
なんでそんな事になっているかと言えば、扱いによっては危険であるため。衛生管理がきちんとできていない人がいるため、洗い方や保管の仕方をしっかりと教えるためだそうだ。
何やかんや話していると、ドワーフも揃って、みじん切り器の生産の話になった。こっちに来て知り合った工房で、信頼できる所と協力体制がそそのったそうだ。あれ? まだ朝なのに既に協力してくれる工房が決まってるの?
ドワーフの情熱がここまで凄いとは思わなかった。お前ら、22時過ぎまで普通に飲んでたのに、いつ協力の交渉なんてしてたんだよ。相変わらず、間違った方向に全力を出してるな。
「工房長、協力体制を整えたのだが、本当に歯車の事を広めていいのか?」
「ん? 歯車を広めるのに何か問題でもあるのか?」
「問題と言えば問題だが。それは、技術を隠さないでいいのかと言う事じゃ。今までも似たような物はあったが、理論的にして構造も分かりやすいので、すごい技術だと思うのだが」
「あ~気にしないでいいよ。広まればその内、誰かが違う発想でもっといい物や応用して色々つくってくれるだろうしな。広めてほしくない物はしっかりいうから大丈夫だ。
どうせ、固定型ドリルや回転ノコギリ、鑢を広める時にバレるしな。蒸気機関とかに関しては現状動きは悪いけど、それでも広めるのはやめてほしい。動力は水車か足踏みに限定して広めてほしいかな」
「了解だ。それなら、工房長の工房には、人を近付けさせないようにしないといけないな。午後はそこら辺の改修をするからよろしく頼む」
この工房に人をまねいてレクチャーをして、分業する事になったようで、一時的にこの工房に部外者がくるので、その対策として俺たちの工房へ入る出入り口は1つにして、盗まれた際に困る鍵ではなく管理しているブラウニーのチェックを入れるようするみたいだ。
後に判明したが、それでも侵入できるモノが1種族だけいた。ニコたちスライムズだ。体を変形させられるニコたちにとっては、手間はかかるけど入る事ができるらしい。丸いフォルムがデフォルトだから形が変わると分かっていても、不思議な感じだった。
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