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第1049話 付与師集団
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「邪魔するなら帰れ!」
錬金術師に紹介してもらった場所に向かって、施設の中に入る時に綾乃があいさつ代わりに「お邪魔します」と言った所、お叱りを受けてしまった。
「あ! すいません! 私たちの国では、誰かの家に入る時とか『お邪魔します』とか『失礼します』とかいうんです。悪気があるわけではないんです。本当にすいません」
そう言って俺たち3人は、頭を下げる。
「ったく、あんたは頭が固いね! あんたの所為で若い人が恐縮してるじゃないか!」
初めに怒鳴ってきたのは、職人気質っぽい感じの少し厳ついおっちゃんだ。それに対して今の肝っ玉母ちゃんの様なセリフを言ったのは、言動からは想像できない綺麗な人だった。何となくカエデに似ている雰囲気があるような?
鑑定を無意識に発動させると、ハーフドワーフだった。見た目が違うのに、似ている雰囲気だったのはそういう事だろう。ハーフって数は多くないけど、いる事はいるんだな。
「って、あんた! なんて事してくれるんだい! この方は街の領主様じゃないかい! せっかくみんなでこの街に工房を出せたっていうのに、鉱山送りにされたいのかい!」
俺の姿を見て、何かを思い出したかのようにハッとした表情をして、初めに俺たちを怒鳴った厳ついおっちゃんを張り倒していた。
「さすがにこちらが悪いのに、鉱山送りにするわけないじゃないですか。そもそも領主にそういった口きいただけで、鉱山送りになるもんなんですか?」
「場所によっては、目つきが気に入らないという理由で鞭で叩かれたり、夜伽の相手を断ったら投獄されたりされる場所もあるんですよ」
なんという事だ。横暴な領主や貴族が多いとは思っていたが、そこまで自分勝手な奴らがいるとは。
「あ~いてえな、何すんだ! ゴーストタウンの領主と言えば、ドワーフだろうが! こんな若造に何気を使って……ぶへぇっ!」
結構なやられ方をしたおっちゃんは起き上がって、また俺に何かを言おうとして、ハーフドワーフの女性に見事なボディーブローをくらっていた。
「本当にすいません。しっかり躾けておきますので、今回はご了承ください」
俺たち3人は、その見事なまでにコントっぽいやり取りを見て笑ってしまった。その様子に目を丸くさせてしまった。
「いやぁ、本当にすいません。何か漫才を見ているような感じで、ついつい笑ってしまいました。この程度のやり取りなら、ドワーフの爺さんたちの方が、容赦のない事を言うので何とも思いませんよ」
何度もぺこぺこされるとこっちが恐縮してしまう。
「ふぅ。いいパンチだった……それで、リーダー。こっちの人たちはなんなんだ?」
「あんたは本当に物作り以外に興味を示さないわね。この方は、さっきも言ったけどこの街、ゴーストタウンの領主よ。そんな方に、若造だの失礼な事を言って怒鳴ったのよ!」
どうやら、ハーフドワーフの女性は錬金術師の言っていた集団のリーダーのようだ。
「はぁ? ゴーストタウンの領主と言えば、物作りの天才のドワーフの爺さんだろ?」
「あんたは……あの方は、この街の領主代行であって、本当の領主はここにいるシュウ様なんだよ! この街で工房を開けたのも、シュウ様のおかげなんだから、あんたは地面にでも顔を擦り付けてなさい!」
と言って、強引に地面に顔を押し付けられていた。この人強いな……歳は秘密だが、レベルは154だった。カエデに会った時に比べたら大分強いが、年を考えると……おっと、これ以上はいけないな。
「それにしても、良く俺だって分かりましたね。あまりゴーストタウンでは、人前に出る仕事してないはずなのに……そのうちのどれかを見られてたのかな? 後1ついいかな? 工房が開けたっていうのが俺のおかげって何?」
「それは見間違えるわけありません。武闘大会の時の挨拶を見てましたから! この工房を開けたのは、街の政策である職人に対する援助を申請した所、この工房を格安で紹介してもらえたんです。シュウ様のおかげなんです! シュウ様は判断の可否は知らないかもしれないですが、感謝しているんです!」
食い気味で言われて、若干引いてしまった。以前、グリエルからゴーストタウンでの政策の一環として、街に職人を呼び込んではどうかと言う事で許可した奴だろう。俺は、許可しただけだからな……そんなに感謝されても困る!
「あ~それは、全部グリエルと領主代行のおかげだから気にしなくていいよ。で、今日は仕事の話で来たんだけどいいかな?」
「領主様がお仕事の話ですか?」
ちょっとビックリするような表情で、恐る恐る聞き返してきた。
「領主の仕事とは関係ないよ。あまり大っぴらには言えないけど、なんちゃって領主だから、領主の仕事はみんな丸投げなんだ。
それでも生活には困らないけど、子供が生まれたからしっかり仕事をしようと思って工房を立ち上げたんだ。そこで使う道具を作ろうと思ってね、その材料の加工を依頼しに来たんだよ。話だけでも聞いてもらえるかな?」
領主様が工房? 首をかしげながら、詳細を聞く体勢に入ってくれた。隣におっちゃんが座るが、まだ殴られた右わき腹が痛むのか撫でている。リーダーさんも大概力強いが、このおっちゃんのタフネスもヤバいな。
意識を戻して加工してもらいたいものを取り出して、加工してほしい内容を伝える。
「この細い銅線に、耐電のエンチャントをつけてほしいという事ですか? しかも、表面だけに……」
俺の注文に疑問を感じながら、隣のおっちゃんと何やら話し合っている。それにしても、耐電のエンチャントなんだな。耐えるだけで、電気を通すんじゃ意味がないんだよな。そこらへんどうなのかな?
「領主様、耐電のエンチャントは、雷系の魔法に耐えるものなのはご存じですよね? 金属は電気を通すものがほとんどで、雷魔法に効果がないです。そこで施すのが耐電のエンチャントです。なので表面が傷付いても大丈夫なように全体にかけるのが一般的です。表面だけじゃ効果が出ないのではないですか?」
「むしろ、表面にだけに頼みたいんだ。全体じゃない分表面だけに強めにかけれないかな?」
「やってできない事は無いですが……いえ、商売ですので何でも致しましょう! 依頼の内容は分かりました! ですが……依頼料の話をしてもよろしいですか?
耐電のエンチャントは、あまり一般的ではないです。触媒も貴重な物を使うため、取り寄せや施すための時間がかかります。なので料金がどうしても高くなってしまうのですが……」
「参考までに、秘密でなければ触媒を教えてもらえますか?」
「別に秘密でも何でもないです。調べればわかる事ですので、えっと、魔物の魔石なんですが、雷属性の魔物の魔石と、その魔物の特殊なドロップ品である内臓です。一般的な各属性魔法耐性は、魔石とその内臓を使う事で、効果を高くする事が出来るんです」
ほうほう、魔物の魔石と内臓……あれ? そういえば、どこかのダンジョンで食用じゃない内臓がドロップしてたな。収納の腕輪に……いや、カバンの方だったか? 漁ってみると入っていた。この魔物って属性なんだったっけ?
断りを入れて、ちょっと離れた位置で内臓と魔石を取り出した。
錬金術師に紹介してもらった場所に向かって、施設の中に入る時に綾乃があいさつ代わりに「お邪魔します」と言った所、お叱りを受けてしまった。
「あ! すいません! 私たちの国では、誰かの家に入る時とか『お邪魔します』とか『失礼します』とかいうんです。悪気があるわけではないんです。本当にすいません」
そう言って俺たち3人は、頭を下げる。
「ったく、あんたは頭が固いね! あんたの所為で若い人が恐縮してるじゃないか!」
初めに怒鳴ってきたのは、職人気質っぽい感じの少し厳ついおっちゃんだ。それに対して今の肝っ玉母ちゃんの様なセリフを言ったのは、言動からは想像できない綺麗な人だった。何となくカエデに似ている雰囲気があるような?
鑑定を無意識に発動させると、ハーフドワーフだった。見た目が違うのに、似ている雰囲気だったのはそういう事だろう。ハーフって数は多くないけど、いる事はいるんだな。
「って、あんた! なんて事してくれるんだい! この方は街の領主様じゃないかい! せっかくみんなでこの街に工房を出せたっていうのに、鉱山送りにされたいのかい!」
俺の姿を見て、何かを思い出したかのようにハッとした表情をして、初めに俺たちを怒鳴った厳ついおっちゃんを張り倒していた。
「さすがにこちらが悪いのに、鉱山送りにするわけないじゃないですか。そもそも領主にそういった口きいただけで、鉱山送りになるもんなんですか?」
「場所によっては、目つきが気に入らないという理由で鞭で叩かれたり、夜伽の相手を断ったら投獄されたりされる場所もあるんですよ」
なんという事だ。横暴な領主や貴族が多いとは思っていたが、そこまで自分勝手な奴らがいるとは。
「あ~いてえな、何すんだ! ゴーストタウンの領主と言えば、ドワーフだろうが! こんな若造に何気を使って……ぶへぇっ!」
結構なやられ方をしたおっちゃんは起き上がって、また俺に何かを言おうとして、ハーフドワーフの女性に見事なボディーブローをくらっていた。
「本当にすいません。しっかり躾けておきますので、今回はご了承ください」
俺たち3人は、その見事なまでにコントっぽいやり取りを見て笑ってしまった。その様子に目を丸くさせてしまった。
「いやぁ、本当にすいません。何か漫才を見ているような感じで、ついつい笑ってしまいました。この程度のやり取りなら、ドワーフの爺さんたちの方が、容赦のない事を言うので何とも思いませんよ」
何度もぺこぺこされるとこっちが恐縮してしまう。
「ふぅ。いいパンチだった……それで、リーダー。こっちの人たちはなんなんだ?」
「あんたは本当に物作り以外に興味を示さないわね。この方は、さっきも言ったけどこの街、ゴーストタウンの領主よ。そんな方に、若造だの失礼な事を言って怒鳴ったのよ!」
どうやら、ハーフドワーフの女性は錬金術師の言っていた集団のリーダーのようだ。
「はぁ? ゴーストタウンの領主と言えば、物作りの天才のドワーフの爺さんだろ?」
「あんたは……あの方は、この街の領主代行であって、本当の領主はここにいるシュウ様なんだよ! この街で工房を開けたのも、シュウ様のおかげなんだから、あんたは地面にでも顔を擦り付けてなさい!」
と言って、強引に地面に顔を押し付けられていた。この人強いな……歳は秘密だが、レベルは154だった。カエデに会った時に比べたら大分強いが、年を考えると……おっと、これ以上はいけないな。
「それにしても、良く俺だって分かりましたね。あまりゴーストタウンでは、人前に出る仕事してないはずなのに……そのうちのどれかを見られてたのかな? 後1ついいかな? 工房が開けたっていうのが俺のおかげって何?」
「それは見間違えるわけありません。武闘大会の時の挨拶を見てましたから! この工房を開けたのは、街の政策である職人に対する援助を申請した所、この工房を格安で紹介してもらえたんです。シュウ様のおかげなんです! シュウ様は判断の可否は知らないかもしれないですが、感謝しているんです!」
食い気味で言われて、若干引いてしまった。以前、グリエルからゴーストタウンでの政策の一環として、街に職人を呼び込んではどうかと言う事で許可した奴だろう。俺は、許可しただけだからな……そんなに感謝されても困る!
「あ~それは、全部グリエルと領主代行のおかげだから気にしなくていいよ。で、今日は仕事の話で来たんだけどいいかな?」
「領主様がお仕事の話ですか?」
ちょっとビックリするような表情で、恐る恐る聞き返してきた。
「領主の仕事とは関係ないよ。あまり大っぴらには言えないけど、なんちゃって領主だから、領主の仕事はみんな丸投げなんだ。
それでも生活には困らないけど、子供が生まれたからしっかり仕事をしようと思って工房を立ち上げたんだ。そこで使う道具を作ろうと思ってね、その材料の加工を依頼しに来たんだよ。話だけでも聞いてもらえるかな?」
領主様が工房? 首をかしげながら、詳細を聞く体勢に入ってくれた。隣におっちゃんが座るが、まだ殴られた右わき腹が痛むのか撫でている。リーダーさんも大概力強いが、このおっちゃんのタフネスもヤバいな。
意識を戻して加工してもらいたいものを取り出して、加工してほしい内容を伝える。
「この細い銅線に、耐電のエンチャントをつけてほしいという事ですか? しかも、表面だけに……」
俺の注文に疑問を感じながら、隣のおっちゃんと何やら話し合っている。それにしても、耐電のエンチャントなんだな。耐えるだけで、電気を通すんじゃ意味がないんだよな。そこらへんどうなのかな?
「領主様、耐電のエンチャントは、雷系の魔法に耐えるものなのはご存じですよね? 金属は電気を通すものがほとんどで、雷魔法に効果がないです。そこで施すのが耐電のエンチャントです。なので表面が傷付いても大丈夫なように全体にかけるのが一般的です。表面だけじゃ効果が出ないのではないですか?」
「むしろ、表面にだけに頼みたいんだ。全体じゃない分表面だけに強めにかけれないかな?」
「やってできない事は無いですが……いえ、商売ですので何でも致しましょう! 依頼の内容は分かりました! ですが……依頼料の話をしてもよろしいですか?
耐電のエンチャントは、あまり一般的ではないです。触媒も貴重な物を使うため、取り寄せや施すための時間がかかります。なので料金がどうしても高くなってしまうのですが……」
「参考までに、秘密でなければ触媒を教えてもらえますか?」
「別に秘密でも何でもないです。調べればわかる事ですので、えっと、魔物の魔石なんですが、雷属性の魔物の魔石と、その魔物の特殊なドロップ品である内臓です。一般的な各属性魔法耐性は、魔石とその内臓を使う事で、効果を高くする事が出来るんです」
ほうほう、魔物の魔石と内臓……あれ? そういえば、どこかのダンジョンで食用じゃない内臓がドロップしてたな。収納の腕輪に……いや、カバンの方だったか? 漁ってみると入っていた。この魔物って属性なんだったっけ?
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