ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
949 / 2,518

第949話 間違えだらけ!

しおりを挟む
 さて、出発の時間になったはいいけど、

「何か、蒸し暑いな。昨日の報告で暑いというのは聞いてたから、ある程度は覚悟してたけど、直射日光はないのに暑い!」

 昨日はバタバタしてて何となく暑いな? くらいにしか感じていなかったが、今日起きて準備のために外に出て初めて、ここまで暑い事に気付いたのだ。上の階は、20~25℃と言った所だろうが、この階は40℃に迫る勢いで暑い。

 これはステータスに関係なく、熱中症とかで動けなくなるパターンがあり得るレベルだ。さすがにこの状態で長時間動くのは拙いので、

「ピーチ、以前作った自分の周りの温度を下げる魔導具を使うぞ。さすがにこの暑さの中ずっと動いてたら、どんなに身体能力が高くても死にかねないからな。準備ができたら進もう」

 そう言って、みんなが準備を始める。俺は従魔たちにも魔導具を着けてやる。ダマは首輪型の魔導具を着けられると「首のあたりがむずむずして気持ち悪い」と言っていたが、暑いまま動くのは嫌なようで「我慢する」と、テンションが下がり気味の返事をしてきた。

 クロたちにはもともと首輪をつけているので、その首輪に着けられるように魔導具を改造している。

「ふ~涼しくなったな」

 俺の一言にみんなが頷いてくれた。終わったからといって、このままでいるわけにもいかないな。そんな事を思っていると、ピーチが指示を出してダンジョンを進む事になった。

 昨日の報告で、爬虫類系の魔物が出てくると言っていたからって、何が出たのか正確に聞いてないじゃん! 今から聞いても微妙だし、楽しみにしておくか!

 不意に危険を感じたため、手に持っていた盾で頭上に振り上げる。何もなかった……みんなに冷たい目で見られたけど、嫌な感じがしたんだからしょうがないじゃん!

「キャッ!」

 誰かの短い悲鳴が聞こえ、ドガーンッ! 次の瞬間に何かが壁にぶつかって、大きな音をさてていた。何かと思って振り返ると、俺が嫌な感じを受けた場所付近で、メイスを振りかぶった体勢のリンドがいた。

「シュウが何か感じたとのを、見過ごせなかったから警戒してたのよ。そしたら岩に擬態したトカゲ、多分ロックリザードだと思うけど、そいつが落ちてきたからぶったたいたのよ」

 俺が嫌な感じを受けたのは、あいつの所為だったのか? きちんと気付けなかったことにショックを受けたが、警戒していてくれたリンドには感謝だ。あの程度の魔物じゃ致命傷にならないとはいえ、不意打ちをくらえば、思わぬトラブルが発生するかもしれないしな。

 今度は気配を隠すだけじゃなくて、擬態までしてくるのか。厄介な敵が増えてきたな。魔物のLvにも影響してくるのかな? 俺が造ったダンジョンの中では、Lv100超える魔物でこういった能力を持っているのいないけどな。

「念のため闇魔法を使って移動するか?」

「ご主人様、それだと索敵能力と言いますか、第六感というものが鍛えられないので、多少危険があっても闇魔法は使わずに行くべきかと思います」

 ピーチの反論を聞いて、なるほど! と思うと同時に、あまり危険にはさらしたくないな、と思っている自分がいる。毒を使うタイプの魔物がいる事を考えて、万能薬と解毒ポーションをいつでも出せるようにしておき、もしものために備える。

 警戒レベルをいつも以上に引き上げて、ダンジョンを進んでいく。暑いまま進んでいたら、集中力を切らした上に、ミスをしでかしていたかもしれないな。

 先頭を歩いていた斥候のライラが、ハンドサインで警戒をするように伝えてきた。索敵に魔物の気配は引っかかっていないので、また擬態か隠れている魔物を発見したのだろうか? 慎重に歩みを進めていくが、不自然に感じるものも無い。

 気配に一番敏感なのはやっぱり斥候職なのだが、今回の魔物に関しては観察に長けている弓使いのメアリーが初めに気付いた。急に矢を撃ったので何事かと思ったが、矢が刺さった場所にはさっきと同じ魔物、ロックリザードがいた。

 矢がロックリザードの硬い皮を突き破って、さらにはダンジョンの壁にまで突き刺さっていた。縫い付けられたロックリザードは身動きをとれずにジタバタするだけだった。最後はリンドのメイスで頭を潰されてドロップ品に変わる。

 メアリーからロックリザードまで、30メートルはあったのによく気付けたな。それにしても、壁から生まれてきたんじゃないかと思う位完璧な擬態だったのに、この距離で違いが分かるとか……目がいいだけじゃないよな?

 後で聞いてみたが、何と言われても答え辛い、あえて言うなら違和感があった、と言われて勘の部分もあるだろうが、それだけではなくきちんと自分で気になる何かを発見したことになる。すごい観察力だな。

 次に出てきた魔物は、気配を隠さずに現れたのは、ファイアリザード? 火トカゲであってるんだと思うけど、二足歩行するトカゲってどうなの? そう言うと国民的人気ロールプレイングゲームを連想する人もいるかもしれないが、まんま赤いトカゲが背中に火を背負って立ってるんだぜ……

 爬虫類で火属性となれば冷気には弱く、昆虫系の火魔法と同じで、氷魔法や水魔法で簡単に倒せる相手であった。

 間違ってはいけないのは、俺たちにとって簡単なだけであって、一般的な冒険者がLv100近い魔物を倒すのは大変である。それが例え、相手の弱点属性の魔法を使えたとしてもだ。

 まぁ大変なだけで、弱点属性を使えるのであれば倒す事は可能だろう。しっかりとレベルを上げて、装備を整えていれば何とでもなるだろう。このダンジョンは嫌らしい造りだけど、きちんと準備すればレベル上げに向いていると評価できるだろう。

 次に出てきたのは、全身が火に包まれた隠れる気が全くない。むしろ存在感が強いワニが出てきた。

「あれ? これってサラマンダーじゃないの?」

 俺はこいつを見てフォルムから連想する名前を言葉に出していた。だが、サラマンダーは上級精霊のはずだから、魔物を生み出すダンジョンの中にはいないはずなのだが……

 1匹なら精霊が迷い込んだ可能性を考えたが、まわりに4匹の火だるまなワニを見ていると、その可能性は低いと考えられる。

「あ~シュウ、あれね。サラマンダーモドキって呼ばれる、ワニの魔物だよ。といっても、昔の勇者があいつを見てそういっただけで、本当にサラマンダーを見た事ある人はほとんどいないわ。シュウが勇者と同じ世界から来てるから、今の発言には納得するけどね」

 どうやら、過去にこの世界に来た人もあれを見てサラマンダーだと思ったらしい。感性の似てる人なのかな?

 そしてこの階には他に、レッドスネーク、見たまま赤いヘビでもちろん氷に弱かった。最後にもう1匹厄介なのが出てきた。

 バジリスク……物語によっては、ヘビだったりトカゲだったり、龍だったりするのだが、俺の物語……この世界でのバジリスクは、ワニだった。なんで?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

処理中です...