ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第896話 一時中断

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 せっかく解決の光明が見えてきたのに、リンドとカエデが作っていた船がほぼ完成したと連絡が入ってしまったのだ。

「せっかくいい感じになったのに向こうが完成しちゃったか、こっちは一旦中断しないといけないよな。向こうの船を完璧に仕上げてから、こっちの船に戻ってこよう」

 向こうと言っても隣の造船所なんだけどな。

 リンドたちが待っている場所に向かうと、つやつやした顔で身嗜みが綺麗になっているドワーフたちが早くしろよ! といった視線で俺を見ていた。爺からそんな視線を浴びても、俺にそんな趣味はない!

「来たわね! 動力の魔導具は私たちには、作れないんだから早くしてよ! ライムとアリスたちは忙しいから、シュウたちが作ってくれないと先に進まないんだから!」

 呼ばれてから大して時間は経ってないのに、もっと早く来てよ! と言わんばかりの話し方だ。俺、何も悪くないんだけどな。

「わかったよ、あれ? 何で船が3隻から4隻に増えてるんだ?」

 見た瞬間に分かった違いについて聞いてみると、リンド側にいた全員が視線を逸らした。あ~全員がノリで、もう1隻造った感じだな。俺もこの事に関しては、人の事を言えないからな。せめて一言報告だけはしてほしかったな。

 前に2隻造ってる事もあってか、3隻目と4隻目の作成スピードが異様に早くて俺が気付けなかったんだよな。まぁ過ぎた事は言ってもしょうがない! さっさと魔導具を作るかな。

「まぁいいや、みんなは休んでて。綾乃、バザール、初めは俺が1人で説明しながら作ってみるから、その次は見ながら自分でも作ってみてくれ。まずは、簡単にライムとアリスが作ってくれた魔導具の説明をする」

「あっ! その前に1つ聞いていい? 今回見つけた昔造られた魔導具と、クリエイトゴーレムによる魔導具は、ほぼ原理は一緒だよね? で、気になったんだけど今この世界にある魔導具って、それとは別の原理で作られてるよね? それってどういう原理なの?」

「あ~、なんて説明したら分かりやすいかな。俺が思ってる事で説明するなら、クリエイトゴーレムと昔の魔導具は、魔石を直接加工して劣化はあるけど魔力の補給は必要ないのに対して、今の魔導具は魔石を燃料として使い切る? みたいな感じか。

 クリエイトゴーレムとかの方は説明が難しいけど、今の魔導具は電化製品を思い浮かべると楽かもね。電気を魔石に置き換えた感じだな」

「なるほど……じゃぁさ、今方式の魔導具で風を送り出す魔導具作れないの?」

「そういえば、何で昔の方式にこだわってたんだ? 思い出せん……それはこれが終わったら考えよう。原理と作り方を説明するな。原理というのは簡単で、魔導具でエンジンを作っただけの事なんだけどな。

 エンジンはガソリンとか燃料を燃やしてエネルギーに変える、魔導具の方は魔力を小規模に爆発させてエネルギーに変えてるってことだ。作り方は……」

 本物のエンジンの作り方を知らないので、何とも言えないが、クリエイトゴーレムでエンジンの造りを模倣するだけだ。本来ならこんなに簡単に作れるものではないのだが、この世界のスキルというものが作成物の性能や品質を上方補正してくれるので、問題なく作れるのだ。

 クリエイトゴーレムを使わずに、これの部品を作って組み立てたあの2人が異常なんだよな。クリエイトゴーレムなら組み立てた後でも、調整できるからな。恐るべき性能で作ったあの2人に驚愕だよ。

 色々説明しながら作って、大体2時間ほどで根幹の部分を作成し終えた。

「まぁこんな感じだ。後3個作らないといけないから急ぐぞ!」

 食事をはさみ、説明しながら作成した。その日の内に4台の魔導エンジンが完成した。

「終わったな」

「終わったね」

「終わったでござる」

 スキルの補正があったとはいえ、思ったより繊細な作業だったようで、教えている俺も感覚的な物だったので上手く説明できず、調整するのにかなり時間がかかった。

 一番苦労していたのは、魔力が爆発して魔導エンジンを回転させるためのピストンを動かす部分の調整が難しかったのだ。本当にミリ単位、ナノ単位で調整が必要なため、かなり苦労していた。

 俺は、結構精密作業をしていた事もあり、軽く調整するするだけでいいくらいの制度で作成できるので、あまり考えていなかったのが予想以上に時間がかかった原因だった。

 俺たちの使っている船では、使われていない技術を2つ導入している。偽装船を造ったら自分たちの船にも導入する予定だ。

 使われていなかった技術、摩擦係数を下げる機能を魔核に付与する事が出来たのだ。今まではそんな事が出来ると考えていなかったので、バザールに言われない限り試す事も無かっただろう。色々試してみないといけないな。

 もう1つの技術は、エンジンのラジエーターに関するものだ。摩擦係数を下げられるという事は、放熱に関する機能も魔核に持たせられるのでは? と考えていくつか実験をしたところ、放熱ではなくクリエイトゴーレムをほどこした物質を、一定温度に保つという機能だった。

 これは、断熱ではなく吸収した熱を魔核の機能で下げるため、放熱しなくても問題なくなったのだ。

 これによって魔導エンジンは、更にコンパクトになったのだ。細かい事を言えばいろいろあるのだが、放熱に関するラジエーターをなくすことができたのと、オイルが必要なくなったので、その部分に使っていた部品が丸々いらなくなったのだ。

 思ったより実りのある時間だったので、疲れたがそれ以上に新しい技術を発見出来て、よかったと思っている。明日からの偽装船を造るのが楽しみだ。

 次の日を迎えた。

「さぁ、昨日発見した技術をまずは実装しよう!」

「摩擦や熱を一定に保つ技術を何処に使うの?」

「きまってるだろ! 摩擦に関しては、船体の水に浸かる部分に使うんだよ。自らの摩擦が減れば、スピードが上がるだろ? 保温の方は、船内の温度を保つのに使おうと思ってるよ。そうすれば、船内に空調は必要なくなるだろ?」

 なるほど! と納得して手分けをして魔核の調整を始める。この程度の調整なら魔核の数にもよるが、10分もかからずに終わった。

「さて、今日は魔導具の改良を頑張ってやるぞ!」

 気合を入れて作成を開始した。
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