ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第834話 なんか面白いやつがいた

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「えぇ~、こいつがダンジョンマスター?」

 綾乃がウンウンと頷いている。

「ん? 急に近くに来て何なのあんたたち! この私を誰か知らないの?」

 何かの操作に夢中になっていたフェアリーが、俺たちに気付いてファイティングポーズをとって、俺たちの目線の高さまで飛び上がり、シュッシュ! と口で言いながらボクシングのジャブパンチの真似をしている。

「本当にこれ?」

 綾乃に再度確認すると、再度頷いた。

「これってどういう意味よ! あんたなんかワンパンなんだからね!」

 何故そのネタを知っているのか謎だが、ワンパンと言いながら俺の顔に向かって、ドロップキックをかましてきた。かわすのも面倒になり足を掴んで攻撃を回避して、摘まむように逆さにして様子を観察する。

「ゴーストタウンに召喚したフェアリーとは、違う気がするんだが……フェアリーなんだろうか?」

「ちょっとあんた! 失礼よ! 足を放しなさい! それに、私をフェアリーなんかと一緒にしないで! 私は『ハイフェアリー』なんだからね!」

 足を摘ままれているため、キーキーさるみたいに鳴きながら、俺に一生懸命攻撃をしてこようとしている。俺に攻撃をしているが、妻の4人は全く反応してない。

「ハイフェアリーって、フェアリーの上位種って事だろ? ただフェアリーのまとめ役みたいなもんだろ? 人間でいえばフェアリーが一般兵なら、ハイフェアリーは中隊長位か? どうせそんなもんだろ。でさ、ピーチ。こいつ俺をバカにしている……わけじゃないけど、攻撃的なのに誰も反応しないね」

「え? このハイフェアリーは、ご主人様を攻撃しようとしてますか?」

 ピーチたちには、このハイフェアリーは、ニコたちスライムとじゃれあっているような感じに、見えてるのかな?

「私が中隊長って何のこと? それにそこの人間! 『この』とかいうな! 『この』って! あんただって、ワンパンなんだからね!」

 だから、何でそのネタを知っているか分からんけど、確かにドッペルとはいえ、妻に敵意を向けられても何とも思わんな。何か微笑ましい……?

「お前さ、今さっきワンパンとか言いながら、ドロップキックしてきただろ? 何がしたいんだ?」

「お前って言うな! 私には、ロジーって言う名前があるんだからね! それに、ワンパンって一撃って意味でしょ! それより、足を放して! 噛みつくわよ!」

「ドジー? 名前からしてボケてるんだな」

「ドジーじゃなくて、ロジーよ! バーカバーカ」

 何やら勘違いをして言葉を覚えたようだが、元日本人がいるって事かな? まぁいいや、ジタバタしているロジーの足を放すと、「隙やり!」とかいいながら、またドロップキックをかましてきたので捕らえた。

「何がしたいんだ?」

「ムキー! あんたなんか死んじゃえ!」

 俺が懐に手を入れて、何かを取り出すしぐさをすると、ロジーの顔色が悪くなっていた。

「まぁ、落ち着け。これやるから食え」

 ネタ用に保管していたバナナを使う事になろうとは! バナナをロジーに渡すと、

「ナニコレ! うまー! うまー! もっと寄越しなさい!」

「こっちの話を聞いてくれたらな」

「モグモグ、何? モグモグ、が聞き、モグモグ、たいの?」

「食べるか、しゃべるかにしてくれないか?」

「モグモグモグ……」

「こいつ、食べる事に集中し始めたぞ……綾乃、こいつどう思う?」

「なかなか面白いわね! 私的には、アリね!」

「何がアリなんだよ! と言っても、こいつがダンジョンマスターなのか……」

「モグモグ、ゴックン。あんた! 何で私がダンジョンマスターだって知ってるのよ! はっ! まさか、ストーカー?」

 なんでこういうネタを知ってるんだろうか?

「何か……こいつ見てると、チビ神を思い出すな。ノリが何となく似てる」

「そんな事はどうでもいいから、何であなたが私のこと知ってるのよ!」

 なんかプリプリ怒り出したな。何かこいつのこと面白く見えてきたわ。

「えっと、ロジーとか言ったっけ? あいつは綾乃っていうんだけど、あいつを見て何か感じないか?」

 俺は慣れたというのは変だが、ダンジョンマスターは勇者を、勇者はダンジョンマスターを見ると違和感のようなモノを感じるのだ。それが感じ取れるか聞いてみることにした。

「んん!? そういわれると、あなたたちの中であの人間だけ、なんだか違う感じがするわね。何この感じ?」

「色々教えてもいいんだけど、その前にいくつか確認したいことがあるが、聞いてもいいか?」

 俺がそういう風に言うと、指を1本立てて何かをくれとアピールしている。もう1本バナナを食いたいってことだろうな。それで話をしてくれるなら、お安い御用なのだが……体の体積を考えると普通にシュリより食ってることにならねえか? バナナを出すと飛びついて「何?」と言ってきた。

 初めにダンジョンマスターになった経緯を聞いてみた。

 そうすると、たまたま見つけたこのダンジョンの中に入って探検をしていたら、空から見ないと絶対見つけられない岩山の影に横穴を発見して、その中にあった私より大きい宝石を見つけて、触ったら知識が流れ込んできて自分がダンジョンマスターになったことが分かったらしい。

 女神たちにあったことがないということだろうか? 聞いてみたら、何それ? 美味しいの? みたいなことを言っていたので、多分知らないのだろう。それにしても、ダンジョンコアを奪取するのには、DPが必要だったはずなんだけど……ダンジョンマスターが死んでいたとしても、一緒だったはず。

 なのに、このハイフェアリーのロジーは、ダンジョンコアを触ってダンジョンマスターなった? 神たちが仕掛けた罠か、ダンジョンマスターが仕掛けた何かなのかはわからないが、言うなれば現地産のダンジョンマスターみたいなものだろうか?

「そっか、色々教えてくれてありがとな。最後に、甘いものは好きか?」

「モチ! の、ロン! よ!」

 こいつ本当に警戒心ないよな。良く今まで生きてこれたんだ? そんな事を聞きながら俺は、王蜜をとりだして、シルキー特性のホットケーキを取り出し、王蜜をかけて提供する。

 妖精には、寿命というものは存在せず、フェアリーは死んでは生まれるを、人間の寿命の10倍位のスパンで繰り返すらしい。

 仮に1000年スパンだとしたら、999年生きて1年間死ぬとかそんな感じらしい。アバウトなのは、200年位で昔の記憶がなくなっていき、寿命間近になると自分でわかるらしい。

 それで、このダンジョンの記憶以外ほとんどないようで、少なくとも200年間はここに入ってくる王国の兵士と、鎧を操って遊んでいるらしい。ダンジョンコアの記憶とかは忘れてないのは、何か理由があるのかな? それを忘れるってことは、俺が自分の事を人間だったのを忘れるみたいなもんかな?

 美味そうにホットケーキを食っているこいつを見ながら、約束通り話をしてやらんとな。
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