ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
828 / 2,518

第828話 する事は意外に多い

しおりを挟む
 建物の視察も終わり、夕食の準備ができたとブラウニーが呼びに来たので夕食になった。

「それにしても、この家に着いてからまだ2時間も経ってないのに、よくこんな手の込んだ食事が作れたな」

 食卓を飾るのは、屋敷の食事とそん色のないレベルの品々だ。一緒に来ている商会の人間は、一緒に食べる事に恐縮していたが、噂の食事を食べられるという事で悩みに悩んで、一緒に食事をとる事にしたようだ。

 ミドリの「一緒に食べないのでしたら、適当に携帯食でもお食べください」という言葉で撃沈して、食事を食べる事にしたそうだ。

 胃袋を掴まれていると、こういう時に素の反応が出ちゃうよね。それにここまで暴力的な食事の匂いがしているのに、携帯食でも食べてれば? とか言ってしまうミドリに、少しだけ恐怖を覚えてしまった。拷問された事ないけど、拷問されるよりきついんじゃないかと思ってしまう。

 美味い飯を食べてゆっくりする事はできなかった。

「そういえば、ここに来た目的ってなんだっけ?」

 突然そんな事を言い出したのは、綾乃だ。

「もう忘れたのか? 多分ダンジョンマスターが敵だから、もし街中にいるなら勇者の称号を持ってる、綾乃の力を借りたいんだって話したじゃん」

「だって、あのテラリウムって言っていいのか分からないけど、あれを見ちゃったら全部吹っ飛んじゃったわよ! ダンジョンマスターがうんたら言ってたよね。でもさ、それならマップ先生に頼ればいいんじゃないの? 私がくる必要あったの?」

「それなんだけど、ダンジョンマスターのスキルで、他のダンジョンマスターは検索できないんだよ。多分、自分のダンジョンにダンジョンマスターが入ってきても、分からないようにじゃないかな?

 どうしてそんなシステムがあるか知らないけどね。だから、ダンジョンマスターを察知できる勇者の称号を期待して、綾乃を呼んだんだよ」

「なるほどね。マップ先生は万能かと思ってたけど、できない事もあるんだね。でも私が来たからって、ダンジョンマスターが見つかるとは限らないよね? その場合どうするの?」

「あくまでも、街の中でダンジョンマスターを捕捉できたらいいなって考えてるだけで、それができないなら、王国が管理しているダンジョンを強引に強制捜査する予定だよ。

 今回の件に国王がからんでないのは確認済みだから、ダンジョンマスターの単独か、若しくはバカ貴族にそそのかされたか、どっちでもボッコボコにしてやるつもりだけどね。その時は、最終確認として綾乃に判断してもらう予定だよ」

「え? 私もダンジョンに行かないとダメな感じ?」

「そこまで無理は言わないよ。レベルを上げているとはいえ、綾乃は戦闘に関して得意じゃないからね。拉致ってくるから、そいつを調べてもらう予定だよ。王国が管理しているとはいえ、兵士のレベルを考えるとそのダンジョンには、Aランクの魔物がいるか怪しい感じだし、攻略自体は問題なさそうだよ」

 そういうと、安心したのか綾乃はほっと息をついた。

「で、私はここで何をすればいいの?」

「護衛をつけるから、この街の散策でもしてもらうだけ。その間に見つけられれば儲けもの、位の考えでいいよ」

「了解。護衛についてくれるのは?」

「馬車護衛に付けてたドッペルの姿を少し変えて、友達風にする予定だけど、希望があったりする?」

「あ! それなら、護衛してくれる人をカッコいい系のお姉さんタイプにしてほしい! 友達じゃなくて、いかにも護衛ですっていう雰囲気のやつ! その人に守られるお姫様的な感じがいいな!」

 ちょっと妄想が入っているが、綾乃が満足するならそれでもいいか? 希望に合わせてドッペルを変化させていく・・・出来上がったのは、宝塚の男役?みたいなカッコいい女性のドッペルが完成した。とっても満足そうな顔をしている綾乃・・・こういうのが趣味だったのだろうか?

「そういう事で・・・食事はここに帰ってきてすると思うから、午前午後の1~2時間ずつ位で街を歩き回ってもらっていいかな?ついてきている商会の女性と一緒に行ってもらえると助かる」

 商会の女性と一緒に行ってもらうのは、その女性に市場調査をしてもらう予定なのだ。どんな物が流通しているのか、値段、不足している物等々、商売に関わりのあるものなら何でも調査する予定だとの事だ。

 綾乃の付き添いのついでに、そんな事ができるのかと思ったが、胸元に仕込んだカメラで色々撮ってくるらしい。色々手が込んでいるな。

 明日から俺がする事といえば、まずディストピアとの連絡を簡単にとれるように、通信設備を備えた建物の作成だ。本来なら、街の大工さんなどに工事を頼むのだが、今回は早急に準備する必要があったのでダンマスのスキルでこの街にあった建物を建ててしまう予定だ。

 そこに通信設備を設置する予定だ。会議室風、教室風、その他用途に合った部屋を、いくつか準備するのだ。

 1週間ほどで綾乃の成果がなければ、ダンジョンに攻め入る予定だ。国王には、俺の街を狙った人間が潜んでいるかもしれないから、といって強引に許可を出させている。

 国で管理しているダンジョンにどうやって潜むんだ! とか言っている大臣とかもいたが、一言だけ、別にダンジョンを丸ごと潰してもこちらとしては、構わないけど? と言ったら、全員が黙ってくれた。

 それをできるだけの実力を持っていることは知られているので、ダンジョンを壊されるよりは気の済むまで調査させた方がいいとの判断を下してくれたようだ。

 建物を建て終わって調整が済めば、俺も商会のメンバーと街に出て色々調査する予定だ。

 
「さてと、色々する事も終わったし、俺たちは一旦向こうに帰るわ。地下のプライベートスペースは、綾乃の自由にしていいから。テラリウムを設置した部屋だけは、散らかすのだけは無しな。ミドリがマジ切れする可能性があるからな。何かあったら連絡してくれ。明日の朝には戻ってくるからよろしく」

 綾乃は、俺にヒラヒラと手を振って、自分の世界に入ったようだ。俺たちはそれを見て意識を本体に戻す。ドッペルの姿で飯は食ったけど、こっちはまだ食べていないので空腹を感じている。

 シュリだけは、何度か意識を戻して間食しているが、他のメンバーは意識を移しっぱなしだったのだ。別に用意されていた食事を食べ、お風呂に入りニコを抱き枕にして眠りについた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

処理中です...