ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第824話 思っていた以上に難しい要求だった

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 グリエルたちがフレデリクの対応、ゼニスが新しくいく街への準備をしている中、俺にはする事がなくなったので、綾乃に頼まれた部屋の中をプロジェクションマッピングにする計画を始動する。

 今回のお供は、会話のできる従魔のダマ、森の妖精ことエルフのイリア、イリアがいるという事で、いつものメンバーであるシェリルとネルも一緒だ。

「さて、みんなに集まってもらったのは、プロジェクションマッピングという技術を使うみたいに、部屋の中を家の外みたいに見える景色を作ります! その評価をしてほしいので、みんなには特等席で特製のおやつを食べながら、評価してもらいたいと思います!」

 勢いに任せてそう説明してみるが、

『主殿、プロジェクションマッピングとは何ですかにゃ? 外の景色を見えるようにしなくても、外に出ればいいんじゃないですかにゃ? それに主殿にはダンジョンマスターの力があるから、わざわざ外に出なくてもダンジョンの中に、草原なりなんなり作ってしまえばそれで済むのではないですかにゃ?』

「いい質問だね、ダマ君! そもそもプロジェクションマッピングとは、どんな技術なのか簡単に説明しよう。ダマ君もよく見ているテレビがあるよね? あんなふうにみえる映像を、部屋の凹凸のある一面や全体に映像を映し出す技術が、プロジェクションマッピングという物なんだ。

 でも今回の目的は、プロジェクションマッピングだと限界があるから、違う技術を応用して作成しようと思っているから、協力してほしいって事なんだよ」

 それだと2つ目3つ目の質問に答えてないと突っ込まれてしまったので話を続ける。

「ダマ君やみんなには無駄な技術だと思うかもしれないけど、きちんとした意味があるんだよ。それは、今回の敵性ダンジョンマスターの対応策として綾乃に参加してもらうんだけど、その綾乃が希望したからね。どうせなら最高の物を用意して度肝を抜いてやろうと思ったのだよ!」

『主殿のどうでもいい、ビックリサプライズな計画のためって事ですかにゃ? なら初めからそう言っていただければいいのにゃ』

 ダマにはどうでもいいと言われ、イリアたちには生暖かい目で見られて、俺の心はズタズタになりそうだよ。でもめげない! やっぱり、こういうのって楽しいじゃん! 楽しい事は全力で楽しむのが、俺のスタイルなのだ!

「みんながどうしても嫌なら無理に手伝ってとは言わないけど、ダメかな?」

『「「「もちろん、手伝うよ!」」」』

 ダマの声まで揃って返事が聞こえた。

「とりあえず、みんなには隣の部屋で待機してもらって、できたら呼ぶからその都度評価してほしけど、いいかな?」

「あ! だから趣味部屋の隣なんだね! 私たちが時間を潰せるように、考えてくれてたんだ!」

 俺の意図を理解してネルがありがとうと言って抱き着いて、頬にキスをしてくれた。なんだか娘にキスをされた父親の気持ちが分かる気がする。

 思春期の娘は父親に冷たくなる事があるって聞いてた事があるから、娘ができても嫌われたくないと思う。でも優しさだけじゃなく、厳しくもしないといけないよな? って話がそれすぎだろ!

『姫様たち、1つお願いをしてもいいですかにゃ? ちょっと背中が痒いので、ブラッシングをしてほしいのですにゃ』

「ダマちゃんは甘えん坊さんなんだから! どうせなら、大きくなってもらって全身くまなくブラッシングしてあげようよ! イリアちゃん! ネルちゃん!」

 そう言っていたので、ダマ愛用の櫛を渡しておく。受け取ると、大きくなったダマに3人がまたがってわいわい言いながら出ていった。

「さてと、プロジェクションマッピングの技術は使わないって言ったけど、一度は実験してみたいよな。でも、映像とかってどうやって映し出すんだろうか? DPで簡単にできるようならつかってみたいな」

 プロジェクターを検索してみると、何百種類ものプロジェクターがリストに表記された。

 いつの間にか使えるようになっていた検索機能は便利なんだが、細かく指定すると見つけられなくなるため、大雑把にしか検索ワードを入れられないのがいたいな。それに、名前を知らない物は検索できないので、手動で一覧から探すことになる。

「おっと、これ便利そうだな。パソコンからUSBで取り込んだ景色の画像を投影できるのか、一面に対して1機……しかも平面じゃないと厳しいのか。それはしょうがないよな、細かい技術を俺に求められても無理だしな」

 そう思いながら、プロジェクターを召喚して景色を投影する。3面に投影してみたかったので、プロジェクターを3機使って前面と左右に1枚の画像を分割して投影してみた。

 思っていた以上に微妙だ……特に角の辺りなんかが不自然過ぎて違和感だらけ。技術の無い人間がやるとこんな風になってしまうのか、でも一応評価してもらおう。

 部屋に入ってきた3人と1匹は、無言で部屋の外に出ていった。これ以上にない分かりやすい評価だった。俺は崩れ落ちそうになる膝を気力で持ち直して、次なるチャレンジをする。

 プロジェクターを使う作戦は失敗だったので、壁一面を液晶にしてみるか? これも3面に用意してみて実験してみた。うん、思ったよりいい感じがするな。という事で、再度評価をしてもらう。

「景色は綺麗に見えるけど、なんか目がチカチカして疲れるかな?」

 液晶でやった景色の評価はこんな感じだった。目が疲れるって事か? じゃぁ今度はプリントした壁紙を張り付けてみるか。

 召喚はリストからできるのだが、部屋に設置するのは人力で行わないといけないので、無駄に時間がかかる。特に壁紙は1人で張り付けると恐ろしく時間がかかった。

 プロジェクターと液晶の設置は合わせて1時間ほどで済んだのに、1時間半も奮戦してやっとこさ張り付ける事が出来た。もうお昼の時間になりそうだ。

「自然がいっぱいなのに不自然?」

 イリアは首をかしげながら迷言を言った。確かに言われてみると、自然の景色なはずなのに不自然過ぎる。これを違和感と言わずになんていえばいいのだろうか? とりあえず、シルキーに怒られたくないので、3人と1匹を連れて食堂へ向かう。

 食事をしながら、実験の結果を振り返る。3つの中で一番評価がよかったのは、2番目の液晶を使った物だろう。目に負担がかかる事を無視すれば、出来はかなり良かったと思う……でも、違うんだよな。

 この後3日も使って、15以上の方法を試してみたが、しっくりくるものは無く、評価は口にするだけ無駄という物だった。
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