ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
804 / 2,518

第804話 光が見えてきた?

しおりを挟む
 あれから司祭たちに動きはなく、1週間が経過した。なのでこの俺たちが来てから、冒険者で行方不明になった者はいなかった。樹海に素材を取りに行って、死んで行方不明になってしまう冒険者もいるにはいるが、そこまで無謀な事をする冒険者は、すぐに死ぬか大怪我をしてこの街を離れてしまうらしい。

 司祭たちに動きはなかったが5人の冒険者に扮した奴らは、すべての事情を話すことで治療費を減額に成功したが、今までの悪事を治療にあたった俺の協力者が、冒険者ギルドにリークした事で、犯罪奴隷として売られることとなった。

 特に女の冒険者2名は、見た目はそれなりによかったので、ろくな人生は待っていないであろう。

 この時点でわかると思うが、この冒険者グループは司祭たちと協力関係にはあったが、実際に会った事はなく、こいつらから司祭の悪事を証明する事が出来なかったのだ。こいつらの証言だけであれば、真っ黒も真っ黒なのだが、決定的な証拠が無いため、グレーという事で現在の状況では捕まえる事が出来なかった。

 問題は、テイマーの3人組の犯罪の称号持ちだったが、3人とも捕まったその日の内に自殺をしてしまった。厳重に警備をしていたが、舌を噛み切りその上で手首の血管も噛み切り、さらには自分で喉を潰し頸動脈もちぎり自殺をしてしまった。

 3人とも同じ死に方で……さすがに看守がすぐに見つけたが、回復魔法を使える人間が近くに居らず、間に合わなかった。

「何度報告書を読んでも、この自殺の仕方はすげえな。よく自分で実行できたもんだ。貴重な情報源だったから、すぐにツィード君を派遣したのに、目覚めてすぐに実行に移したんだろうな。

 情報を渡したくないから、自殺をしたのは分からなくもないけど、これはな。情報を自分でしゃべってしまったら、何かがあったのかな? 何があっても絶対に死ぬ! という意志さえ感じる死に方だったもんな」

「そうですね。家族が殺されるとか? ですかね?」

 ライムがそういう風につぶやいた。

「もしそうだったとしても、自分たちを利用した人間が、その家族を助けるとは思わないんだけどな。俺の予想なら、連絡が取れなくなった時点で用済みだから、殺すか奴隷として売られるかのどちらかだろうな。

 もし家族を人質に取られて、犯罪を犯していたのであれば同情する気持ちはあるけど、自分たちも同じ事をしていたのだから、自業自得でもあるよな。罪のない冒険者を奴隷にしている手伝いをしていたのに、家族を助けてくれとか言われても、正直助けたいとは思えんな」

「今だから言えることですが、もし私たちの誰かが捕まったのなら、自分たちの力で取り戻します。その力が無かったあの人たちには同情しますが、この世界で力が無いのは……」

「ピーチ、それ以上はいいよ。人質に関してはこちらの勝手な憶測なんだし、ただ金のためにやっていた可能性だってあるし、洗脳されてそうする事が当たり前と思っていたかもしれない。今回のこの事件は、予想以上に面倒な案件なのかもしれないな」

 何の収穫もなく、1週間が過ぎた事によって俺はじれていたのだ。普通十日やそこらで、事件が解決する事は少ないのだが、何も動きが無かったので苛立っていたのだ。ただ本来の目的である、妻たちに可能な限り軍曹式訓練に、参加させたくなかったという事を忘れていた。

「あのテイマー3人組以外に協力者がいないとは限らないが、1組が捕まった事によって警戒しちゃったかな? 5人組の方は、大した情報も持ってなかったもんな。

 ただ単にお金がなかった時に声をかけられて、集められたパーティーなだけだったしな。それにしても何で職業を偽ってたんだろうな? 偽ってたから警戒したってのもあるんだけどな」

 ブツブツ言いながら自分の考えを頭でまとめていた。

 それから3日、特に変化がなく過ぎていった。そして4日目に司祭に動きがあった。今まであっていなかった4人の司祭が1ヵ所に集まって何やらしているのだ。今まで会っていなかっただけなのか、それとも定期的に集会をしているのか……以前は詳しく監視していたわけでは無いので、そこら辺が不明だ。

 司祭に付き添っている護衛のような人間が、何やら動き出していた。次の日に冒険者ギルドに何度も足を運んでいたようで、何組かの冒険者パーティーに接触しており、そのうち2パーティーが司祭と接触していた。

 そこで何が行われたかは分からないが、接触した1パーティーが他の司祭とも接触していた。3日目になると、称号に信者というものがついていた。

「この3日でこいつらに何があったんだ。こんな簡単に信者になるもんなのか? それに洗脳された形跡はないんだよな、まじで何があったんだか」

「ご主人様?」

「どうした、クシュリナ」

「1つ気になったんだけど、マップ先生で表示される状態異常って、スキルとかによるものですよね? スキルを使用しない洗脳技術があったとしたら、それってどうやって表記されるんですか? ご主人様のいた世界には、魔法やスキルが無いのに洗脳できる人たちがいたんですよね?」

「ん~確かに、スキルや魔法を使わない洗脳技術があった場合、マップ先生に表記されるのだろうか? この世界の仕組みから考えると、状態異常に含まれない気がするな。そう考えると、一連の問題は何となく見えてきたか?」

 スキルや魔法を使わないで洗脳する事によって、犯罪の称号も付かず信者に仕立て上げていた可能性が生まれた。となると、ミューズに限らず信者となった人間には、注意が必要となるだろう。

 そして一番の問題は、洗脳している司祭が信者ではないという事だ。明らかに宗教を利用している人間だという事になる。自分たちが利益を上げるために他人を利用する……俺が一番嫌うタイプの人間だ。

 犯罪の称号がついていないため、どうするべきか悩むところである。こいつらに食い物にされた人間は、数知れないだろう。その中には、質の悪い悪人もいただろうが、それ以上に何も悪くない人の方が圧倒的に多かったはずだ。どうにかならんものかな?

「シュウ君、1つ提案なんですが、ミューズの街に宗教関係者の立ち入りを禁止してはどうですか? 領主権限でその位やっても問題ないですし、犯罪になりません。思想の違いという事で、切り捨てる事が可能です。それで文句を言うようでしたら、嫌ならミューズに来なければいい、と言えばいいと思います」

 ミリーがそういう風に言ってきたので、グリエルに相談して宗教関係者の一切の立ち入りを禁止にした。

 それと同時に、中立地域で本人の意思表示無く治療行為を行った場合は、近くにある各都市毎に指定された治療代以上を請求した場合は、犯罪者として拘束する事を公布した。そしてその設定金額は、非常に安い物となっている。簡単に言えば、子供のお小遣い程度だ。

 そして公布したことによって、中立地域でそういった行為をすると、犯罪者の称号がつくようになった。

 どういった原理なのかは分からないが、この世界の法則で一定の人間に認められると、称号がつくようになるらしい。なので悪法を世界の法則として、認識させることはできないという事だ。法律のすべてが適応されたら、犯罪者だらけになるからな。

 ちなみに、悪法で国民を縛っている国では、衛兵や貴族、王族は軒並み犯罪の称号持ちという国も存在している。

 基本的に特権階級の人間は、街に出入りする際に称号確認が必要ではないので、自分が世界の法則で犯罪を犯しているという認識が無いのだ。称号がついたと分かっていても、システムの誤作動みたいな認識しかしないので、どうにもならないのだが……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

処理中です...