ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
710 / 2,518

第710話 ちょっとピンチかも

しおりを挟む
 アークデーモン、ハイデビル、バフォメットを部屋に引き戻して、戦闘を仕切りなおした俺たちは攻勢に出る。

 初めに部屋に引き戻されていたバフォメットは、すでに結構な傷を負っていたが、目で見て分かるようなスピードで傷が塞がっている。まるで、75階にいたメデューサと空飛び蛇みたいだった。

 目に見える程早く回復するって事は、かなり高い回復能力を持っているってことだよな。

「みんな。こいつらは上にいたメデューサと一緒だ。生半可な攻撃では、すぐにダメージを回復してしまうと思う。ダメージを積み重ねると考えるんじゃなくて、メデューサみたいに削り取っていく方向で、攻撃する方が効果的だと思う。

 手足のような末端を狙って、攻撃するのがいいと思う。体を支える脚は、首と同様に弱点になりえるから、生半可な攻撃では切り落とせないと考えろ。隙を作らないように隙をついて、大きなダメージを与えるんだ!」

 このダンジョンに入って分かった事だが、ある程度大きい魔物になるとダメージを与えて殺すというよりは、体を削り取った方が効果的だとわかったのだ。

 ヒットポイントを0にするのは変わらないが、五体満足の状態より手足の1本、指の1本、尻尾の1本、なんでもいいので削り落とすことが大切だとわかった。

 もちろん、弱点の首を切り落とせるのが一番いいだろうが、一撃で切り落とすのは困難だ。しっかり削りきってから、弱点を狙うほうがいいという事だ。

 俺の考えでは、体の一部を削り取る事によって、最大ヒットポイントのような物を減らし、回復量を低下させる事が出来ると考えている。

 もちろん体を削り取るわけだから、それ相応のダメージを与えられるだろうし一石二鳥である。本当に俺の考えている通りか分からないが、実際に効果が出ているので行わない理由はない。

 ハイデビルを視界に収め相対する。武器は片手剣。切り刻んでいくという意味で剣を選択していた。鈍器だと骨折などで内部にダメージを蓄積できるかもしれないが、最終的には回復されてしまう可能性があったので、剣を選択している。

 ハイデビルは腕が4本、足が2本、尻尾が1本はえており、名前の通り悪魔のような顔に、両側頭葉付近から太い角が後ろに流れるようにはえている。ハイデビルは知能も高く、複数の魔法を使う事ができる。

 個体にって使える魔法が違うが、大体2~3属性の魔法は使いこなしてくるため厄介な魔物だ。人間の歴史では厄災と名付けられた、災害指定を受けた事もある魔物だ。その時は、SSランクの冒険者が派遣されて、パーティーに被害を出して討伐されたらしい。

 右手2本の手のひらに赤色と緑色の光が集まってきている。デビル系の魔物が魔法を使い時の特徴だ。赤は火魔法、緑は風魔法。複数属性の魔法の使い方をよく知ってやがる。上にいたデビルはここまで器用に魔法を使ってなかったのにな! 魔力を多めに使い、

【アクアカーテン】

 【アクアカーテン】は【アクアベール】の上位版と言った所だろう。上位版と言うだけあって、ベールの数倍の防御力がある。魔力を多めに使ったのは、後ろで戦っている仲間たちに影響が出ないように包み込むためだ。

 ハイデビルから放たれた2属性の魔法は、お互いがお互いを増強するように絡み合い広範囲に広がってきた。だが、全部俺が発動した【アクアカーテン】に阻まれてデビルの方に押し返した。

「分かってたけど、こいつって本当に嫌になるくらい、魔法耐性が高いな。自分の魔法でダメージを受けるなんてバカな事はしないか。俺のヘルプをしてくれるのは、誰か分からないけど、俺の邪魔はしないだろうから大丈夫だろう」

 盾をかまえてハイデビルに突っ込んでいくと、ハイデビルの左右の手1本ずつにまた魔法の兆しが現れる。今度は、黄色と茶色の2色だった。

「ちっ! 今度は雷魔法と土魔法か、最低でも4属性も使ってくるのかめんどくせえ!」

 自分たちは存在する、火・水・風・土・雷・氷・光・回復等々、様々な属性を使える事を棚に上げて、そんな事を口走っていた。

 俺はとっさに収納の腕輪から、電気伝導率の高い金属を取り出す。何が電気伝導率が高いかなど分からなかったので、出したのは銅だった。

 俺が接近する前に黄色く光っていた左手を、前に突き出し魔法を使ってきた。俺はその前に、俺とハイデビルの間に銅を投げつけていた。ハイデビルの雷魔法は銅に吸い込まれて、俺に効果を与えられなかったが……

「マジか、銅が一瞬で融解した……」

 口から驚きのあまり声が出ていた。魔法だから本物の電気とは違うだろうが、金属が一瞬で融解するとかありえんだろ。

 唖然としたが、攻撃を仕掛けないわけにはいかないので、距離を詰める。右手の土魔法は何が起こるかと、注意しながら接近をしていくと、人間のサイズで比較すれば、ハンドボール程の大きさに見えるだろう岩が現れた。

 3メートルを越えるハイデビルが持っていることを考えると、バスケットボールより大きな岩を持っていることになる。どうするかと思えば、俺に向かって投擲してきたのだ。

 重量が何kgあるか分からないが盾ではじいて、ハイデビルとの距離をゼロにする。体を切り付けてみる。一応、刃は通る。観察している間にも、傷が塞がってきている。尋常じゃない回復力だな。切り落としてもはえてきたりしないよな?

 変な事を考えながら、ハイデビルから放たれる左右合わせて4本の腕の攻撃を受け止め、受け流し、かわして距離を変えずに対応する。

「スキルリンクを使う! 誰かサポートをしてくれ!」

 後ろから返事する声が聞こえたので、問題ないだろう。じゃぁ行くか。

【シールドバッシュ】【バーティカルスクエア】【メテオスマッシュ】

 まず【シールドバッシュ】で腹部を殴りつけ体勢を崩す。その後【バーティカルスクエア】で、横に広げられた左手の1本を的に、垂直に腕を回っての4連撃。

 これによって腕の皮膚と筋肉は何とか切り裂く事が出来たが、骨まで断つことはできなかった。それを予想して最後の【メテオスマッシュ】で骨を断ち切った。

 腕を落とされたハイデビルは、雄叫びをあげながら右腕の2本で俺を殴り飛ばそうとしていた。それを防いだのは後ろから飛び出してきた、シェリルとネルの2人がハイデビルの2つの拳を殴りつけていた。

 確かにこの2人も手甲はつけていて、ハイデビルみたいに素手で攻撃を得意としてる。でも、さすがに体の大きさを考えて防げるとは思わなかった。

「2人ともナイスだ。いったん後ろに!」

 俺の指示を受けて2人は後ろに下がる。

「腕は切り落とせることは分かった! 後は繰り返すだけだ。みんなサポートを!」

 距離を離さずに対応してしていた。にもかかわらず、ハイデビルは魔法を使うために左右1本ずつに黄色光が集まってきていた。

「マジかよ! この距離で魔法ってありえんだろ!」

 俺とハイデビルとの距離は1メートル程しかない。普通だと、この距離で魔法を使う事はあり得ないが、ハイデビルはその距離でもお構いなしに魔法を使うようだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

処理中です...