ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第681話 バッハの寝床

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 ガウガウ鳴いているダマを放置して、黒龍ことバハムートに視線を戻す。というか、ダマお前念話だかで会話できるのに、何で獣みたいな鳴き声を出してるんだ?

「この山の頂上……はワイバーンの住処だったな。今作っちまうか? と言っても相当広いエリアじゃないと、窮屈だよな?

 普段は外に住んでもらって、飯や狩りの時だけ、ダンジョンの中に入る感じがいいかな? って事はやっぱり山の頂上がいいな。ワイバーンと交渉して、頂上がバハムートでその周りにワイバーン、っていう形でもかまわないか?」

 バハムートにそう聞くと、問題ないと頷いてくれた。ワイバーンたちは、隷属を受け入れたと分かってすぐに、自分たちの巣へ戻っていってしまったので、頂上まで交渉しに行かなければならない。普段は、昔交易に使っていた街にも住んでいるのだが、今日は頂上みたいなので……

「交渉するか。バハムート、お前に乗る事って出来るか?」

 そういうと、バハムートは頭を下げて、登るように促してきた。交渉するために一応ダマも乗せると、ハクもニコも乗りたがってついてきた。

 嫁たちも誰かついてくるかと思ったが、バハムート、ダマ、ハクにニコ、ワイバーン5匹がついてくからこちらに残って処理を始めるそうだ。と言っても住人に話をするだけなんだがな。

「バハムート! ……普段呼びするには、微妙に長い気がするな。俺の従魔たちって基本名前が短いからな。という事で、普段はバッハと呼ぶけどいいか?」

 そうするとバハムートは、キュオンッ! と返事をしてくれた。

「よし、バッハ、山の頂上までよろしく」

 バッハの頭の上は小さな毛があり、それに捕まれば振り落とされる事は無かった。小さな毛と言ってもバッハから見た毛なので、ダマの尻尾位の太さのある毛なんだがな。そもそも、これを毛と言っていいのかどうかも、よく分からないけどな。

「風をまとっているのか、俺たちに全然影響がないな。思った以上に優秀かもしれない。陸には神獣のダマ、海にはリバイアサン、空にはバハムート……どんどん戦力が増えていくな。俺は何と戦おうとしているのだろうか?

 なんにしても、バハムートとリバイアサンは、ダンジョンにもぐるのには連れてけないからな。って、忘れちゃいけない、アンデッド作成で生み出したスケルトンたちも、立派な戦力だったな。寝ずの番ができる、本当に頼もしい奴らだな」

 独り言を言っている間に頂上に着いた。敵性ワイバーンにギャーギャー言われるかと思ったら、到着する前からだろうか、ワイバーンたちが並んで、バッハに頭を下げていた。俺はバッハの頭をペチペチ叩きながら、

「お前、こいつらに何かしたのか?」

 バッハは、濡れ衣だと言わんばかりに頭をふる。

「ちょっ! 頭に俺が乗ってるんだから、そんなに頭をふるな! 誤解したのは悪かったけど、原因って他にいるなら、こっちのワイバーン五匹か?」

 そうすると、ワイバーンたちからもギャーギャー抗議の声が上がった。俺が悪者みたいじゃないか!

「という事でダマ! あいつらが何で頭下げてるか、聞いてきてくれ」

 俺の命令を聞いたダマが、とぅ! と言わんばかりのジャンプをキメて、ワイバーンの近くまで行って、ガウガウと話しかけている。ワイバーンはギャーギャーと控えめな声で返事をして、何度かやり取りをすると戻って来た。理由が分かったようだが、それにしては足取りが重い気がするのは何故だ?

『主殿、原因が分かりました。何で頭を伏せているか、その最大の原因は主殿の様です』

「はぁっ?」

 思わず変な声が出てしまった。

『簡単に説明しますと、以前にワイバーンの卵を取りに来た時や、今連れているワイバーンたちを連れて行った時も、そして今も指揮をしているのは主殿。私たちの目の前に、天地がひっくり返っても勝てないドラゴンがいて、それを従えている存在が怖いとの事です』

 ダマからの報告を聞くと、『やっぱりそうだと思った』と言わんばかりに、ワイバーンたちが俺に向かって、ギャーギャー言っている。そして言い返せない……本人たちからそういわれてしまえば、否定のしようがないもんな。両手両膝をついてがっくりした。

「気を取り直そう。ダマ、ワイバーンと交渉して、この山の頂上にバッハを住ませることにしたから、ちょっとだけ下に移動してほしいとお願いして来てくれ。住みやすいように岩山もいじるから、希望を聞いてきてくれ」

 ガウッ、と鳴いて再度ワイバーンのもとに向かっていった。

 五分位話したかと思うと戻って来た。

『主殿、ワイバーンたちは、全面的に受け入れてくれました。ですが、一つだけお願いをされました。内容は、黒龍……バッハの庇護下に、入りたいとの事です。本当なら直接、主殿の庇護下に入りたいと言っていますが、さすがに恐れ多いので、間接的でもいいのでといった感じでした』

「庇護下に入りたいんだ。みんなで仲良くしてくれるなら、俺が直接隷属化してもいいけど、どうなんだろうか?」

『多分、喜んで受け入れると思います。聞いてきましょうか?』

 ダマがまた話に行って、しばらくして戻ってくる。

『やっぱり、何の問題もなさそうです。今からでもお願いしたいと、泣いていました』

「その泣くって喜んでるのか? 悔し涙じゃないよな?」

『少なくとも、生活が安全になると言う意味で、喜んでいましたね。嘘か本当かまではわかりませんが』

「まぁいいや。バッハ、こいつらはお前が面倒みるんだぞ! 何か困ったことがあったら、相談してくれ。ダマを通して話せば、細かい内容も伝わるからな。そしてダマ! いくら後輩が出来たからといって、偉ぶるなよ? そんなことしてると、コウとソウにいびられる事になるぞ」

 そういうと、身体をブルりと震わせて、周りをキョロキョロし始めるダマ。この様子を見るに、コウとソウにこっぴどくやられているんだろうな……頑張れダマ!

 ワイバーンたちに近付いていき、隷属魔法をかける。全員すんなり受け入れてくれた。

「そだ、先輩のワイバーンにあたる五匹にも、お前たちを任せるか。バッハは、全体の管理という事で頼む」

 全員が肯定の返事をした。五対一とはいえ、勝った奴の下につくのはどうなのかと思ったが、俺の支配下にはいっていて、一対一で実力が圧倒的に上なので、何の問題もないそうだ。魔物の世界はよくわからんな。

 丸く収まったから、それでいいかな?
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