ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
680 / 2,518

第680話 終結

しおりを挟む
 黒龍が溜めてから吐き出した、雷属性のブレスが被弾したワイバーンが、力なく地上に向けて落下している。見た感じ死んではいないが、かなりのダメージを負っているようだった。

「あいつ、大丈夫か?」

 自然と声が出てしまった。それにしてもドラゴンのブレスと、ワイバーンのブレスって、ここまで威力が違うのだろうか? ミリーが大きな声で魔導通信機に向かって『起きろ!!』と怒鳴っていた。それを聞いた被弾したワイバーンは、意識を取り戻したのか、身体を反転させて羽ばたきだした。

「ダメージのせいか、動きがぎこちないな。ミリー、あいつを近くに呼べるか? ピーチたちに回復してもらおう。ついでにバフもかけておきたいから、ライラも一緒に行ってくれ。防御は雷属性でよろしく。あのブレスがどれだけ吐けるか分からないけど、念には念を入れておこう」

 本当はあまり手伝わずに、黒龍に勝ってもらいたかったが、予想以上にLv以外の差が大きくでてしまい、これ以上放置していたら、もしかしたらワイバーンの内の、何匹かが死ぬかもしれないと思い方針を変更した。

 被弾したワイバーンが回復してもらい、バフも受けて戦場に戻っていく。傷を負ったばかりの兵を回復させて、そのまま戦場に送り出す……鬼畜の所業だな。

 五匹目のワイバーンが戦場に、戻ると一声ギャア! と鳴く。一匹が降りてきて、バフをかけてもらっている。五匹が全員バフをかけてもらうと、戦場の空気が変わった。バフの分だけ動きが良くなっていて、ダメージも少し増えている。黒龍が鬱陶しく感じており、鳴く声に怒りがこもっているような印象の声だ。

 ワイバーンたちが、黒龍の対応に慣れてきたのか、距離がドンドン近くなってきていた。数の利を上手く活かして、死角からの攻撃を仕掛けている。初めはスキルを使わずに、攻撃できる範囲で無理なく攻撃している。

 今度はその攻撃に合わせて、他のワイバーンから魔法やブレスが、追加攻撃で入りダメージが蓄積しているのが分かる。

 黒龍が少し距離を取り、息を吸い込み溜める仕草が見られたため、全員が一気にその場から離脱した。雷属性のブレスだけはコーン状に広がるのが分かっているので、回避ができないのならダメージを減らす努力をしようという事らしい。まぁミリーの指示だから従魔のワイバーンは従うよな。

 前回より溜めの時間が短い、雷属性のブレスを吐きだした。

「前より威力が低い気がするけど、気のせいか?」

 俺の質問にみんなが低いと思うと頷いていた。やっぱり弱いか。溜めが短い分ダメージが減るのは、よくわかるな。じゃぁ、もっともっと溜めれば、強いブレスが吐けるのか? 上限はあるだろうけど、強くなると考えられる。スキルか何かだろうか? ドラゴンの固有の特技みたいなものか?

 黒龍とワイバーンたちの戦闘も、終盤だろうか? 回復とバフのおかげで、ワイバーンたちの動きは全然衰えず、黒龍は体力も減るしダメージも蓄積されているため、動きが悪くなっている。

 黒龍の動きが悪くなればなるほど、ワイバーンたちの攻撃が苛烈になっていく。スキルを織り交ぜダメージが跳ね上がっていく。

「おーおー、あの黒龍って本当に強いな。あれだけダメージを受けているのに、まだ落ちないって本当にタフだな。ステータスに現れない数値の差なのかね? 人間だったらレベル六〇〇超えてても、Lv四〇〇を超えているワイバーンに、あれだけ攻撃くらえば二、三回は死ねるだろうな。

 それに、ワイバーンの尻尾の針に、何度もさされて動けなくならないって、どういう事なんだろうな? 魔物には効果が薄い? ドラゴンだから?」

 原因は分からないが、一対一だったらワイバーンでは勝てなかっただろうな。そういえばハクを一緒に戦わせようと思ってたけど、そのハクは……ダマの背中で、丸くなって寝てやがる。ついでにニコもハクの上で寝ている。こいつらに戦う気は全くなかったな。

 黒龍が動きの精彩さが無くなり、ワイバーンたちに捕まり地面に叩きつけられた。

「どうやら抵抗の意思が、無くなったようですね。行きましょうか?」

 ミリーの案内で黒龍の落ちた場所に向かっていく。到着したが暴れている様子は見られない。

「観念したのかな? ワイバーンたちに捕えておくように、言っておいてくれ」

 近付こうとすると、俺の前に自然とシュリが俺の前に立ち、俺の後ろにピーチとライムがついている。隷属魔法をする時には、頭に手を置いた方がいいと聞いたので、黒龍の頭に向かって移動する。

 頭に手を置こうとする前に、シュリがチェインとは違い、実物の鎖を取り出して口が開かないように、ぐるぐる巻きにしてから物理法則を無視して引っ張り、頭を地面にこすりつけさせる。

「ちょっとかわいそうな気もするけど、俺の支配下にはいるなら生きる事を許してやる! 隷属魔法を受け入れろ! これで受け入れない場合は首を刎ねる」

 ドラゴンは総じて頭がいいため、言葉はわからなくても、意図は通じるようなので便利だ。俺の声を聴いたワイバーンも、ギャアギャア鳴いて黒龍に言い聞かせるようなトーンだ。

 俺の被害妄想じゃなければ、ワイバーンたちは俺の事を『この方に大人しく従わなければ、死あるのみ! 慈悲は無い! だから大人しく受け入れてくれ』って言ってる気がする。

 必死になって鳴いているワイバーンの声を聞いてなのか、力の入っていた頭から力が抜けた。どうやらこっちの事を受け入れたようだ。抵抗はしないのだろう。頭に手を付けて隷属魔法を使い支配下に置く。

「どうやら支配下にはいってくれたようだな。きちんと住みやすい場所も、用意してやるから暴れるなよ。まずは、これを飲め」

 俺は、Dランクのエリクサーが入っているバケツを、黒龍の口に投げ込む。飲んだ音が聞こえしばらくすると、元気いっぱいになった黒龍が俺の前で頭を下げた。

 そこにいつの間にか近寄って来たダマが、頭の上に手を乗せている。やっと後輩ができて嬉しいのか? でもその態度は良くないと思うぞ! そういえば、従魔の序列って何かあるのかな? 今度確認してみるか。

 黒龍は不本意ながらも、ダマの後輩扱いを受け入れた。多分勘違いしてるだろうけど本気で戦えば、ダマの方がおそらく強い。こいつ知らない間にダンジョンにもぐって、自分でレベリングしてるんだから、強くもなるわな。

 格としても神獣なので、ドラゴンに見劣りするものではないだろう。何より自分の身体をある程度デカくできるため、問題は無いと思われる。

「さて、俺の支配下に入った事だし、名前を付けてやらないとな。カッコいい名前がいいな。見た目がF〇シリーズのバハムートに似てるから、バハムートにするか」

 そんなノリで言うと、黒龍がキュイン! と鳴いた。気に入ってくれたようだ。頭を撫でてたダマが鳴いた際に、急に動かした頭に吹き飛ばされたため、走って戻ってきて猛抗議をしているが、蹴飛ばして黙らせた。何で俺だけ! みたいな顔するな。そして空気を読め!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...