ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
653 / 2,518

第653話 強敵キマイラ

しおりを挟む
 危機的状況で、第二ラウンド目の戦闘が開始される。

 戦闘が始まる直前に準備の終わった妻たちが、一五一階の扉から声をかけてきた。

「ダークナイト、マンティコアを引き付けて、みんなの方で戦闘してくれ。みんなもダークナイトが戦いやすいように、支援をしてくれ。俺はファイアナイトと一緒に、離れて戦闘をするからそっちの足止めは頼んだ!」

 ファイアナイトがキマイラの意識をひいている間に、側面へまわり一歩でトップスピードになり、シールドチャージをくらわせて、場所を強制的に移動させるために吹き飛ばす。

 何度も使っていたせいか、新しいスキルが手に入った。名前は【神歩】。今まで使っていた、一歩でトップスピードになる技術が、スキルとして芽生えたようだ。

 俺とファイアナイトは、吹っ飛ばしたキマイラを追いかけて、コロッセオを移動する。入って来た入り口から離れて、魔物が出てきた入り口の方へ移動する。何となく入り口が不吉に感じたので、土魔法で見える範囲すべてを埋めておいた。もし階段があるならどかせばいいからな。

 シールドバッシュをした時に感じたが、予想以上に頑丈だった。

 どうやらファイアナイトを動かしているのは、リリーっぽいな。盾捌きにレイリーの面影があるから、間違いないと思う。

 俺が側面に移動をすると、キマイラは俺とファイアナイトが視界に入るように移動して、息を吸うと火炎のブレスを吐いてきた。ファイアナイトは、火に対する耐性が高いので、無視して眼前迄移動してメイスを叩きつけている。

 俺は盾をかまえて、腰に下げていた杖に触れ【アクアヴェール】を発動して、ブレスのダメージを軽減している。

「あぶな。リリー、ダメージは有りそうか?」

『鎧たちに比べれば、問題なくダメージが通っているように思われます』

 ファイアナイトから声が聞こえるが、誰の声か判別するのは難しい無機質な声だった。ダメージは通っている感じはあるらしい。どれだけ回復能力があるか……俺も攻撃を仕掛けるか。

 ファイアナイトの後ろから、キマイラに向かっていく。ファイアナイトを飛び越えて、キマイラの顔の前に躍り出る。右前足による攻撃が来たが、盾で受け流して鼻を斬りつける。一番柔らかいと思われる鼻は、簡単に切る事が出来た。

 前足による攻撃を続けて受け流したが、体が移動してしまったので、キマイラの側面を通るように移動したついでに、横っ腹を斬りつけてみたが、少しだけ毛を切り落としただけに終わった。

「思った以上に毛、身体は硬いな。鼻は簡単に切れるくらいだったから、攻撃がきかないって事は無いだろう。ちょっとスキルを使って攻撃してみるか」

 リリーにタゲをとってもらい、タイミングを見計らって攻撃を仕掛けるようにした。キマイラに押され気味のリリーが、吹き飛ばされて追撃をされそうになったので、俺は攻撃を仕掛ける。

【ダブルスラッシュ】

 不意打ちのタイミングで、尻尾の蛇をスキルで補助して、二度斬りつける。スキルの補正はやはり高く、毛より硬い尻尾でも、傷つけることができた。

 さすがに切り落とすことはできなかったが、初級スキル【ダブルスラッシュ】でも傷つけれるという事は、一撃が強いスキルを使えば切り落とせる可能性が出てきた。さらに言えば、神歩を使った連携であれば、切り落とせるだろう。そのチャンスがあるかどうかだけどな。

 そんなことを考えていると、尻尾の蛇が俺の方を向いて、緑色の霧を吐いてきた。

 ヤバい! 尻尾のブレスと言えば毒が最有力、霧が届く前に大きく息を吸ってその場から離れる。

「この状況じゃ近寄れないよな……といっても火魔法で、燃やし尽くせるとは限らない。ならとる行動は、一つだな」

 腰につけている杖に触れて、魔力を注ぎ込み風の球を作る要領で、霧の中心に風が吹き込むように風魔法を使用する。小さな台風ができた所で、その周りを岩で包み頑丈に固める。包んだ岩にオリハルコンでコーティングして、収納の腕輪に突っ込む。

 念のため万能薬を飲み干した。万能薬は解毒ポーションの様に、飲んだ瞬間にしか効くタイプではなく、品質によって効果が出ている時間が変わるタイプだ。飲み終わった時に、少しだるく感じていた体から、だるさが無くなったので、これの効果中はキマイラの毒はきかないだろう。

 それでも、限界がある可能性は捨てきれないので、早めに尻尾は切り落としておきたいところだ。

 キマイラはリリーを吹っ飛ばした後、距離を詰めて追撃をしているが、俺への警戒は緩めていない。むしろ尻尾を傷つけたことが気に入らないのか、警戒度が上がっている気がする。

 ファイアナイトの鎧の頑丈さを考えれば、この程度でやられる事は無いだろうが、攻撃され過ぎて動きが悪くなるのは困る。警戒しながら近付いていくと、リリーへの攻撃をやめて距離をとった。俺は回復魔法を唱えてリリーを回復する。

「大丈夫か?」

『痛みはないですが、普段の身体と勝手が違うので、少し戦いにくいです』

 慣れない身体で戦闘するのは、大変だろうな。頑張ってほしいところだ。

「火炎ブレスより尻尾の毒攻撃が怖いから、早めに切り落としたいと思ってる。少しそっちに負担かけるけどよろしく。できるだけ全力で攻撃を仕掛けてくれ、隙をついて絶対にあの尻尾を切り落とすから」

『わかりました。気を付けてください』

 そういうと、リリーはキマイラに向かって走り出す。リリーは鈍器スキルを使ったことがないので、盾スキルで対応するようだ。

 ファイアナイトが持っていた盾も、俺と同じでカイトシールドのような形で先端が尖っているのだ。シールドチャージみたいに、盾の面を当てるスキルではたいした効果の違いは出ないが、シールドバッシュの様な殴りつけるスキルでは、ダメージが変わってくる。

 メイスを上手く使って攻撃をして、隙をつくようにシールドバッシュが決まっている。

 痛みがなく頑丈であっても、Sランクの魔物であろうキマイラを前に、慣れない身体のファイアナイトの鎧で戦っているリリーでは、完全に抑えきれるものではないので、俺は魔法で援護している。

 この援護も後衛の立ち位置である場所からではなく、前衛と中衛間位の立ち位置で、魔法を撃つ場所としてはかなり近い位置になっている。

 この位置から魔法で援護しながらキマイラを牽制して、隙を見て神歩を使って尻尾を切り飛ばす予定なのだ。

 リリーが正面で、爪による攻撃をメイスで叩き落したり、ブレスの隙をついて顔面を叩いたりしている。リリーが不利にならないように、魔力を込めて拳大の礫を高速で撃ち出して、キマイラの攻撃を妨害している。

 二十分も続けているとキマイラが焦れたのか、大ぶりな攻撃が増えてきた。リリーもチャンスだと思ったのか、俺がキマイラの視界から消えるように移動を始めた。

 別の頭があるのか、尻尾の蛇は俺の方を見ている。杖を持っていた右手から杖を腰に戻すと、蛇からの毒ブレスが吐かれた。効果は無いだろうが一応息を止め、毒霧で視界が悪くなったのを利用して、左手に持っていた盾を地面に捨て、神歩を使い距離を詰め抜刀術を使う。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

処理中です...