ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第632話 贅沢な悩み

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 エルフの街からの帰り道……ニ時間でヴローツマインまで到着し、そこから魔導列車でディストピアに帰る。

 いつの間にか、俺が作っていた魔導列車の客室部分が改造されており、中の家具と言っていいのだろうか? それも最高級品の物が設置されている。

 話を聞いた所、俺専用の魔導列車だと……いつの間に! と思わなくもなかったが、作った理由を聞くと、王族が移動する時には、普通とは違う移動手段を使うのが普通の事だ! とグリエルとガリアに胸をはって言われた。だから俺にふさわしい物を、準備したようだ。

 今、その豪華な魔導列車の中で、土木組の子たちに今回の報酬の話をしている。

「シュウ様! 今回の報酬額って、あれで間違いないですか?」

 土木組のリーダー格の子が、食い気味に俺に尋ねてくる。

「今回の報酬は、間違いなくあの金額であってるよ。何か問題でもあった?」

「いえ、違います! 今回の報酬で、目標金額に達したんです!」

「おぉ、何かほしい物でもあったの?」

 俺がそういうと、土木組の子たちが、若干寂しそうな顔をする。

「シュウ様にお願いしていた、シュウ様と同じ杖を買うためのお金が、たまったんです! それも一人分じゃなくて、全員分の金額が!」

「え!? マジで? 確かまだ半年とか一年ほど、かかるんじゃなかったっけ?」

「シュウ様を驚かせようと思って、ああいう風に言ってたんです」

 俺が本当にびっくりしていることを見て、土木組の子たちは、驚いた顔を見れてよかったみたいな顔をしていた。

「そっか、もう目標金額がたまったのか。かなり高額だったはずなのに……よく頑張ったね。ディストピアに戻ったら、渡そうか」

 みんなが元気に返事をしてくれた。そして自分たちの客車に戻っていく。

「それにしても、本当にあの金額を稼いでしまうなんてな。リンドどう思う?」

「正直私なら、シュウの所に来てなかったら、まず貯められる金額ではないわね。それこそゼニスくらいしか、買えないと思うくらいに高かったしね。カエデは?」

「そうね、なりふり構わないで、成金共に刀を打てば何とかなるだろうけど、それでも結構な時間がかかるわよ」

「だよな~、俺は例外として、あの金額を貯めるならAランク冒険者でも、結構な依頼を数うけるか、レアな物を手に入れない限りはきついもんな。

 それを全員分か……壁の重要性と、畑の有用性を理解している……あっ! ゼニスが依頼することが多かったから、報酬金額が良かったってことか。ゼニスのことだから、それ以上稼げると思って、工事をお願いしてるんだろうな」

 土木組の子たちが稼いだお金の額に驚きながら、俺たちは顔を見合わせる。本人たちはあまり自覚していないが、孤児だった人間が数年のうちに、この世界でもトップクラスのお金を稼ぎだしている。

 アホな貴族の息子共なら、喉から手が出る程ほしい人材だろうな。身分が低いから、妾だけど一番の扱いをするからとかいうんだろうな。そう考えると、あまり少人数での仕事は良くないかもな。

「で、これだけ稼げる子たちを、貴族共は放っておかないよな? どうしたらいいと思う?」

「あの子たちが自分から望んで、貴族の所に行くというなら止めないけど……下手したら、奴隷の首輪をつけられて、馬車馬の如く働かされて、貢がされる未来しか見えないわね。あの子たちも強いけど、それだけじゃどうにもならない事もあるもんね」

「やっぱり、もう少しレベルを上げるのは必須として、武器も使えるようにしておいた方が、いいんじゃないかな? 他にも、奴隷の首輪対策で、ツィード君が言ってた、解除方法を教えておくべきじゃない?」

「あの悪戯精霊が、着けられてても解除する方法がある! みたいな事言ってたよな。後で聞きだしておくか。でも、過保護になりすぎてもいけないよな……どこまでしていいのか、悩ましい所だな」

「シュウ君の庇護下にある間は、金銭面とか以外ならある程度優遇しても、問題ないと思うよ。庇護下になくても、あの子たちの今の能力を考えれば、優遇されても何の問題も無いわ」

「それもそうか。土木組の子たちを担当している奥様方に、そこらへんはしっかり教えてもらえるよう、お願いしようか。

 他にもそういうのを伝えるのが、上手そうな人にもお願いして、授業として入れてもらうか。ここまでしても、貴族に嫁ぎたいというなら、こっちとしては止められないしな。すべての貴族がダメってわけじゃないからな」

 土木組の将来を考える俺たちは、お節介焼きのおじさんおばさんみたいなものなんだろうな。

 夜にはディストピアに到着し、土木組の子たちに杖を手渡す。それの代金として、大量のお金を受け取った……が、ただでさえお金がありすぎて困ってるのに、どうするか?

 グリエルとガリアにでも渡しておこう。ディストピアの運営資金に追加しておけば、足りなくなって困る事は、無いだろう! と思い、次の日に渡しに行くと、

「シュウ様、ふざけてるのですか? 毎月ディストピアの収支表を、お渡ししていますよね? 読んでないんですか? 読んでないですよね? このディストピア、住民から税金をとっていないのに、びっくりするくらい黒字なんですよ!

 街や建物の維持費に、ほとんどお金がかからず、支出として多いのは、人件費だけなんです。大規模な工事は領主の仕事と言って、ほとんどお金を受け取らないんですから!

 普通にお金のかかる、インフラ整備や衛生管理に、ほとんどかお金がからないんですよ? わかりますか? そこにこんなに大量のお金を、入金されても困ります! 今でさえどんどんと、お金がたまっていくんですから!」

 グリエルに呆れて、怒鳴られて怒られてしまった。そっか、ディストピアは、黒字で運営されてるのか。てっきりゼニス、というか俺の商会から多少なり、金が出てると思ってたが、こいつも税金を納めてるだけで、他に特にお金は出していないようだ。

「このお金どうしたもんだかな。いい案ないかな?」

「普通に考えて、この金額を使う方法なんてないわよね。本来街を作れば、こんなものじゃ全く足りないけど、シュウ君が作ってしまえば、こんなに金額必要ないもんね」

「確か何処かに鉱山都市、ヴローツマインみたいな鉱山ダンジョンの国があるって、言ってたよな? そこでミスリルとかオリハルコンを買いあされば、ある程度消費できるか?

 ヴローツマインの物を、買い占めるわけにもいかないしな、後はダンジョン産のレアアイテム位か? 最終手段とすれば、DPに還元してしまえばいいけど、DPが足りてないわけじゃないからな」

「しばらくは、そのままでいいんじゃない? 今考えても、出てこないものは出てこないわよ」

 カエデの言葉を聞いて、後回しにすることが決まった。
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