ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
598 / 2,518

第598話 戦闘開始

しおりを挟む
 対策を練って、ラディッツ本隊が来るのを待っていた。そろそろ視界に入るだろう。

 今回は、前日にも朝にも敵のレベルを把握するために、マップ先生で細かく調べている。やはり結構レベルの高い別動隊がいるようで、森の中を抜けて俺たちの後ろに、回り込もうとしている。

 俺たちがいる事は、わかっているような動きだな。先行偵察の部隊はやられたか、通り過ぎてからここに陣を張ったと、思われているのだろう。

 敵の様子を見る限り、警戒はしているがそこまで強いと思っていない感じだろうか? ダギアの事を考えれば、こんな対応にはならないだろう。自分たちの方が、ダギアより強いから負けるはずがない、とでも思っているのだろうか? 考えるだけ無駄だな。

「ダマ! 従魔のみんなを連れて、森の中を移動している部隊を倒してくれ。戦闘不能に追い込めばいい。ただ、危ないと感じたら、迷わず殺せ!

 ハクは、地上じゃなくて木の上等を移動している人間に、注意して地上部隊の援護を。ニコたちスライムは自由でいいか、ダマの指示には従えよ!」

 それにしても、ダマがこの従魔たちのリーダーをしている理由を考えると、このまま任せていいのか不安になるけど、俺の命令でダマが指示を出すんだから、多分大丈夫だよな。

 視線をダマに向けると、器用に右手をあげて親指を立てている。つもりだろうか? いい表情をしている。

 強さだけを見れば、ダマは従魔の中で一番強いから、いざとなれば実力で止めてくれるだろう。逃げられるのは、ハクかニコ位なものだろう。

 それにしても、一番強いのに一番下っ端だから、おつかいみたいな事もさせられてるんだよな。頑張れ! でも下克上は無いだろうけどな。

「さて、みんな、俺達が対応するべき敵をマップ先生と照らし合わせてしっかり確認するんだよ。レイリーも上手く指揮してくれると思うけど、俺達は奇襲という形で強い奴らを叩き伏せていくからな」

 全員が神妙に頷く。一応マークしている人間は、団長と側近五人、冒険者枠の七人の合計十三人が要注意人物としている。

 他にも熟練の兵士たちは、ディストピアの冒険者と同じくらいのレベルがあるので、絶対に同数以上で対峙するように言いつけている。といっても、ラディッツの方が人数が多いので、必ずそういった場面になってしまうので、一つ策をとっている。

 策と言っても、俺たちが後衛の部分に突っ込んで、マークした騎士と冒険者を排除した後、牽制する形だけどな。走って接近でもよかったのだが、ウォーホースを連れてきているのだから、有効利用しようという事になり、ニ人ずつ乗って攻め込む予定だ。

 ラディッツの主張は、前の奴らと大して変わらなかったので、どうにもならないと思いそのまま戦闘に入る。

 今回は、攻めずに守りの隊形で迎え撃つ感じだ。でも、違うのは敵が五十メートル程に近付いた時、ウォーホースに乗った俺たちが、一気に相手部隊の後方に回り込むように走り出す。

 前衛は無視されたと思い混乱に陥るが、思ったより優秀な隊長でもいるのだろうか? わずかな時間で混乱を鎮めていた。その際に聞こえてきたのは、あの人数ではどうにもできない、騎士団長がいるのだ、俺たちは前に進むぞ、みたいな事を言っていた。

 ところがどっこい、その騎士団長を倒せる手札として、俺たちが行くんだけどな! ただ、こっちの目論見通りに進んでいるのはありがたい。反転して戻ってくる可能性もあったけど、そうならなかったようだ。

 俺たちは後衛に突っ込む前に、味方のために援護射撃を行っておく。

【マルチプルフレア】

 一メートル程の火の玉が、敵の上空に到着すると火の雨となって分裂する。攻撃力的にはたいした事は無いが、火の塊の数が尋常ではないため、大なり小なり火傷を負っている。

「俺たちは、俺たちの仕事をしよう!」

 もう敵後衛は、戦闘可能距離の範囲内だ。敵の魔法使いも馬鹿ではないので、すでに詠唱を始めており、間もなく放たれようとしている。

 複数の属性の魔法が、弾幕のように飛んできている。相反する属性の魔法も干渉しないように、間隔を開けて放たれており結構厄介だ。

 俺が指示を出す前に、先頭を走っていたシュリがフォートレスを使い、魔法を受け止めていた。とはいえ、数が尋常でないため、さすがのシュリも全部を抑えきれていない。

 手伝おうと思ったら、ライムが風魔法【ダウンバースト】を使用し、魔法の軌道を地面へずらした。走り辛くなってはいるが、ウォーホースには問題は無いようで、スピードを落とさず突っ込んでいく。

 続けてきたのは弓による攻撃だったが、これはイリアが唱えたウィンドウォールで、ほとんどの矢が軌道がそらされていた。五本ほど威力の違う矢があったが、それは各自がはじき落とし問題は無かった。

 嫌らしい攻撃の仕方だな。どう考えても、対人戦を考慮した戦い方だ。普通に考えて、魔物相手なら矢の威力に、強弱をつける必要なんてないもんな。すべての魔法に、相手の防御力を突破する魔力を、込める必要なんてないよな。

 魔力の無駄だもんな。って事は、たくさん生み出しても、見た目は一緒でも本命だけに、必要な魔力を込めればいいのか。一個だけ強力なのを作ればって思うだろうけど、一個だけだと相反する属性に簡単に、打ち消される可能性があるんだよ。

「さて、今回初お披露目の魔法を使おうか。みんなエアボールの準備を……行くよ、【エアプレッシャー】」

 エアボールは、自分の身体を中心に空気のボールを作る魔法だ。風魔法の影響を受けにくく、軽減する防御魔法だ。簡単に言えば、エアプレッシャーの防御のために作った魔法だけどな。

 エアプレッシャーは、空気の塊で押しつぶすイメージだろうか? エリアにかけ、エリアの中にいるモノの動きを制限する魔法なので、近接攻撃を仕掛けると、どうしても自分たちまで影響を受けてしまうため、防御魔法のエアボールで軽減して突っ込むのだ。

 先手はとられたが、こちらの術中にはまったため、力の弱い魔法使いや弓使いたちは、上手く行動できなくなっている。力のあるやつらは強引に動いてはいるが、いつもの動きは出来ないだろう。俺たちだって対人のために色々考えたんだぜ!

 動きの鈍くなったやつらは全員無視して、マークしていた十三人への攻撃が始まった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

処理中です...