ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
565 / 2,518

第565話 時間がかかった……

しおりを挟む
 トンネルに煙玉を突っ込んでからニ分程すると、煙玉から煙が出なくなったので、再度煙玉に火をつけて投げ込む。ニ分毎に繰り返していると、五分ほど経過したあたりで、離れた場所から煙がいくつも出てきた。

 かなりの量の煙が中に流れ込んでいる事を考えると、内部は結構広いのだろうか?

「そういえばさ、魔物って煙で燻したら巣穴から出てくるのかな? 亜人系の魔物だと思うけど、体のつくりは似ているのかな?」

「そういえば、こういった間接的な攻撃をするのは初めてよね。それに亜人系でもゴーレムやパペットなら、空気は関係ないわね。亜人系じゃないけど、アンデッド系も空気類は、一切不要だったような?」

 カエデが俺の質問を聞いてから、首をひねって思ったことを口にしている。

「このダンジョンに、今までパペット系の魔物はいなかったけど、一一一階から初めて出る魔物かな? 考えても分からないから、しばらく続けてみよう。攻撃に警戒をしておいてくれ。ハク、ニコ、敵がいたらブレスをその方角に吐いてくれ」

 十分が経過した頃に攻撃が飛んできた。俺たちが来た方向からの攻撃の様だ。背面に回り込んでいたのか。いくつか煙が出ている所があったので、そちら側に向かって一気に距離を詰める。

 結界が固定タイプじゃなくて、動くタイプだったら攻めるのも簡単だったのにな。防御をするために先頭を走っている俺は、フォートレスを使って攻撃をはじいている。空気抵抗が酷かったので、風魔法で抵抗を減らして対応している。

 後ろの方から妻たちがついてくる。煙が出ている場所から、若干外にズレていた。そこにいたのやはり亜人系の魔物だった。おそらく、鬼人族だろう。

 冒険者みたいに武器防具を装備している。弓や杖なども持っており、高Lvの亜人特有の知性を感じる目をしている。でもな、お前らは俺らに攻撃をしてきたから、ここで終了だ!

 たどり着いた所にいた鬼人族は、十五人程の集団だった。見つけてしまえばこっちの物。先手をとろうとスキルを発動させようとした時に、俺の隣を走っていたクロとギンが、俺のフォートレスを飛び越えて、大きな声で吠えた。

 俺はその行動に驚き止まってしまった。それが功を奏したのか、クロとギンにヘイトが集まっているのが分かる。俺は発動しようとしていた、ヘイトを稼ぐスキルをキャンセルし、フォートレスも解く。

 クロとギンがヘイトを稼いで両側に移動すると、今までこちらを見ていたのに意識すらしなくなり、ニ匹の方を向いてしまう。隙だらけ……

 そこからは一瞬だった。いくら強い魔物だったとしても、無防備な側面から自分たちより強い俺たちが突っ込んで来れば、どうなるかは分かりきったことだ。ニ分と持たずに十五匹は全滅した。

「クロ、ギン! こっち来い!」

 ほめてもらえるかと思ったのか、ハッハッ言いながら尻尾をブンブンふり、俺に近付いてくる。

「お前らな、ヘイトを稼ぐスキルは勝手に使わないでくれ。俺が気付かずにスキル使ってたら、タゲがバラバラになったかもしれないだろ?

 お前たちに言葉をしゃべれっていうのは無理があるから、せめて意思表示でいいからしてくれ。自分が先に行くみたいな。この程度の魔物で後れをとらないとは思うけど、もしもの時があるから今度から注意してくれよな」

 ほめられると思ってたのが一転して怒られたためか、尻尾がこれ以上ない位垂れ下がっていた。

 …………

「でも、今回はうまくいったから良しとしよう。次からは気を付けるんだぞ! 今回はよくやったな!」

 頭を撫でられて、ほめられていることが分かり、なでられている手に頭をこすりつけて、尻尾をブンブンふり始めた。これで今度から注意してくれるだろう、避けタンクみたいな位置付けで扱っても、問題なさそうかな?

「それにしても、一グループの魔物を倒すのにこんなに、時間がかかったのは初めてだな。ボス戦とかは除いてな。これから先もこんな感じかな? 急いで下に降りた方がいいかな?」

「急いだほうがいいと思いますが、敵を無視するわけにはいかないと思うので、今まで通りが一番だと思います」

「ピーチもやっぱりそう思うか? 今の程度の攻撃なら設置型の結界で防げるだろうから、夜も問題ないしいつも通り進もうか。一応、ハクは空を飛んで上からの監視をお願い」

 キュイキュイ言いながら、ニコを鷲づかみして空に飛び立っていく。あのニ匹って同時に召喚しただけあって、仲がいいんだよな。ニコの上でハクが寝る事もあればハクの上にニコが乗ってることもあるんだよな。

 それにしても、ニコの身体ってどうなってんだろうな。俺の頭の上に乗ってる時や、今みたいなハクに鷲掴みされている時って、体の中に取り込まないけど、敵なんかは体の中に取り込んで溶かしたりするんだよな。

 自分の意志で取り込む対象を決められるとはいえ、何でそれが出来るのは不思議だけどな。

 特に先程と変わる事のない、追いかけっこを五回ほどしていると、時刻は夕食の時間をさしていた。

「この辺で野営しようか。今日は上に重ねないで平らに並べてつかおう。入り口以外はロックウォールで塞ぐね。

 全部ふさぐと空気が淀んじゃうから、いくつか穴をあけて、即席で作ってファンを取り付けて空気を入れ替える事にします。という事で作業開始!」

 三十分もかからずに野営場所が完成した。空調もしっかり働いているようで、空気が淀んでいる感じはなさそうなので、問題はなさそうだ。

「魔力を多めに使って強度を高めに結界を作るから、夜番のメンバーが念のため内側に結界を張ってくれ。一個目の結界が壊れた時のための備えだ。まぁ、ロックウォールで囲んでるから問題ないだろう。食事を食べようか!」

「「「「「いただきまーす」」」」」

 挨拶をしてみんなで夕食を食べ始める。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...