ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第541話 治療院の話が進んでいく

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 グリエルと治療院の話をしてから一週間。施設の名前はそのまま治療院に決定した。入院施設は一応作っているが、継続的な治療が必要で動かすわけにはいかない怪我人や病人以外は、受け入れるつもりはない設備だ。

 この一週間はいろんな人に意見を聞きながら、治療院についての話し合いを行っている。些細な事はいくつもあったが取り入って一つだけ大きな問題が上がった。

 シングルマザーとはいえ人と触れ合う職場になるので、自由恋愛を推奨したいと考えていたが、下心があって近寄ってくる人間も絶対いるだろうし、回復魔法の希少性を理解して強引に引き抜こうとしたり、利用するだけ利用しようとする輩も、出てくる可能性が高いという話になった。

 根本的な解決方法は無いが、本当に好き同士で結婚に発展するなら、喜ばしい事なので推奨するが、うちの人間が調査した結果多少なりとも、よこしまな結果があった場合は、すべてを話してそれでも結婚する意志が変わらないのであれば、どうしようかという話になった。

 最終的に出てきた案は、宝珠という物を使うという所から俺たちが特殊であるという事が、ばれてしまうだろうという事で、俺の隷属魔法を受け入れた人材だけが、宝珠による回復魔法の習得を出来るようにしてはどうかという事になった。

 隷属によって与えられる命令は、俺たちや宝珠の事を一切外へ漏らさない事、商会や治療院など内部の情報を外に漏らさない事、もしもの時は宝珠によって覚えた魔法やスキルの使用を禁ずる、の三点になった。

 本当は縛る事なんてしたくないけど、絶対に俺の情報が漏れないとは限らないので、特に魔法を覚えさせるような話であれば、もっと雁字搦めにしてもいいという意見すら出てきたので焦ってしまったくらいだ。

 さてグリエルから報告があって、隷属魔法を受け入れる人がそろったので、話を勧めたいと連絡があったからいそいそと庁舎へ向かう。

「シュウ様、お待ちしていました。今回の治療院計画に携わる人員が集まったので、隷属魔法をかけて頂こうと思ってお呼びしました」

「ん? ディストピアに来てるのか?」

「いえ、さすがにディストピアへの移住の人ではないので、ゴーストタウンにて待っていただいています」

「あ~俺が各街に行って隷属魔法をかけるんじゃないのか」

「シュウ様が直々に行くとなめられる可能性があるかもしれないので、呼びよせると同時にディストピアの技術の一端に触れてもらっています」

「俺がゴーストタウンに向かえばいいんだな。その際に話す事って何かあるか?」

「今色々説明している最中なので、特にシュウ様から話す必要はないですね。一言二言話したいことがあれば、話していただいて問題ないかと」

「了解。向かうか。ゴーストタウンに行くなら、誰か護衛をつけないといけないか。ダマだけじゃダメだろうから、冒険者ギルドにいるミリーについてきてもらえば問題ないか。グリエルも一緒に行くんだよな?」

 グリエルは頷いて俺についてくることになった。そのまま冒険者ギルドのフロアに移動して、ミリーについてきてもらう事になった。ゴーストタウンに行く途中に、クロとギンの散歩をしている三幼女を発見したので、そのままついてくることになった。

 その場には三幼女だけじゃなく、土木組と土木組のお供のオオカミたちも一緒に散歩をしていた。時間的にはお昼休みが終わって、自由時間ってところか? 午後の勉強は今日は無いのかもしれないな。

 ゴーストタウンのどこに集まってもらっているのかと思ったら、商会の本店に集まってもらっているそうだ。ゴーストタウンの商会の本店には、大きな倉庫も設けているので人が集まりやすくなっているみたいだ。

 広い部屋に通されると中には、五十人程のシングルマザーだと思われる女性がいた。その腕や隣には、子供や赤ちゃんも一から二人ずついるようだ。

 頑張って育ててるんだろうな、みんな来ている服がボロボロなんだよね。こういうのを見ると、ついつい物をあげたくなるけど、そういうのは反対に良くないのでこのまま話を進めて行く。

「みなさんに受け入れてもらいたいことは、これから俺たちに関する秘密を知る事になると思うので、それを一切他者に漏らさない事、これから所属する商会や治療院など内部の情報を外に漏らさない事、もしもの時はこれから特殊な方法で覚えた魔法やスキルの使用を禁ずるです。

 今からこの三つの内容について、魔法を使って縛らせてもらいますので、受け入れてください」

 集団に向かって隷属魔法を発動する。隷属魔法とはいっても俺の感覚からすると、契約魔法みたいなかんじだ。

 相手の心をおって、隷属させるために魔法を発動すれば、完全にこっちに従う事になるが、魔法をかける際に決めごとをして、それに対して魔法をかけると、その決め事にだけ反応する隷属魔法が完成するのだ。契約みたいな決めごとと、奴隷の首輪なしの奴隷みたいな感じ、と言った方が近いだろうか?

 隷属魔法のかかった女性達は首をかしげているが、隷属魔法の効果は絶対なので、これで関係者以外に話す事が出来なくなっている。本人の意識が判断するのではなくて、魔法による制御なので何が判断しているか分からないが、本当に関係者以外に伝える事が出来なくなるのだ。

 この中にスパイのような人材がいても伝える方法がないので、隷属魔法を解除できる方法でもない限りは、話を聞く事すらできないだろう。

「グリエル、どこで訓練させる予定だ?」

「バザール様の所の農場の一角に建物を準備していますので、そこで集団訓練を受けてもらう予定です。手の空いているブラウニーたちも、少し派遣してもらっていますので、管理は問題ありません」

「俺はあれだけを準備しておけば問題ない?」

「そうですね。あれを準備しておいていただければ、問題はありません。シュウ様にやっていただくことは終わったので、もう大丈夫です」

 もうお役御免となったようだ。悪いことにならなければそれでいいか、後はみんなの頑張り具合ってことだな。魔力の面を考えると、ちょっと心許ないからついでに、能力向上の宝珠もセットで渡しておこう!

 ヒーラーって魔物を倒さなくても、レベルが上がるんだよな。パーティーみたいなグループに入っていると、稼げるのかと思ってたけど、実際は回復魔法を使って状態を回復させると、経験値が手に入っていたようだ。

 そう考えると治療院は、ダンジョン化してしまった方がいいだろうな。経験値が増えるならそれに越した事は無いもんな!
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