ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
533 / 2,518

第533話 緊急事態発生

しおりを挟む
「サイクロップス君は、不慮の事故で亡くなったので、次倒す予定だったデビルトレントから殲滅を始めよう。悪魔といっても所詮木の魔物だから、遠距離からの魔法攻撃で仕留めるぞ。俺がDPで通路を作るから火魔法を打ち込もう。魔法組準備。魔法を撃ったら前衛のところまで後退! 開始!」

 魔法組から魔力の高まりを感じたので、DPで操作して通路をあけると、魔法がキレイに飛んでいく。見た感じファイアボールが、複数向かっているようだ。

 そうしたら別の魔力の高まりを感じて振り向くと、イリアが精霊に魔法を使うようにお願いしているようだ。見た感じ土の精霊っぽいな。火魔法が通路に吸い込まれると同時に入り口が塞がった。どういうこと?

 時間差で塞がった入り口から鈍い重低音が聞こえてきた。

「あ……デビルトレント、有効属性が効きすぎたのかお亡くなりになりました」

 魔法が強かったこともあるが、おそらく入り口に蓋をする事で、中での爆発の威力が跳ね上がったって事だろう。確か密室空間での爆発は、通常の何倍もの威力があると、何かの本に書いてあったような?

 どっちでもいいか。

「次はアラクネだな。こいつも魔法で何とかなったりしちゃうのかな?」

「おそらく、アラクネも昆虫系の亜人扱いだったはずですので、火魔法に弱いかと思います」

「オーケー、俺が今回は蓋するわ。DPを使って蓋するから、俺も火魔法で協力する。準備しようか。物理系は、次のビッグオリハルコンゴーレムで思う存分暴れてくれ」

 俺は魔法組と一緒に魔法の準備に入る。俺のイメージするのは、粉塵爆発。土魔法でよく燃える粉をイメージする。圧縮してそれが一度目の爆発で広がって、二度目の爆発が起きるイメージだ。

 粉塵爆発とは、可燃性の高い粉塵が大気中に、一定濃度以上混ざりあう事でちょっとした火花で、連鎖的に燃え広がり爆発してしまう現象だ。昔は炭鉱で起きていた恐ろしい事故だ。炭鉱で炭を掘る時に粉が飛び散って、その粉が一定濃度以上貯まる事によって起きてしまっていたようだ。

 可燃性の高い粉塵の中には、小麦粉等も含まれるので、遊び半分で取り扱ってはいけない! 料理には包丁も使ったりするので、真剣に行うように! 食料は無駄にしてはいけません! 特に俺の場合は、スカーレットにどやされるので……

 魔力の高まりを感じて、俺も魔法の最終工程に入る。DPで通路をつなげて、みんなの魔法が通路に吸い込まれていく。通路の奥で糸を飛ばそうとしているのが見えたが、DPで通路に蓋をする。

 次の瞬間! DPで作った厚さ一メートル程の蓋が、内部の圧力に耐えられずにはじけ飛んでしまった。

 それにいち早く気付いたのはシュリで、俺の近くに控えていたので、俺を後ろに投げ飛ばし前に出て、スキルを発動していた。シュリの行動を追いかけるように、ピーチが防御結界を展開し誰一人怪我無く、アラクネを処理することに成功した。

「ご主人様、お願いですから危険な事はしないでください!」

 シュリよ。爆発で飛んできた石より、お前さんが焦って放り投げた今の方がダメージでかいぞ。だって二十五メートルは、ノーバウンドで投げられたからな。確かにあのまま無防備であそこに立ってれば、今よりはひどい怪我を負ったかもしれないけど、今回はさすがにやりすぎだわ。

「すまん。まさかこんな風に蓋が吹っ飛ぶとは思わなかったから。でもシュリ、さすがに痛かったよ」

 ハッとしたシュリに謝られながら、次のビッグオリハルコンゴーレムを倒す準備を始める。

「ヴローツマインのダンジョンで倒した奴とは違うだろうし、あの時は二匹で出てきたから、大分状況は違うけど、気を引き締めて戦うぞ!」

 結果から言うと、ビビるほど脆かった。何というか即席栽培されて、まだ体が馴染んでいない感じと言えばいいのだろうか? 重量に見合った威力はあったが、ヴローツマインの奴に比べると、動きの精細さもないしスピードも無かったので一方的な破壊作業になった。

 おそらく、他の三匹も即席栽培だった為、体がきちんと出来上がっていなかったのだろう。だから魔法だけでも倒しきる事が出来た気のだろう。

「何か肩透かしでしたね。おかげで私たち、物理組のメンバーは不完全燃焼です」

「と言っても、残っているオーガクイーンは、綾乃が操る人造ゴーレムが対応するから、俺たちに出番はないよ。よくわからないけど、ここまで来ても変な感じが拭えないから、俺たちで倒すのは無しだよ」

 渋々みんなが了承してくれる。ディストピアに戻ると、綾乃は準備できているようで、人造ゴーレムたちをバトルフィールドに進ませていった。綾乃はディストピアからの指示だしだ。ダンジョンの中なので、スキルで監視ができるから、細かい命令もできるので何の問題も無い。

「シュウ、ここから指示出さないとだめ?」

 綾乃が目の前で指示を出したいようで駄々をこねているが、断固として許さなかった。もし向こうに行くなら、ディストピアに住めなくなると言ったら、すぐに黙ったので大丈夫なようだ。

 オーガクイーンは、見た目は何というか、身長三メートル越えのムキムキな、マッチョレディだった。何というか、押しかけられたら夢に出そうだな。

 人造ゴーレムは動きが速いので強いのだが、今回は明らかに綾乃の作った異色の人造ゴーレムが目立つ。サイズ的に俺の作った人造ゴーレムと同じ大きさなのに、ごっつい装備を付けている奴もいた。全身が鎧のように硬いのにさらに鎧を着せるって、動きが鈍くなるだけじゃん。

 手甲や脚甲は、まだ武器としての効果があるけど、鎧は体当たり位でしか効果がないのでは? 体が破損するくらいの攻撃を防げるかもしれないけど、敵にそこまでの攻撃力があって当てられるなら、鎧の意味ないしな。

 他にも手そのものが刃物で、体のいたるところに刃物を仕込んでいる人造ゴーレムや、手そのものを武器に変えている、人造ゴーレムなどちょっと意味の分からないゴーレムが何体かいた。

 武器を持ち替えられるのを強みとして作った、人型のゴーレムだったのにその特性をつぶす……おそらく聞けば『ロマン!』と答えるのは、わかっているのであきらめよう。

 ロマンっていうなら、アラクネみたいに多脚歩行型のゴーレムを作ろうぜ!

 なんて変な事を考えていると、綾乃の人造ゴーレム(刃だらけ)が勢いにまかせて、オーガクイーンに抱き着き……ドロップ品に変わった。

「終わったな。なにもなさそうだけど……俺の思い過ごしだったかな?」

 人造ゴーレムがドロップ品を回収している様をながめていると、刃だらけの人造ゴーレムがドロップ品を拾おうとして、近くの人造ゴーレムにどつかれていた。コントかよ!

 微笑ましく見ていると、魔導無線機の緊急コールが鳴った。

「ご主人様、こちらダンジョン監視室です。どこにいたか分からないですが、Sランクの魔物だと思われる高速移動体が、樹海の森を駆け抜けてディストピアへ向かってきています。この速度だと三十分はかからずに、外縁部に到着すると思われます」

 Sランクの魔物か。俺の嫌な感じはこれだったのかな? さて、対応を考えないとな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

処理中です...