ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
260 / 2,518

第260話 ゴーレムの試作

しおりを挟む
 思いがけないイベントがあったな。まさか勇者がいきなり攻めてくるとはな。ただいい情報も手に入れられた。やはり魔物や俺自身以外の力に頼れば、撃退が可能だという事。いくらダンマス特効があるとはいえ、あの程度の実力ならSランク以上の魔物を召喚できるようになれば何とかなるだろう。

 ここで問題になるのはシングル以上になる事の出来た勇者がいた際や、仲間に複数のシングル以上の冒険者がいた場合だな。鬼人たちにも頑張ってもらわなきゃいけないけど、精霊種なら魔物ではないからおそらく問題ないだろう。

 実際に今回門番をやっていたのはドワーフだったのだ。実力的にはBランク程だった彼らが、殺されずにある程度しのいだことから考えても、間違いないはずなのだ。ただ人間、正確には精霊種だけど、人や他の魔物以外の召喚は正直抵抗があるんだよな。よくわからない何かがさ。

 後は、鬼人たちとは別枠で戦闘部隊を作るか? もともとは俺を守るための娘たちだったが今となっては、使いつぶすなんてことは考えられない。手に入れた当初も使いつぶすつもりはなかったけど、今は妻になる者たちなのだ、手放すわけがない。

 情が移らない潰しても心が痛まない存在があれば、何としてでも手に入れたいところだな。そういえばクリエイトゴーレムで作ったゴーレムは魔物じゃなかったっけ? くくりにすると魔法生物的な扱いだったはずだよな。

 この世界において体内に魔石があるものが魔物って言ってた気がするな。ってことはクリエイトゴーレムで作ったゴーレムに魔核を搭載してもこの世界の法則で言えば魔物ではないはず。魔核は魔石を加工したものではあるが、魔法で変質させてるわけだしな。

 実験するにしても、あの勇者は処刑してしまったしな。どっかにはぐれ勇者でも落ちてないかな? 中には現地産の勇者もいるみたいだから、不遇な扱いを受けてる現地産勇者がいたら勧誘してみるか? 俺は頭の中で色々整理してからみんなに話していった。

 クリエイトゴーレムによる実験は早めに始めましょうと言われたので、今は新しく作ったダンジョン工房でどんなゴーレムを作るか検討中だ。参加者は、俺・妻たち・カエデ・レイリー・リンド・老ドワーフたちだ。まぁいつものメンバーだよな。話していく中で気になった事があったのでみんなに質問してみた。

「前から思ってたんだけど、ゴーレムやオートマタって、他の魔物に比べると動きがよくないよね? みんなはなんでだと思う?」

「何を言っておる。ゴーレムは魔力によって自分の体を動かしているんだ。人間みたいに関節がないから動きが悪くて当然だろ?」

「じゃあ関節のあるオートマタの動きが鈍いのはどう説明するんだ?」

「そういえばなんでじゃ? オートマタはゴーレムより動きはいいけど、魔物に比べれば動きがスムーズかと言われれば疑問が出てくるな。魔力によって動かしているからってことになるのか?」

「んー強引な考え方をすれば、そういう事になるのかな? じゃぁ魔力を過剰供給できるゴーレムを作ったら素早く動けるようになるのかな? 魔核を複数埋め込んで試してみようか」

 クリエイトゴーレムでつくったゴーレムに行動プログラムを書き込んだ魔核以外に魔力をブーストする魔核を複数取り付けて起動してみた。

「一応成功って言っていいのじゃろうか? 確かに動きは早くなったけどなんか違う気がするのじゃが……」

 老ドワーフがつぶやく。俺もその意見には賛成だ。行動プログラムのせいなのか、動きは早くなったがぎこちない動きのまま動きが早くなっているから違和感がひどい。

「魔物のゴーレムも動きは、こんなだから違いはないんだろうけど、これじゃ魔物や人間みたいにある程度柔軟な動きは難しいのかな」

 そうやって色々試行錯誤しているが納得のいくものが全然できなかった。俺以外のメンバーは三幼女を除いて、他にも仕事を掛け持ちしている状態なのでフル参加はしていないが、空いた時間を利用してゴーレム作成に付き合ってくれている。

 そんなこんなで一ヶ月が過ぎたが、何の成果もなく俺はげんなりしていた。三幼女が何か気になる事を思いついたといって、代表してシェリルが質問してきた。

「ねぇねぇご主人様! ゴーレムとご主人様がよく召喚しているリビングアーマーって、金属が動いているって意味では同じだよね? なら何でゴーレムみたいに動きが悪くないの?」

「ん~どっちも魔力で体全体を強引に動かしてる? 土や石、金属を強引に動かしてるんだよな。何で動きに違いが出るんだろうな? 鎧の中が空洞だから? とりあえず試してみようか」

 中抜きのゴーレムを作って動かしてみた。ぎこちない動きは相変わらずだったが、同じ魔核の量に比べれば中抜きの方が断然早かった。

「この結果から考えられるのは、動かすものが少なければ少ないほど消費魔力が減って、余った分を動きのスピードに回せるってことかな? でもリビングアーマー程じゃないよな、何が違うんだろうな」

「ネルずっと疑問に思ってた事があるんだけど、リビングアーマーさんって鎧同士がくっついてないのに、なんでバラバラに崩れたりしないのかな?」

「え……? そういえば、何でくっついてないのにバラバラにならないんだろうな? そもそも鎧ならなんにでも乗り移れるのもどうしてだろうな? そういう魔物だと思って気にした事もなかったよ」

「クリエイトゴーレムで、リビングアーマーみたいな形で作れないの?」

「物理的に繋がっていないと無理っぽいんだよね。パーツをどこか一部でもくっつけておけば問題ないんだけどそうすると強度が落ちて反対に打たれ弱くなっちゃうんだよ」

「そうなんだ。色々と難しいんだね。イリアちゃんも何かない?」

「ん。ゴーレムは人の形してるけど、人間と同じ構造はしてない。オートマタはプラモデルみたいで人の形をしているけど、やっぱり人間とは同じ構造じゃない。魔力で動くとは言え筋肉もなしに動くのは不思議。スライムは可愛い」

「ニコたちスライムが可愛いのは認めるけど、なんで今言ったの?」

「スライムは人の形をしていないけど、ゴーレムと同じ魔法生物。動かしているものが液体か固体かの違いだけ」

「っ! ゴーレムっていって人型をイメージしてたけど、人型じゃなくてもゴーレム化してたな俺。アダマンコーティングだって一応ゴーレム化の一種だしな。水でスライム型ゴーレムを作ってみるか。魔核にどう書きこめばいいんだろうな? とりあえず動き回るようにして、障害物は避けるか上るかにしてみるか」

 スライム型試作第一号は起動するとススーッと移動を始める。床がびしょびしょになるかと思ったが、魔力で形が作られているようで床が濡れる事はなかった。指で突っついてみると表面にゴムのような感触があるが、少し抵抗すると指が中に埋もれてしまった。

 指を抜くと何事もなかったかのようにまた動き出す。今のは屑魔石で作ったので次はDランクの魔石を使って作ってみる。今度は突っついても指が突き抜ける事はなかった。抵抗はあるが固いわけでは無いといった感じだろうか?

「あれ? ゴーレムの素材になった物質によって、強度が変わるんじゃなかったっけ? 何で魔核を変えただけで突っついても体を突き抜けなくなったんだ? この魔法はもっと研究しないといけないっぽいな」

 とりあえず今日実験したことをレポートにまとめてみんなにも読んでもらおう。他の人の意見を聞いたらもっといい考えが出てくるかもしれないしな。

 レポートを書き始めた横で三幼女たちは、スライム型水ゴーレムを引っ張ったり突っついたりして、キャアキャア騒いでいた。その横でニコがその様子を羨ましそうに見ている気がする。顔がないから見てるのかもよくわからないけど。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。  主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。  こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。  そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。  修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。    それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。  不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。  記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。     メサメサメサ   メサ      メサ メサ          メサ メサ          メサ   メサメサメサメサメサ  メ サ  メ  サ  サ  メ サ  メ  サ  サ  サ メ  サ  メ   サ  ササ  他サイトにも掲載しています。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

クラス転移で裏切られた「無」職の俺は世界を変える

ジャック
ファンタジー
私立三界高校2年3組において司馬は孤立する。このクラスにおいて王角龍騎というリーダーシップのあるイケメンと学園2大美女と呼ばれる住野桜と清水桃花が居るクラスであった。司馬に唯一話しかけるのが桜であり、クラスはそれを疎ましく思っていた。そんなある日クラスが異世界のラクル帝国へ転生してしまう。勇者、賢者、聖女、剣聖、など強い職業がクラスで選ばれる中司馬は無であり、属性も無であった。1人弱い中帝国で過ごす。そんなある日、八大ダンジョンと呼ばれるラギルダンジョンに挑む。そこで、帝国となかまに裏切りを受け─ これは、全てに絶望したこの世界で唯一の「無」職の少年がどん底からはい上がり、世界を変えるまでの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 カクヨム様、小説家になろう様にも連載させてもらっています。

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

クラスまるごと異世界転移

八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。 ソレは突然訪れた。 『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』 そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。 …そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。 どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。 …大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても… そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。

処理中です...