ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
143 / 2,518

第143話 類(ゲス)は友(ゲス)を呼ぶ

しおりを挟む
 うとうとしてると、下からガヤガヤとした声が聞こえてきた。

 どうやら準備ができて、ジャルジャンに戻る人が集まってきたようだ。わかった理由は簡単、イリアが俺を呼びに来たからだ。ミドリに使ったベッドとかをしまってもらうように伝言してもらう。

「ご主人様、起きられましたか? ジャルジャンに帰る人たちの準備が終わったようなので、こちらに来られたようです。ミドリさんが戻ってくれば私たちも準備完了です」

「って事は、シビルさんも来てるって事だよな。ちょっと聞きたいことがあるんだけど何処にいるかわかる?」

 ここに来ているが正確な場所まではわからなかったが、この周辺にはいるだろうとの事だ。倉庫の外に出て周辺を見渡すと、シビルさんの姿が見えた。

「シビルさん少しいいですか? 昨日バレずに慰謝料をいただいてきましたけど、それがこの街に残ってるジャルジャンの人たちに迷惑がかかりませんか?」

「あ~気になる所だと思うけど、特に問題ないですよ。私たちがここから出れなかったのは、冒険者ギルドに依頼しても受けてもらえず、仕方がなくここを借りて商売してただけですから。それと一部の方って言ったのは、私たちとのつながりを知られていないスパイみたいな人がいるってことです」

 ふむふむ、仕方がなく借りて商売してたにしては、この家と倉庫デカすぎねえか? それしか貸してもらえなかったとか? なんか真実に近いっぽいな。デカい倉庫のおかげで塩を結構な量貯めておけたのだろう、量にして十トン以上の塩があったんだからこれでしばらく持つかな?

「じゃぁ気にしなくていいんですね。俺たちも準備できましたので出発しましょうか。俺達の馬車を先頭にすると移動速度の問題で引き離してしまうので、先頭はそちらの馬車でお願いします。二台目と最後尾は俺たちの馬車でいきますのでそれでいいですか?」

「問題ありませんが、今日は少し日が落ちても、進ませてもらっていいですか? できる限り明日の内に着きたいと思っていますので」

 シビルの言う事に納得して、休憩や野営のタイミングは任せる事にした。キッチン馬車が最後尾に着くが、それだと何かが攻めてきた時に対応しきれないので、キッチン馬車の上にクッションをひいてコタツを設置して見張りができるようにした。

 ちなみにまわりから見ても机がある以外は分からない様になっている。何て贅沢な見張り台だろうか。

 時間もないのでさっさと出発しよう。先頭の御者に出発するように伝えると門へ向かって馬車が動き出す。今回俺のポジションは、晴れているのでキッチン馬車の上、コタツ付き見張り台だ。前の馬車はシュリにリーダーを任せている。まぁ何かあっても無線でやり取りできるので問題は何もない。

 門に向かって進んでいると、昨日に比べ街の中が騒がしい気がしなくもない。昼だから食事時なのかな? とノンビリ考えていたら、兵士の一団が門の前で何かしているのが見えた。嫌な予感しかしねえな。

「おぃ、そこの商隊止まれ!」

 先頭の馬車に乗っていたシビルが対応をしてくれた。

「なんでしょうか? 出発が遅れているのでこれ以上遅くなると困るのですが、何かあったのですか?」

「何があったかは言えん。とりあえず、馬車の荷物を確認させてもらう。荷物を見せろ」

「さすがにそれは、横暴だと思いますよ? 大事な商品をグチャグチャにされても困ります。あった場所に綺麗に荷物を積みなおしてくださるのであれば、お見せいたしますがどうなさいますか?」

「何で俺たちが荷物を直さなきゃいけない? それは自分たちでやれ、だが荷物は見せてもらうぞ!」

「しょうがないですね。荷物の開封には商隊の人間がいる前で行ってください。グチャグチャにするのもなしですよ」

 シビルにグチグチと文句を言いながら荷物の確認を始める。リーダーらしき人物がシュリたちが乗っている馬車に近づき荷物を確認するようだ。俺たちの馬車には偽装として食材を多く積み込んでいる。日持ちのする食べ物中心だ。

「お? 可愛い娘がいるじゃないか、しかも奴隷か? ちょっとお前らこっちこい。向こうで検査する」

 またか! 可愛い娘を見ると何でこうやって、卑猥なことを考える奴らが多い。

「そこの兵士、どこに連れてく気だ?」

「なんだお前? 俺たちの邪魔をして捕まりたいのか?」

「は? 何も邪魔してねえだろ! 俺の女が連れてかれそうだったから声かけただけだし」

「お前のか? じゃぁ少し貸せそうしたらここを通してやるよ」

「ふざけろ! 断る。俺の女に触れるな、離れろ!」

「あぁ? 殺されたいようだな。仕事の邪魔をしたやつを処刑する」

 剣を抜いて俺の方に向かって来た。そうするとシュリがそっと俺の前に降り立つ。

「シビルさん、これってこの街では普通ですか?」

 肯定の意が返ってきた。うがぁぁぁぁぁぁ! ヒキガエルに連なるやつら全員クズかよ! もうめんどくなってきた。

「シビルさん、荷物さっさと回収するからやっちゃっていい?」

「仕方がないですね、しっかり守ってくださいよ」

「許可でました。シュリ兵士を一か所に集めてくれ。イリア、ヒキガエルに使った精霊魔法の準備よろしく。クシュリナ・シェリル、門閉められたら破壊しろ。残りのメンバーは荷物回収急げ! 商隊の皆さんはそのまま進んでください」

 俺の指示を聞いて全員が動き出す。シュリはアンカーチェインバーストでさくっと、兵士たちを繋ぎとめる。有り余る力で強引に引っ張り一か所にまとめ上げた。兵士たちは自分たちの体がわけのわからない力で動かされて困惑していた。

 そこに俺は、殺気を込めた挑発を行うと全員が引きつった顔をしていた。こいつら実戦知らずで、逆らう人間がいなかったから、自分たちが強いと錯覚してたタイプか。イリアの精霊魔法が発動し兵士たちが、全員異臭を放つ塊になった。

 ペインバースト恐るべし。痛みを直接脳に叩き込む魔法らしい、レベル差がないと効果はあまり無いが、離れているとこういう風になるようだ。

 出発した馬車を追いかけ移動する。馬車の方にはニコとハクを付けてるから、何かあっても問題ないだろう。門は壊れてないな、無事に外にでれたようだ。目撃者? というか兵士は全員糞尿まみれになっているので、閉める人間がいないだけか?

 さっさと馬車を追っかけるか。キリエに移動を補助するバフをかけてもらい行動を開始する。マップ先生で馬車までの距離を調べると一キロメートル程あった。

 時速十五から二十キロメートルってとこだから、このペースで走れば十分もかからないだろう。全力疾走する理由もないので、ほどほどのペースで走ることにした。

 馬車に追いつくと、シビルさんが事情を聴いてきた。

 俺は簡潔に説明した。娘たちがどこかに連れていかれ、いかがわしい事をされる危険があったのでキレたと。あきれた顔をされたが、そういう理由ならしょうがないと苦笑を漏らされた。

 さすがに依頼人に危険が及ぶ行為だったので、報酬額を半分ほどに下げてもらうようにお願いした。

 ジャルジャンに帰れることが奇跡に近いので気にしないと言われたが、仕事として引き受けたのにこちらの事情で巻き込んでしまったためと押し切った。

 追撃の部隊が出てこないか心配だったのでそこら辺を聞いてみると、今スグに動ける部隊はないのでは? とのことだった。そこまで兵士の数は多くないし、街の治安維持や門番に残しておかないといけないので、追って来れるだけの余力は無いらしい。

 それに盗まれたものが馬車に収まりきるわけもなく、街の外にでた私たちを追ってくることは無いと思われると。確かにその通りだな。

 日が落ちたが、まだ道のりの半分まで来ていないので、俺たちが魔法で明かりを作り夜の道を進んでいく。馬車をひく馬たちに疲労の色が見えてきたので、キリエにお願いして回復魔法をかけてもらった。

 日が沈んで一時間ほど進んで目標の場所まで到達できた。食事の準備を始めるが、俺達以外のジャルジャンのメンバーは干し肉や堅パンで、済ませようとしていたのでさすがにそれは良くないと思い、ミドリにストックしておいた野菜スープを使ってシチューを作ってもらいふるまった。

 今回は俺たちが護衛役だから、見張りに着く順番を決めて体を休める事にした。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。  主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。  こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。  そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。  修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。    それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。  不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。  記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。     メサメサメサ   メサ      メサ メサ          メサ メサ          メサ   メサメサメサメサメサ  メ サ  メ  サ  サ  メ サ  メ  サ  サ  サ メ  サ  メ   サ  ササ  他サイトにも掲載しています。

クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります

まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。 そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。 選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。 あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。 鈴木のハーレム生活が始まる!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

クラス転移で裏切られた「無」職の俺は世界を変える

ジャック
ファンタジー
私立三界高校2年3組において司馬は孤立する。このクラスにおいて王角龍騎というリーダーシップのあるイケメンと学園2大美女と呼ばれる住野桜と清水桃花が居るクラスであった。司馬に唯一話しかけるのが桜であり、クラスはそれを疎ましく思っていた。そんなある日クラスが異世界のラクル帝国へ転生してしまう。勇者、賢者、聖女、剣聖、など強い職業がクラスで選ばれる中司馬は無であり、属性も無であった。1人弱い中帝国で過ごす。そんなある日、八大ダンジョンと呼ばれるラギルダンジョンに挑む。そこで、帝国となかまに裏切りを受け─ これは、全てに絶望したこの世界で唯一の「無」職の少年がどん底からはい上がり、世界を変えるまでの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 カクヨム様、小説家になろう様にも連載させてもらっています。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

処理中です...