ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
96 / 2,518

第96話 不穏な空気

しおりを挟む
 騎士団の人たちは、娘たちに出してもらった軽食をがっつり食べてから行動に移った。それをみて俺たちも帰る準備を始める。まずは机やイスを収納にしまい、天幕を片付けるように指示する。

 おっと、そういえば武器防具を返すの忘れてたな。

 両軍の団長のもとを訪れて、回収した装備を一ヶ所ずつにまとめて放置する。後は、兵士たちの監視のもと装備を返すように命令をする。おそらくトラブルはあるだろうが、装備が帰ってきたことを喜べ。

 返す前にきちんと、『善意で装備を返す』旨をしっかりと言い含めることも忘れない様に命令する。戦争終了後、傷を回復したのも俺たちだという事を伝えてもらう。

 両軍から離れてしばらくすると、歓声が聞こえてきた。おそらく武器防具が返してもらえることに対しての歓声だろう。実際に自分のものが帰ってくるかは運次第な所もあるが、がんばれ!

 天幕へ戻るともうすべてが撤収されて、ウォーホースに馬車がつながれていて出発するだけになっていた。みんなも準備万端で待機していた。

 今回は、年中組の馬車に便乗する形で出発する。乗る前に氷魔法を応用した冷却魔法を使って、冷やした飲み物を準備してくれていた。もちろん紅茶だったが、ほどよく甘く美味しいミルクティーだった。

 ちなみに飲み物を入れてくれていた物は、DPで召喚した魔法瓶の水筒だ。よく考えると、こういったこまごましたものを結構召喚している気がするな。

 DPは貯まっているので何の問題もないけどね。ちなみに、水筒は全員分召喚しているよ! 俺の分だけ召喚してるわけじゃないからね!

 馬車に揺られていると、クシュリナとチェルシーから今回の戦闘では消化不良といった発言が聞かれた。今回敵になったフレデリクとリーファスの兵士や冒険者で、娘たちよりレベルが高かったのはリーファスの団長だけ。それでも装備の性能の差で、一対一ならほぼ負けは無かっただろう。

 その団長は、マリアの弓に不意を突かれて即離脱していたため、戦うことができずに肩を落としていたための発言だろう。

 突然マップ先生から警報が鳴った。俺にしか聞こえなかったため声を出して驚いたのを、娘たちが不安な様子で見ていた。

「ごめんごめん、マップ先生の警報の様なものが、急に鳴ったからびっくりして声が出ちゃったよ。マップ先生って警報が鳴るんだな。今までで初めてだから、心臓が飛び出るくらい驚いたな。何で鳴ったんだろう……あ~、十キロメートル先位に敵の赤いマークが表示されてるな。

 盗賊かな? 検索結果に人間種と出てて、マップ先生が敵判定してるから敵なのは間違いないと思う。でも注目すべきは、レベルが一〇〇超えている奴が三人もいるな。他に十人ほどいて全員が五十くらいはレベルがあるね」

 俺の話を聞いたクシュリナとチェルシーが目を光らせてこちらを見ていた。どうみても戦いたいと言っている目だった。おぬしたちや、いつからそんなに好戦的になったんだい? お爺さんはびっくりだよ。

 さて、敵判定の出ているやつらの近くを通るのもなんだかな。先頭を走っている年長組の馬車に進路の変更を指示する。やつらが待機している五キロメートル程離れた道を通るようなコースを進んでいく。進路を変えてしばらくすると、やつらも俺たちの進路に合わせて移動していた。

 俺たちを狙った奴らなのか、ここの付近を監視してて俺たちがたまたま通ったからなのか? どっちにしても今のところ狙われている事には変わりないな。一キロメートル程進んだところに簡単な広場があったので、休憩という名の様子見をしてみるか。

 無線を通して全員にその旨を伝える。そうすると簡易的に天幕もはりましょう、と話の流れになりサクサクと準備が進んでいく。

 どうやってこっちの場所を確認しているか不明だが、あきらかにこちらを捕捉している動きだ。俺たちが天幕を張り休憩をしているフリをしていると、斥候らしき人物がこちらの様子をうかがいに来ている。だけど、二キロメートル程離れている所でこちらを偵察できるのだろうか?

 何かの魔導具を使って監視している? スキルだろうか? 宝珠に望遠や千里眼的なスキルは無かったはずなんだが?

 さてどうしたものかな? みんなに聞いてみるか。

「みんなちょっと聞いていいかな。今さっきも少し話したけど、この道の先にマップ先生が赤表示して敵と判定している一団がいる。どうしたらいいか迷っているんだけど、何かいい案あるかな? こっちから下手に手を出すと、犯罪者扱いされたりしたらめんどくさいし、どうしよっかなってとこだ」

 ライラが手を上げたので意見を聞いてみる。

「私とソフィー、マリーがいって暗殺してくれば、それで何も考える必要は無いかと」

 おぃおぃ、物騒な発言だな。戦闘能力が高くなってみんな好戦的になってないか?

「暗殺は無しの方向で」

「ご主人様、こちらから先手を打てないのであれば、取れる行動は少ないと思われます。野営をして向こうが諦めるのを待つとか、このまま進んで襲ってきたところを返り討ちとか、ここで手を出してくるのを待つとか位だと思います」

 確かにどうするか迷ってたけど、とれる行動ってこの位しかなかったな。ダンジョンを作って雲隠れするのは、少しリスクが高すぎるだろうから、やはりこの位だろうか。

「確かにピーチの言った通りだな。取れる行動は多くなかった。ここで野営すれば、夜とかに襲ってくるかな? 今日はここで野営して、襲ってこなかったら街に向けて出発し、手を出してくるのを待つ感じでいくか」

 全員が了解の意思表示をして、野営なら食事がなどと言い出して食事の準備が始まった。天幕も野営用にしっかりと張り直しされ、テーブルやイス、俺が使うためのベッドまで準備された。

 滞りなく食事の準備も終わり、食事まではまだ早かったのでこの先の話を決めていく。今回は夜間の襲撃を想定しているので、夜目の利くハク・ギン・クロ・リビングアーマーを見張りに回すことにしよう。

 敵の接近を感じたら起こしてもらえばいいだろう。と話していたらニコが俺の足元から上ってきて、触手を器用に使って自分の事を指していた。自分も使ってくれって事なのだろうか?

 そういえばスライムってどうやって獲物を見てるんだろう? 色々考えてもしょうがないのでニコにもお願いしたら、○を作ってプルプル震えていた。

 今夜の方針も決まり食事の時間をみんなで楽しんでからはやめに床へつくことに。

 食事を食べている間もマップ先生で相手の状況を確認していた。斥候らしき人物が本隊へ戻って俺たちとの距離を詰めてきた。この様子なら夜に襲ってきそうだな。これなら返り討ちにしても特に問題ないだろう。

 全員が就寝について四時間ほど経った頃に、ハクが俺の事を起こしに来た。クロとニコが見当たらなかったので、みんなを起こしながらマップ先生で二匹の位置を確認する。

 敵の後ろに回り込んで待機している様子だった。お前たちや、何をしておるんだい? この間にも敵が距離を詰めてきて、天幕から二〇〇メートル程のところまで来ていた。

 斥候の三人もいつの間にか天幕から出ており、ニコやクロと同じように死角から忍び寄っていた。

 行動が早いな、攻撃されてもまずダメージにならないリビングアーマーたちに、先陣を切ってもらおう。攻撃を確認したら一気に制圧、殺しは無しで全員街まで連行する予定だと無線で伝える。

 リビングアーマーの死角(気付いているけどワザと)から攻撃を仕掛けようとしている、今回の敵の中で注意が必要な三人、レベルが一〇〇を超えているやつらだ。

 攻撃を誘われて、全力で攻撃を仕掛けた。が鎧に武器がはじかれ手放していた。攻撃が確認されたので、戦争にも使っていた非殺武器での制圧が始まった。

 戦争で消化不良だったチェルシーとクシュリナは、夕食の時にみんなにお願いをして、レベル一〇〇を超えている三人を、相手にさせてもらえるように話をしていた。

 リビングアーマーと入れ替わりで現れた二人の少女を見て、三人は獲物が自分から出てきたとにやにやしていた。お前たちリビングアーマーにダメージを与えられてない事を忘れてないか?

 そんなことを考えている間に、クシュリナが上段から振り下ろし地面を強く叩きつけると、地面の土や石がはじけ飛び敵に襲い掛かる。これではダメージを与えられることはないが、チェルシーの攻撃の布石だった。

 スピードを活かし目くらましをした瞬間に行動を開始して、死角から一気に距離を詰めた。非殺武器で二人は頭部を強打され昏倒したようだ。非殺武器とはいっても下手したら死にそうな攻撃だよな。

 呆気に取られていた残りの一人に向かって、クシュリナが距離をつめて武器をふるっていた。漫画の様に吹き飛ばされ、地面に頭から刺さっていた。あいつ死んでないよな?

 おっと? この間にレベル五十台の十人の半分はニコに無力化されていた。何で半分かわかったかといえば、ニコが絡みついて縛り上げていたからだ。お前ってそんなに大きくなれるんだな、知らなかったよ。

 残りの五人も、マリー・ライラ・ソフィー・クロ・ギンに無力化されていた。みんなの活躍見逃しちゃったよ。

 戦闘の終わった、クシュリナとチェルシーは弱すぎて面白くなかった、と愚痴をこぼしていた。もうちょっとおしとやかでいてほしいな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

処理中です...