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第92話 戦争開始
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夜が明け両軍が向き合っている。俺達は蚊帳の外のような状態だった。
両軍の兵士の数はおよそ五〇〇人程、冒険者の数はフレデリクが二〇〇人程にたいして、リーファスが三〇〇人程、ガチでやりあったら完璧にフレデリク負けるな。
ここに来ている兵士で全員ではないとはいえ、人口の一パーセント以上の人間が兵士としてこの場にいるのか。中世では確か、人口に対して専属兵士は多くても二パーセントっていう話だったはず。
お金があれば多く養えるが、どっちの街も専属兵士が人口に対して、二パーセントをちょっと超えるくらいの人数がいた。それ考えると金あるんじゃね? とか思ったがこの世界と地球を比べちゃいかんよな。
戦争開始の時刻になると、両軍から騎士団長と貴族が中央に向かって歩き出した。戦争って一対一の決闘とか言う落ちじゃないよな? ちなみに俺のいる場所は両軍から五〇〇メートル以上離れている。
配置でいえば、両軍が五〇〇メートル程離れて向かい合っていて、俺達が側面に五〇〇メートルちょっと離れて優雅に紅茶を楽しんでいる。何でこんなにノンビリしてるかって?
だって戦争が始まってすぐに攻撃が来るわけじゃないから、動き出したら収納に収めればいいって事になってくつろいでるんだよ。で、みんなにマップ先生の力で誰が出てきたかわかるように説明しているのだ。
出てきた騎士団長と貴族たちの距離が一〇〇メートル程になったとき接近が止まった。どうやらレイリーに聞いていた口上戦が始まるようだ。これで戦争が回避されたケースは無いが、見え切の意味合いもあり戦争をする際には必ずやっている習慣みたいなものだという話だ。
俺からすれば聞くに堪えない内容の口上戦が、目の前(五〇〇メートル先)で行われている。何で声が聞こえるのか不思議だったが、こういう時のために作られた拡音機の様な魔導具があるとのことだ。魔導具生産してる組織って無駄に情熱的な所があるよな。
理解するのに時間がかかるような回りくどい言葉を使って、相手を貶めて自分を正当化してる貴族の口上戦を聞いて、俺はげんなりしていた。おいしい紅茶もまずくなってしまうってもんだ。
お互いの主張は要約するとこうだ。
フレデリク側
・輸入できる食糧に制限かけるなバカ!
・そのせいで住人が困ってるんだよアホ!
・今回はその腹いせに戦争だコンチキショー!
リーファス側
・おめえらのせいでBランク冒険者が四パーティいなくなっただろうがバカ!
・そのせいで街に来る行商人に被害が出てんだよアホ!
・だからお前らに売る食料はねえ!
・返り討ちにしてやるからかかってこいやー!
要約すればこんな感じの事を、何度も何度も繰り返し言い合ってるもんだから、シェリルなんかは飽きてハク、クロ、ギンの毛をブラシングし始めたじゃねえか! そういう俺もニコをつついて遊んでるけどな。だって口上戦が始まってからすでに小一時間経ってるんだぜ? 信じられるかよ!
口上戦が始まって一時間三〇分が経った頃、さすがに俺も嫌気がさしてきたので口上戦の行われている所へ近づいていく。やれ出てくるのが遅いだの、やれ下賤のでの人間はだの……あーイライラする!
「まず初めに言っておく! 戦争するのは勝手だが住民に迷惑かけんなボケ共! どうでもいいことをごちゃごちゃ言ってないでさっさとかかってこいや!」
口上戦に乱入した俺の発言内容を聞いて貴族たちが青筋を立ててる中、両軍の冒険者たちから笑いと歓声が聞こえてきた。お前らも飽きてたんだな。その気持ちわかるぞ! だがな、俺らがここにいる以上お前らを蹂躙させてもらうぜ。
突然、口上戦が終わり両軍に戻っていった貴族たちは号令をかけていた。
両軍とも俺たちに向かって進軍を始めた。騎馬兵はおらず歩兵、弓兵、魔法兵がいるようだった。俺たちは、くつろぎセットを収納してから後方へ少し下がることにした。
俺の乱入と物言いにムカついた貴族たちが、俺に向かって進軍するように言って今の状態になっているのだろう。両軍の全部がこっちに進軍してくるのは想定の範囲外だった。俺は悪くないぞ? 醜い言い争いしてるあいつらが悪いんだぞ。
後方に下がりつつ作戦を練ろうとしていると、今度は急に両軍の戦闘が始まった。なんでだ? こちらへの進軍は止まっていて、ガチでぶつかり始めている。これって下手したら死者が沢山出るんじゃね?
「年中組はフレデリク軍の後方から攻撃、年長組はリーファス軍の後方から攻撃、年少組は俺たちと一緒にまっすぐ進軍して、乱戦してるところに突っ込むぞ。各自無線のチェックをしたら進軍開始」
指示を出してみた。こんな感じでいいのか分からないが、後方からの攻撃は奇襲の基本だと思うんだ! 丸見えの平原で奇襲になるわけないんだけどね! 俺は年少組とカエデ、レイリー、従魔たちを率いて戦闘の行われている場所へ向かう。
両軍から聞こえるのは、貴族たちの拡声器の魔導具からの罵倒だった。
お前ら邪魔だ、あいつらは俺が倒す、邪魔するならお前から先に倒す。みたいなことをお互いに言い合っていてやはり醜かった。
声の聞こえる位置から考えると、俺らから見て軍の最後尾で戦闘の行われてないエリアだろう。でもそこ、もうちょっとしたら娘たちが行くけど守りとかどうなってるの?
マップ先生を見て配置を観察していると、娘たちが迂回して後方に回ってきていることに気付いた両軍の団長が、兵士に指示を出して魔法兵に牽制するための魔法を撃たせていた。
ほほ~両軍ともほぼ同じ対応にでたか、これってやっぱり軍事教練みたいなので習ったことなのかな? 魔法で牽制している間に、歩兵を動かし貴族を守る配置に移動している。
こういった戦争を見る事って初めてだからよくわからんけど、ここまでスムーズに配置を移動できるものなのだろうか? 貴族たちは現状も言い争っているから、あいつらから出た指示じゃないだろうがな。
両軍の団長が出した指示だからこんなにスムーズにいった可能性もあるな。どうにしても、そんなこと検証する意味もないから放置するけどな!
「そっちは大丈夫か? 魔法撃たれてるけど被害は?」
後方から攻撃するように頼んだ二パーティーから返事が返ってくる。問題ありません、魔法が飛んできてますが、届く魔法が一つもないので被害ゼロです。
届いても怪我をするほどの威力は無いと思われます。と余裕の様子だった。その場で一定の距離をとって待機するように伝える。
両軍が息をつくタイミングで一気に攻め入ろうと考えていた俺は、戦闘の様子を観察して指示を出すタイミングをはかっていた。
両軍の兵士の数はおよそ五〇〇人程、冒険者の数はフレデリクが二〇〇人程にたいして、リーファスが三〇〇人程、ガチでやりあったら完璧にフレデリク負けるな。
ここに来ている兵士で全員ではないとはいえ、人口の一パーセント以上の人間が兵士としてこの場にいるのか。中世では確か、人口に対して専属兵士は多くても二パーセントっていう話だったはず。
お金があれば多く養えるが、どっちの街も専属兵士が人口に対して、二パーセントをちょっと超えるくらいの人数がいた。それ考えると金あるんじゃね? とか思ったがこの世界と地球を比べちゃいかんよな。
戦争開始の時刻になると、両軍から騎士団長と貴族が中央に向かって歩き出した。戦争って一対一の決闘とか言う落ちじゃないよな? ちなみに俺のいる場所は両軍から五〇〇メートル以上離れている。
配置でいえば、両軍が五〇〇メートル程離れて向かい合っていて、俺達が側面に五〇〇メートルちょっと離れて優雅に紅茶を楽しんでいる。何でこんなにノンビリしてるかって?
だって戦争が始まってすぐに攻撃が来るわけじゃないから、動き出したら収納に収めればいいって事になってくつろいでるんだよ。で、みんなにマップ先生の力で誰が出てきたかわかるように説明しているのだ。
出てきた騎士団長と貴族たちの距離が一〇〇メートル程になったとき接近が止まった。どうやらレイリーに聞いていた口上戦が始まるようだ。これで戦争が回避されたケースは無いが、見え切の意味合いもあり戦争をする際には必ずやっている習慣みたいなものだという話だ。
俺からすれば聞くに堪えない内容の口上戦が、目の前(五〇〇メートル先)で行われている。何で声が聞こえるのか不思議だったが、こういう時のために作られた拡音機の様な魔導具があるとのことだ。魔導具生産してる組織って無駄に情熱的な所があるよな。
理解するのに時間がかかるような回りくどい言葉を使って、相手を貶めて自分を正当化してる貴族の口上戦を聞いて、俺はげんなりしていた。おいしい紅茶もまずくなってしまうってもんだ。
お互いの主張は要約するとこうだ。
フレデリク側
・輸入できる食糧に制限かけるなバカ!
・そのせいで住人が困ってるんだよアホ!
・今回はその腹いせに戦争だコンチキショー!
リーファス側
・おめえらのせいでBランク冒険者が四パーティいなくなっただろうがバカ!
・そのせいで街に来る行商人に被害が出てんだよアホ!
・だからお前らに売る食料はねえ!
・返り討ちにしてやるからかかってこいやー!
要約すればこんな感じの事を、何度も何度も繰り返し言い合ってるもんだから、シェリルなんかは飽きてハク、クロ、ギンの毛をブラシングし始めたじゃねえか! そういう俺もニコをつついて遊んでるけどな。だって口上戦が始まってからすでに小一時間経ってるんだぜ? 信じられるかよ!
口上戦が始まって一時間三〇分が経った頃、さすがに俺も嫌気がさしてきたので口上戦の行われている所へ近づいていく。やれ出てくるのが遅いだの、やれ下賤のでの人間はだの……あーイライラする!
「まず初めに言っておく! 戦争するのは勝手だが住民に迷惑かけんなボケ共! どうでもいいことをごちゃごちゃ言ってないでさっさとかかってこいや!」
口上戦に乱入した俺の発言内容を聞いて貴族たちが青筋を立ててる中、両軍の冒険者たちから笑いと歓声が聞こえてきた。お前らも飽きてたんだな。その気持ちわかるぞ! だがな、俺らがここにいる以上お前らを蹂躙させてもらうぜ。
突然、口上戦が終わり両軍に戻っていった貴族たちは号令をかけていた。
両軍とも俺たちに向かって進軍を始めた。騎馬兵はおらず歩兵、弓兵、魔法兵がいるようだった。俺たちは、くつろぎセットを収納してから後方へ少し下がることにした。
俺の乱入と物言いにムカついた貴族たちが、俺に向かって進軍するように言って今の状態になっているのだろう。両軍の全部がこっちに進軍してくるのは想定の範囲外だった。俺は悪くないぞ? 醜い言い争いしてるあいつらが悪いんだぞ。
後方に下がりつつ作戦を練ろうとしていると、今度は急に両軍の戦闘が始まった。なんでだ? こちらへの進軍は止まっていて、ガチでぶつかり始めている。これって下手したら死者が沢山出るんじゃね?
「年中組はフレデリク軍の後方から攻撃、年長組はリーファス軍の後方から攻撃、年少組は俺たちと一緒にまっすぐ進軍して、乱戦してるところに突っ込むぞ。各自無線のチェックをしたら進軍開始」
指示を出してみた。こんな感じでいいのか分からないが、後方からの攻撃は奇襲の基本だと思うんだ! 丸見えの平原で奇襲になるわけないんだけどね! 俺は年少組とカエデ、レイリー、従魔たちを率いて戦闘の行われている場所へ向かう。
両軍から聞こえるのは、貴族たちの拡声器の魔導具からの罵倒だった。
お前ら邪魔だ、あいつらは俺が倒す、邪魔するならお前から先に倒す。みたいなことをお互いに言い合っていてやはり醜かった。
声の聞こえる位置から考えると、俺らから見て軍の最後尾で戦闘の行われてないエリアだろう。でもそこ、もうちょっとしたら娘たちが行くけど守りとかどうなってるの?
マップ先生を見て配置を観察していると、娘たちが迂回して後方に回ってきていることに気付いた両軍の団長が、兵士に指示を出して魔法兵に牽制するための魔法を撃たせていた。
ほほ~両軍ともほぼ同じ対応にでたか、これってやっぱり軍事教練みたいなので習ったことなのかな? 魔法で牽制している間に、歩兵を動かし貴族を守る配置に移動している。
こういった戦争を見る事って初めてだからよくわからんけど、ここまでスムーズに配置を移動できるものなのだろうか? 貴族たちは現状も言い争っているから、あいつらから出た指示じゃないだろうがな。
両軍の団長が出した指示だからこんなにスムーズにいった可能性もあるな。どうにしても、そんなこと検証する意味もないから放置するけどな!
「そっちは大丈夫か? 魔法撃たれてるけど被害は?」
後方から攻撃するように頼んだ二パーティーから返事が返ってくる。問題ありません、魔法が飛んできてますが、届く魔法が一つもないので被害ゼロです。
届いても怪我をするほどの威力は無いと思われます。と余裕の様子だった。その場で一定の距離をとって待機するように伝える。
両軍が息をつくタイミングで一気に攻め入ろうと考えていた俺は、戦闘の様子を観察して指示を出すタイミングをはかっていた。
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