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ゲーム本編

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(これが平民だから何も分からず呼んじゃってるのか、《知ってる》のか。さて、呑気にゲーム本編を楽しむって訳には行かなさそうだ)

 ナタリーは、ぱっと見茶髪の可愛い女の子だ。目にかかりそうな前髪が儚げにも、活発そうにも見える印象を生み出している。

 ゲームでは選択肢によってしっかりとした子だったり、ぼんやりした子だったり、不思議ちゃんだったりする。

 全ては選択肢次第だし、攻略者次第なのだ。

 例えばレーヴェを攻略するなら魅力と知識のパラメータが必須だった。だから、レーヴェを相手にしたナタリーはレーヴェをも翻弄するレベルの魅力と知識を兼ね備えた美女だった。

 最初は冴えない女の子が段々と魅力と知識を兼ね備え、気がつけば目を離せない存在になっていた、というのがゲームでの印象だ。だからレーヴェの中のナタリー像といえば、もっぱらそれだった。

 だからヒロインがどんな女の子か、というのがレーヴェが動くに当たって一番不確定な問題だ。

 ランベルトを相手にしたナタリーなら、体力とカリスマが高い。脳筋の疑いがあるランベルトと共にズンズン突き進むような猪突猛進系の女の子だった。

 残念ながらナタリーの性格なんて直ぐに分かるものではない。しかし何よりも気にすべきことの為、レーヴェはゲーム通りに動きつつ動向を覗く。ナタリーはサロンメンバーに一通り挨拶を終えて、ランベルトにこのサロンのルールを教わっているところだ。婚約者のエリーザベトは食い入るように2人を睨んでいる。

「お、レーヴェ。ナタリー嬢のことが気になるのかい?」

「フェニクス……殿下」

「やだなぁ、フェニクスで良いって」

 やんわり距離を詰められる。どうやら、エリーザベト経由といえどレーヴェとの繋がりを隠す気はないらしい。

「で、どう?恋多きレーヴェはナタリーにも手を出すのかい?」

「いいや、そんなことは……」

「そうかい?ほら、彼女はランベルト殿下の紹介でやってきただろう?君、何も思うことがないのかい?」

 要は、不仲で有名なランベルトによって平民がやってきたことが不快ではないのかと聞いているのだ。

「さて。どうでしょう」

「教えてはくれないのかい?」

 服芸は苦手そうな涼しげな顔をしているわりに、聞くことはしっかり聞いてくるらしい。

「そうですね……興味がない、といえば嘘になります。機会があれば仲良くしたいものですね。同じサロンのメンバーとなったことですし」

「ふーん、そうなんだ」

「聞いた割に興味なさげな顔はやめて下さい。それより、貴方こそどうなんですか?」

「え、僕?」

 ゲームでは終盤、ヒロインのナタリーが、どこに惚れたのかと聞くとフェニクスは顔が好みだと言っていた。だからヒロインの顔はフェニクス好みのはずなのだ。

「なかなか可愛らしい顔をしているでしょう?彼女」

「そうだなぁ……うーん、嫌いじゃない、ぐらい?」

「また微妙な。……にしてもこういう会話、男の子同士って感じがしますね」

(ハンスは部下だし、こう、思春期みたいな会話するの初めてだ。まるで普通の男の子みたいで変な感じがするな)

「ははは!そうだね、せっかく学園に来たんだ。思う存分そういう会話をするのも悪くないね!」
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