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ゲーム本編

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「ねぇ、君がレーヴェ王子?」

「……フェニクス殿下」

 フェニクスは真っ赤な髪に合わぬ爽やかな青年だ。2人だけの会話を望んでいるようで、やんわり周囲の人間を遠ざけつつ歩く。

「フェニクスで良いよ。エリーザベトから君の話は聞いているんだ」

「エリーザベトから、ですか?」

 エリーザベトが一体何を話したのだろうか、とレーヴェは冷や汗を流す。エリーザベトとはマズイ会話しかした覚えがない。表向きの立場は敵対しているし、腹黒仲間なんだ。

「そうそう。だから君のことは今日初めて会った気がしないよ。本当に予想通りの白馬の王子様って外見だね!」

「それは……光栄です、と言っても良いのでしょうか」

「この世で君以上に王子様らしい王子様はいないと思うよ。エリーザベトが子供の頃だっけか?手紙で……」

「フェニクス様っ!」

「おや、エリーザベト」

 優雅に、かつ素早くやってきたエリーザベトは、これ以上自分の話をレーヴェに聞かれるのは恥ずかしいとばかりにフェニクスに声をかけた。フェニクスは察してクスクスと笑っている。

「エリーザベトは可愛いね」

「お人が悪いですわ!」

「エリーザベトほどじゃないと思うんだけど……まあ、僕にはとしてはエリーザベトの恋を応援してやろうとね」

「わたくしがレーヴェ様のことを、ですか?」

(そっか、仲のいい異性って普通は恋愛関係を勘繰るよね)

 エリーザベトとレーヴェは2人とも同じ考えに行き着いたのか、揃って意外そうな顔をした。それに何よりも驚いたのはフェニクスだ。

「なんというか、レーヴェ様は同性の親友のような感じで……あまりその、失礼ですが、仲良くなってからは異性として認識していなかったと言いますか」

「ああ、良かった。私も同じだよ」

「本当!?つまらないなぁ。エリーザベトの恋を応援してやろうと意気込んでやってきたっていうのに」

「なんてことをおっしゃるのです!他人の手など借りずとも恋などわたくしにかかれば……」

「うーん、ランベルト殿下は聞く限り直情的だから逆効果な気がするなぁ」

「ふん!わたくしは婚約者なのです!どんなことがあろうともランベルト様と結ばれることは可能です!」

「だと良いねぇ」

フェニクスは呑気に笑い、策略に燃えるエリーザベトを流す。

「なるほど、手慣れていらっしゃる」

「はは、友人の君ほどじゃないけどね」

「私は同調してしまいますからね……ますます話が盛り上がることが普通で」

「なるほど。いやぁ、やっぱり驚くね。エリーザベトと話が合うなんて」

「混ざります?」

「僕はどっか抜けてるって言われるからなぁ。基本口走っても良いこと以外聞かないようにしてるんだ」

「じゃあ先程のエリーザベトの話も口走って下さるので?」

「もちろん!そうだ、今夜は飲み明かそうじゃないか!こっそり良い酒を持ってきた甲斐があるよ!」

「おや……隣国もお酒は18歳からでは」

「ははははは……ほら、こういうことだよ。分かったろ?」

「そこの御二方!勝手に仲良くなってるんじゃありませんことよ!」

ビシッとエリーザベトが扇を翻し、その様子にフェニクスとレーヴェは声を揃えて笑った。

「そうだ、もちろんレーヴェも”サロン”に入るんだろ?」

「ええ、まあ」
 
「じゃあこれからはエリーザベトと揃って同じサロンのメンバーという訳だね。よろしく頼むよ」

「こちらこそよろしくお願いします」
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