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六
本番
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マラソン大会の当日、小学三年の本番前。ウォーミングアップをしながら藤波は緊張していた。マラソン自体は嫌いではなかったが、この本番前の緊張感だけは好きではなかった。
藤波は、後ろの星崎をチラッと見たとき、身軽にぴょんぴょん飛び跳ねていた。身体能力が明らかに以前とは違う。星崎は本当に軽々と体を宙に浮かせて気持ち良さそうに何度もジャンプしていた。
この日のために努力してきたんだ、と藤波は思った。一年間、星崎といて彼が、純粋に何かを掴もうとしてきたことが藤波にはとてもよくわかった。藤波のなかにある何かを星崎は見ていたのだ。それは言葉で言い表すことは難しいけど、ごつごつとした藤波の力強い心の襞だった。それを星崎は見ていてくれたのだ。藤波はそのことを思い感動をすら覚えた。そして今日は心のある部分で繋がっていた藤波と星崎の本番の日だった。
誰にも負けたくはない。昨年と同じように藤波はスタート前にそれを思った。昨年以上に藤波は強い気持ちを抱いた。今年は星崎というライバルがいる。
パンっというスターターピストルの音と共に藤波は一番前へ飛び出した。学年一速い小川という男よりも初め藤波は前に出たが、四百メートルくらいのところで藤波は後ろに置かれた。
その後中盤辺りまで全体の三位を保っていた藤浪だが、終盤に差し掛かったところでペースが落ちた。ペース配分がいつもより先に出すぎて終盤に順位を落とした。
終盤に十位前後のところに付けていた藤波を追い抜く者たち。その一人に星崎がいた。やはりいた、藤波は思った。今、星崎は藤波のライバルだった。藤波はそれをみて血の味がするくらい無理にまたペースを上げた。途中、星崎を追い越したのだけは確かだった。
藤波は、後ろの星崎をチラッと見たとき、身軽にぴょんぴょん飛び跳ねていた。身体能力が明らかに以前とは違う。星崎は本当に軽々と体を宙に浮かせて気持ち良さそうに何度もジャンプしていた。
この日のために努力してきたんだ、と藤波は思った。一年間、星崎といて彼が、純粋に何かを掴もうとしてきたことが藤波にはとてもよくわかった。藤波のなかにある何かを星崎は見ていたのだ。それは言葉で言い表すことは難しいけど、ごつごつとした藤波の力強い心の襞だった。それを星崎は見ていてくれたのだ。藤波はそのことを思い感動をすら覚えた。そして今日は心のある部分で繋がっていた藤波と星崎の本番の日だった。
誰にも負けたくはない。昨年と同じように藤波はスタート前にそれを思った。昨年以上に藤波は強い気持ちを抱いた。今年は星崎というライバルがいる。
パンっというスターターピストルの音と共に藤波は一番前へ飛び出した。学年一速い小川という男よりも初め藤波は前に出たが、四百メートルくらいのところで藤波は後ろに置かれた。
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