ラストスパート

ひゅん

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一から順に物事に取り組む姿勢

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  小学校三年のこの時期、今迄如何に自分が何も考えずに生活をしてきたかを藤波は、痛感させられた。
 藤波はそういったところを見て、星崎に習って真似をした。星崎は丁寧に一つ一つ解決を試みていく性格の持ち主だった。あたかも星崎はデッサンの線を注意深く何度もなぞっているような、またはドミノを一から綺麗に、そして慎重に並べていっているような、そんな順序よく物事に取り組んでいく、そのようなイメージで藤浪は捉えていた。物事を順序立てて一から丁寧に取り組む、それでいて最後までやり遂げる根気が星崎にはあった。
 物事を最後まできちんとやり遂げること、藤浪はそれを真似しようと試みたがどうしても真似することができなかった。
 藤波も星崎のように一から丁寧に積み上げて物事を完成させようとした。このやり方である程度のことは上手くいった。しかしそれを最後のところまで完璧にやりきることが藤浪にはどうしてもできなかった。例えば算数の難しい応用問題を解くと、星崎は基礎の基礎から始めて最後正解まで辿り着くことができたが、藤浪は経過でよく失敗した。最後の答えまで到達できない原因は色々あったが、難しい問題を解くまでに集中力を持続させることが藤浪には難しかった。
 この一年間、藤浪はあらゆることを暗中模索した。自分にもできることとできないことがあることを学んだ。複雑なことをする場合、星崎のやり方で最後まで到達することは藤浪には困難だった。ではどうやって答えに辿り着くことができるのか?
 何度も失敗を繰り返しながら、今まで大らかでいて楽観的になすがままに生きてきたが、物事に挑戦すること、複雑な問題に主体的に取り組んで解決していくことの大切さを藤浪はこの小学三年の一年間を通して星崎から学んでいった。
 なかなか全てのことがうまくいかなかったが、無理なことは無理だと今までは諦めていた。一見自分にはできないことを乗り越える術がどこかにあるのか、星崎と出会ってから、藤浪はそのことをよく考えた。
 それでもマラソンだけは星崎に負ける気がしなかった。
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