現実世界恋愛短編集

n

文字の大きさ
上 下
3 / 4

3、密室

しおりを挟む
 男子生徒と女子生徒が、学校の、鍵の開いている小さな部屋に入り、鍵を閉めた。

 向かい合い、微笑み合う。

「今、僕たちは『密室』で二人きりだね」男子生徒が言う。

「『密室』と言えば……何を思い浮かべる?」と聞くと、女子生徒は元気良く答えた。

「やっぱり『密室殺人』かな!」

「密室殺人か……」男子生徒は考え込む顔をし、
「密室殺人ってパターンが決まっているよね?」

「そうかな」

「まず『機械仕掛けで密室にする』。
次に『本当は密室じゃなかった』。
死体の第1発見者の1人になって部屋に乗り込んだとき、こっそり死体のポケットに鍵を返しておく。と言う感じのやつ」

 女子生徒は「見たことある」と頷いた。

「同じく『密室じゃなかった』系でも……
『隠し通路があった』系の話もあるね」

「ズルいやつね」

「ズルいかどうかは『伏線』の張り方によるかな?」
 男子生徒は半分反論した。

「『隠し通路』に似ているものでは『隠し部屋』もあるね。
『隠し部屋に隠れていて、事件発覚後に部屋から抜け出す』」

「うん」

「あとは。あれかな?
有名なトリック。
『密室にしたのは……』」

「ねえ」女子生徒が遮った。
「何で、私たち、密室殺人の話をしているんだろ?」

 男子生徒はしばらく思い出すような顔をしてから、

「ほら。この部屋に入って、鍵を掛けただろ。
で、僕が『この部屋は密室だね』と言って。
『密室と言えば何を思い浮かべる?』と聞いたら。
君が『密室殺人』と答えたから、こんな話になったんだ」

「そうだったね」女子生徒は答えた後、男子生徒を上目遣いで見た。

「あなたは……」 
「ん?」

「『密室』と言えば。
何を思い浮かべるの?」
「ん……」

 すると男子生徒は女子生徒をジッと見つめつつ、近付き……
 女子生徒は、その動きに合わせるように後ずさりしていく。

 女子生徒を壁際まで追い詰めると、男子生徒は女子生徒の顔の横の壁に右手を付いた――『壁ドン』。

 そして

「『密室』と言えば……」

 微笑みながら女子生徒の耳元に口を近付け、囁いた。

 女子生徒は顔を赤らめ、

「私も……」
「ん?」

「最初から、そう答えれば良かった……」


 ※※※

 それから、この『密室』で何が行われたかは、本人達しか知らない……


 

〈終〉





――――――――――


(後書き)
Kindleで『密室』で検索した結果出てきた本が、『密室殺人』か『エロ』だったのを見たのがキッカケで書いたものです。

お読み下さりありがとうございました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】かわいいペットの躾け方。

春宮ともみ
恋愛
ドS ‪✕ ‬ドM・主従関係カップルの夜事情。 彼氏兼ご主人様の命令を破った彼女がお仕置きに玩具で弄ばれ、ご褒美を貰うまでのお話。  *** ※タグを必ずご確認ください ※作者が読みたいだけの性癖を詰め込んだ書きなぐり短編です ※表紙はpixabay様よりお借りしました

女の子がいろいろされる話

ききょきょん
恋愛
女の子がいじめらたり、いじられたり色々される話です。 私の気分であげるので、性癖とか方向性はぐちゃぐちゃです、よろしくお願いします。 思いついたら載せてくゆるいやつです。。

男性向け(女声)シチュエーションボイス台本

しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。 関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください ご自由にお使いください。 イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

調教専門学校の奴隷…

ノノ
恋愛
調教師を育てるこの学校で、教材の奴隷として売られ、調教師訓練生徒に調教されていくお話

r18短編集

ノノ
恋愛
R18系の短編集 過激なのもあるので読む際はご注意ください

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

処理中です...