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第二十五話 迷って迷子

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「なんかまた、新しい人物が用語が出てきたわね……。どんどん混乱してきたわ」
「まあ完全に歴史のお勉強の方向になってきてますからねぇ。ともかく要点をまとめると原初魔法っていうのは天変地異が起こせるくらい凄い魔法って事、魔女アピロはおそらく原初魔法が使えると言われている事、その原初魔法で当時の敵対勢力を一掃した事、そういう事っす。まあ一人で90名以上の魔法使いを相手にして返り討ちにしてるわけっすからね、敵対したくはないっすよねぇ」
「まあそれは確かに怖いんだろうけど、思ってたより怖い理由が地味というか当時の状況が想像しにくいわね……」
「そう言われるとそうっすね。まあほかにも魔法協会の定例会議に出席しないから講義にに行った魔女が帰ってこなくて、数日後街の入口に埋められてたとか、住んでる屋敷の近くに森に番犬替わりに人食い狼を複数狩ってるだとか、弟子入りを志願して訪問した学生が言葉も発することのできない恐怖を経験して退学したとか、そういうやつもあるっすね」
「そっちの方が全然想像しやすくて怖いじゃないの!?その話だけ聞くと明らかにかかわっちゃいけない人じゃないの!!!」
「だからそう言ってるじゃないっすか!まあでもアルバートさんはどうやらお知り合いらしいですし、そっちの話を聞いてる感じだとそんな悪い人っていうイメージは沸いてこないっすよねぇ……」
「結局アルバートさんに明日改めて聞かないとだめかぁ」
「まあ今考えてもどうしようもないっすよ。それよりそろそろいい時間っすから、夕飯食べに行きませんか?お昼の酒場もいいっすけどほかにもおすすめのお店あるんすよ!」
「キャト、食べるの好きね……」
「好きっす!エーナさんは嫌いっすか?」
「嫌いじゃないけど、さっきそれなりに食べたからまだお腹の具合が」
「数切れの肉とスープだけでお腹いっぱいなんすか!?
ダメっすよもっと食べとかないと、私達成長期なんすから今のうちにモリモリ食べて体に栄養回さないと。スタイル抜群の美女になれないっすよ!」
「うーんどっちかっていう横にしか増えない気がするんだけど……」

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外に出た私は現在一人でキャトの家の付近を散策している。
キャトはせっかくだからと美味しい食事の出るお店を提案してきたのだが、何分お腹が空いておらず腹ごなしもかねて一人街を見て回っている。キャトの方は先ほどいった酒場に行って夕食を食べながら店主と情報交換をするとかなんとかで先に食事を取っている。

『暫く酒場にいるっすからお腹すいたら来てくださいっす。あ、これ酒場までの地図っす。もしそれでもお腹が空かないようなら先に家もどっててもいいっすよ、エーナさん戻ってことなかったら軽くパンと干し肉でも買って帰るっすからそれ食べるといいっす』

知り合ってまだ一日も経ってないが彼女は欲望にいろいろ素直すぎるところもあるが、なんだかんだ人への気遣いができる子なんだとおもう。
魔法協会内でも通りすがる人達が彼女に対して笑いながら挨拶をしていたし、困っている人がいれば簡単な事ではれば途中で手伝ったり後でやっておくと言って頼み事を引き受けていた。

(街にきても夜は一人のままかなって思ってたけど、キャトのおかげで楽しく過ごせてるきがする)

気づけば顔に笑みがこぼれていた。初めて訪れた未知の土地最初が不安でいっぱいだったが、どうやら無用の心配だったようだ。
そういえば、アメリーやウルはこの街のどこにいるのだろうか。
アメリーにも、特にウルにも一度は会っておきたい。
あの事件結局私は寝たままでその後ウルとはあまり会話ができていない。
ケンカ別れというわけではないが、少々気まずい別れになってしまっているのは間違いないため一度しっかりと話しをしておきたいのだ。
そうやっていろいろ考えて歩いていた時、そんな時だ、ふとあたりを見回すと私はある事に気づいた。

「ここ……どこ?」

家の周辺をまわっていたつもりが、いつの間にか街灯の明かりなく薄暗い道であった。城下は基本、街中の人通りの多い場所には魔法を用いて作られたという自動点火の明かりが備え付けられ夜でも街の中を歩くことができる……というのはキャトの弁であるが、考え毎をしているうちに完全に人気のない謎の路地に入っていた。

「っていうか左右見ても明かりがみえないし、どこなのよここ……」

立ち止まっていても仕方がないためとりあえず歩を進める。だが未だに大通り出るような気配はなくもはや月明りが出ている間でなければ歩けないほどの暗がりが広がっていた。どれくらい歩いただろうか、流石にこれ以上進んで余計に遠くへ行くのはまずいと思い踵と返そうとした時だ。
ふと、ぼんやりと次の曲がり角に明かりが見えた。
明かりが見えるということは人通りがある場所かもしれない。
私は小走りで歩を進めてその角を曲がる。
そしてそこにあったのは。

「えっと、これ、本屋さん?」

室内に明かりのともった路地の行き止まりにある小さな本屋であった。
本屋というのが分かったのは立ててある看板に本のマーク、その下に本のタイトルのような名前が書かれている。
だが明かりがついているという事は室内には人がいるという事である。

(とりあえず、キャトの家……というりも私が知ってそうな道を教えてもらうしかなさそうね……)

そう考えながら私はその建物の扉を開いた。

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「うわぁ、何これ、すごい……」

扉を開いて建物に入った私の第一声はそれだった。
そこにあったのは本、本棚に敷き詰められた本の数々。
暗がりで建物の大きさがよく見えなかったが、左右そして奥行きもかなりある広い建物であり、整然と並んだこの数に本には一瞬気おされてしまう。

「あら、お客さんかしら?」

声の方を振り返ると、そこには一人の女性……いや同じ年ぐらいの少女の姿があった。腰まで伸びたロングヘア、これまた端正整った本に出てくるような儚げな印象を受ける綺麗な顔立ち、そして薔薇のような装飾が象ってある紅い、紅い色のドレス。
こんな場所にいるのが間違いにも思えるその少女、にっこりと私に向かってほほ笑むのだった。

「こんばんわ、何かお探しかしら?」
「いえ、あのすいません、実は道に迷ってしまって、それでちょっと道を尋ねたくてお邪魔したんですけど……」
「あらそうなんですか。ここら辺で道に迷って事はもしかして旅行者か旅人さんかしら?」
「どっちかというと旅行者の方になると思います……。それにしても、凄い量の本ですね」
「凄いでしょう。これ私の趣味で集めたものなの、好きな本いっぱいの本棚に。私の夢だったんです」
「趣味で集めた……って事はここの本は売り物じゃなくて全部あなたの?」
「ええ、全部私の所有物です。ちなみに売り物ではないですが本の貸し出し流行っているのよ。そとに看板があったでしょ?新作の本や珍しい本が入荷したらああやって宣伝してるの。そうしたら見たかった本があるってお客さんが入ってくるから」
「本の貸し出し屋さんって事ですか。そんなお店もあるんですね」
「ええ。面白い話っていうのはいろんな人に共有したくなる性分でね。お茶や菓子を手に取りながら読んだ本についての感想を聞いたりするのも一つの楽しみなのよ」

胸に手を当てながら何かを思い返すように彼女はそう語る。

「あ、ごめんなさい。道が聞きたかったのよね。ちょっとまってて、この街の地図持ってくるから」
「ごめんなさい、お客でもないのに」
「いいのよ、困ったときはお互い様だもの。
ところでよろしければ名前を伺ってもよろしいかしから?」
「いいですよ、私の名前はエーナ、エーナ・ラヴァトーラっていいます」
「エーナ・ラヴァトーラ……いい名前ね。そうだ、私の方も名乗っておかなくちゃね。私の名前はビスカ、ビスカ・アラニーヤ。よろしくねエーナさん」

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