記録少女狂想曲

食べられたウニの怨念(ウニおん)

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XLIX 皆の「力」②

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「……。」
 京香は真っ暗な部屋な空間に一人立っていた。真っ暗で近くに壁があるのか、はるか地平線まで広がっているのかもわからない。ゆっくりと後ろを振り向くと、そこには一人の少女が立っていた。
「…恋都。」
 恋都と呼ばれた少女は目と口を閉じて微笑んでいた。ゆっくりと目を開けると、周りの空間と同じように真っ暗闇だった。
「お姉ちゃん。」
 恋都が口を開くと、その中もまた暗闇だった。恋都はゆっくりと京香へ向かって歩き出す。
「お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。」
「…ああ。私は恋都のお姉ちゃんだよ。」
 恋都が京香の目の前に立つ。すると、京香の体に黒いつるのようなものが巻きつき、京香の体を縛り付ける。
「お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。」
「だが、お前は私の罪悪感だ。あの子じゃない。」
 そう呟いた瞬間、恋都の体を剣が貫いた。貫いた箇所から赤い炎が現れ、恋都を包み込む。
「良い加減お前のせいで調子を取り戻せないのも煩わしいのでな。」
「アアアアアアアアオネェチャンオネェチャンオネェチャンオネェチャンオネェチャンンンンンン!!」
 その黒く変色したは、京香を包み込むように口を大きく開けて襲いかかってきた。しかし京香は暗闇に包まれる寸前、指を大きく鳴らした。その瞬間、轟音を響かせ落雷が黒い何かを引き裂いた。
「………!!」
罪悪感おまえを捨てるわけじゃない。私はこれから先、お前と向き合ってそのさきを見る。」
 黒い何かは全身が粉のようになって崩れ落ち、そこには何も残らなかった。再び訪れた静寂の中で、京香は目を閉じて深く呼吸する。
「私の可愛い妹を、二度とあんな汚らわしい姿にしてくれるなよ、。」

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「……チャン。氏家チャン。」
 純生に肩をゆすられ、京香は目を覚ました。周りを見渡すと、先ほどまで会議をしていた部屋の角で椅子に座り込んで眠ってようだった。
「休憩開始してから寝てたみたいだけど…大丈夫?部屋で休んできたって良いんだよ?」
 純生の顔を見て、京香は小さく微笑む。
「気にするな、とても長い夢を見ていただけさ。…さ、続きを始めようか。」

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ルナ・グレース・ブラウン
魔法名[弾速強化]
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「わたくしの魔法は、投擲物の速度を最大二倍まで上げることのできる魔法です。」
「碧射様のように自由に軌道を操ると言ったことは不可能ですが、代わりに二倍速となった投擲武器の威力と射程距離は大きく上がります。」
「『速さは重さ』…どこかのおじさまが残した言葉だそうです。皆様は、二倍速のナイフに貫かれたことがありますでしょうか?」
「え、そんな歴史はない?おかしいですね…。」

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ドロテア・フォン・ガイスト
魔法名[千言万語せんげんばんご
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「ワタシの魔法は[千言万語]デス!四字熟語をモチいて、関連する現象を発生させマース!」
「ホッカイドーに来る際ヘリコプターの中で使用したのは『色即是空シキソクゼクウ』、自分を対象に全ての攻撃を回避出来マース!」
「ただ、発動時間は全部1分程度。ワタシ以外を対象にする場合は生き物限定、発音はシッカリで意味を理解していなければ発動しないなど、ナカナカ制約は多いのデース。」
「なのでワタシは残りの期間たくさん勉強して、もっと知識を広げる特訓を行いマス!みなさん、ヨロピコデース!!」
「また凛泉さんか幽子に変な言葉教わってません?」
「言いがかりだ!(二人)」

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星野ほしの 暁子ぎょうこ
魔法名[結晶化]
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「ううううう……ほほほ、ホントに前に立って説明じゃなきゃダメですかぁ…?」
「わ、私の魔法は[結晶化]でして、クリスタルを生成して操る魔法…です…。」
「飛ばしたり、浮かせて盾にしたり身に纏ったり…一応、いろんな技名をつけて判別したり……。」
「わわわ、技名を?今?むむ無理です無理ですごめんなさい無理です許してくださいぃぃ…。」
「もう許してくださいぃ…。」

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胡桃田くるみだ 一歩いちほ
魔法名[一歩の今日の気分マイ・ムード・ナウ
正式名称[One day Rouletteワンデイ・ルーレット
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「次はいちほの番ですね!いちほの魔法は[一歩の今日の気分]と言います!研究員さんたちは[ワンデイ・ルーレット]って呼んでましたけど…可愛くないので勝手に変えました。」
「1日に一回、1から20まであるランダムな数字がいちほの手の上に現れて、それぞれの数字に対応したアイテムが出てきます!」
「でも一日一回なので、一度決まった数字は変更できないんですよね~…今日も一回使ってしまったので、少なくとも今日のいちほは[15番]の身体強化薬品入りの注射器しか出せませ~ん!」
「いちほからの説明は以上となります!何か質問ありますかー?…え?なんで一人称が「いちほ」になっているのか…?えっと、配信やってる時はこういうキャラだからつい…えへっ。」

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朱雀井すざくい 博也ひろや
魔法名[香風功夫フィストマスター
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「ぼくの魔法は[香風功夫]と言って、基本は身体強化の魔法。だけれど、そこにさらに目で見た武道のを使えるようになるんだ!」
「でもまぁ、自然と行えるようになるにはぼく自身の鍛錬も欠かせないけどね!ん?空ちゃん、葡萄は関係ないよ!」
「最近ちょっと嫌なこともあってお酒に逃げてたこともあったけど、鍛錬は欠かしてないし…むしろお酒を活用した拳法も使えるようになったんだ!酔拳って言ってね…あ、京香さん大丈夫!ちゃんとお酒に頼らず戦うから!」
「今回、遭遇した魔神を一匹取り逃がしたのはぼくの落ち度でもあるからね、作戦中はもちろん、今後は汚名返上のために全力を尽くすよ!」
「ぼくの落ち度じゃない?一歩ちゃん、ありがとう。君のおかげであの時はとても助かったからね、共に頑張ろう!もちろんみんなもね!」

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坂崎さかざき 麟太郎りんたろう
魔法名[スケイル
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「オレの魔法はこの通り、皮膚に鱗を形成する魔法です。この鱗は鎧のように硬く、弾丸も通しません。」
「このように…っ!!体から引き抜いたり剥がすこともできますし、鱗同士は繋げることもできるので、武器を作ることもできます。取る時すごい痛いですけど。」
「弾丸のように射出することも可能なので、オレ一人でも遠距離、近距離の両立ができます。戦場では皆さんを守るため、最前線でオレを使ってください!どんなに辛い攻撃でも、オレが受け止めて皆さんを守ります!」
「え?…お前からしたら単なる役得だろって?いやいや、皆さんを守りたい気持ちは本当ですよ!ソレも勿論含まれてはいますけども。」

──────────────────
「これで、次は京香ちゃんか?」
 凛泉の言葉を聞いた京香は、小さく首を横に振る。
「いや、私や純生の説明は最後に済ませよう。その前に財閥から来た者たちを済ませたいのだが…構わないか?ユリ。」
 京香の言葉を聞き、後ろの座席に座っていた女性が立ち上がる。空は会ったことのない人物だった。
「うん、オッケー京香さん!ウチも空ちゃんとは初対面だから自己紹介しておこうと思ってたし!二人の間の気まずそーな雰囲気がなくなってウチは安心したよー!」
「…あぁ、迷惑をかけたな。すまなかった。」
「だからカタイって。もっと肩の力抜きなよ!」
 ユリが笑顔でそう肩を叩くと、京香は小さく微笑み頷いた。
「えっと、ユリさん、初めまして!」
 空は立ち上がり、ユリと呼ばれた女性に頭を下げる。
「んー?あははっ、そんなにかしこまらなくていいよ!これから一緒に戦う仲間なんだから!私は十文字じゅうもんじユリ。初めまして、空ちゃん!」
 空とユリは握手を交わす。ユリの明るい笑顔に空も釣られて笑顔を返した。
「新人…空と面識のない者も、改めて魔法の説明をしてもらいたい。構わないか?」
 一部、空と面識のないメンバーはそれぞれ頷いて返事を返す。
「じゃ、まずはウチからだね!」

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十文字じゅうもんじ ユリ
魔法名[影法師]
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「というわけでユリだよ!何人かは久しぶりだね、空ちゃんとは初めまして!」
「ウチの魔法は[影法師]。ウチ自身の影を立体化させて…ウチの分身として扱う魔法だよ!ウチの動きをそっくり真似させたり、自律行動させることも出来るよ!」
「基本的にこの影は元が影だから、物理攻撃は効かないんだけど…魔法みたいに特別な力は通ってしまったりするの。その時のダメージはウチに直接来るんだ。」
「ウチの魔法の説明は終わり!ホントは好きなものとかの話もしたいけど~…また今度ね!」

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百目とどめ ひかり
魔法名[鳥の友人バード・フレンド
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「ななななんでワタシまでこんな……ああやめてくださいしんじんさんそんな純粋な瞳でワタシを見ないで…っ。」
「ワ、ワタシの魔法は[鳥の友人]と言いまして……はい、ただ鳥と話せるだけの…ハイ、そういう魔法です、ハイ…友好的な性格な子となら皆さんとの連絡網に協力してもらったり…ハイそうです、後方支援です……へへへ…。」
「こ、この杖ですか?これは封魔武具フウマノホコでして…あ、そっちはあの…まま、また今度説明します…複雑なので…あと前に立つのもう辛い…。」

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鮫島さめじま 星歌せいか
魔法名[飽くなき食欲]
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「アタシは星歌!ヨロシクー!!ん?星って名前が連続してんのは偶然だ!!!狙ってないよ!!」
「アタシの魔法は[飽くなき食欲]!ようするにめっちゃ腹減るしなんでも食えるようになるって魔法ね!」
「なんでもってのは本当になんでもで、コンクリとか噛み砕けるし毒がある食べ物食べてもお腹壊さないしー、結構便利なんだよね!」
「てかこの魔法もらってからずっとお腹空いてんだよね、今も!しかも普通の飯食べても体が受け付けなくなっちゃってさぁ。栄養面とかどうなるんだろうと思ってたけど肉体的に問題なし。その辺も魔法だからこそなのかなー?(おもむろに横に置いたバッグから大きな骨を取り出す)」
「なので普段はこうやってを食って空腹を誤魔化してる!」
 その瞬間室内に人の口から響いてはならない、骨が砕ける轟音が響いた。

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ディナ
魔法名[電磁石]
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「うふふ、君が噂の新人さん?私はディナ、よろしくね。」
「私の魔法は[電磁石]。一定量の鉄を含む物体を操作したりできるし、電磁石を操作する根本のエネルギーは電気だから放電で戦うこともできるのよ。」
「これが愛用してる武器の鎌なのだけれど…ほら、こうして鉄でできた武器は操れちゃうのよ、面白いでしょう?」

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「これが現状財閥から来ている、空と面識のないメンバーか。一応、五日後までに間に合いそうなメンバーは日本支部から支援のため向かうと言われている。その者たちについてはその時に、だな。」
「何?私の魔法の説明?忘れていたな…わ、わかった、できる限り簡潔に行う。だからそんな寂しそうな顔をしないでくれ空…。」

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氏家うじいえ 京香けいか
魔法名[落雷]
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「私の魔法は知っての通り、私が注視した場所や対象一つに、指を鳴らすと言った合図を行うことで落雷を落とす魔法だ。基本的に動いているモノでも、指定対象には必中と思ってもらっていい。」
「しかし、頭上から発生する落雷であるため軌道上に何か物や天井などを挟まれると防がれてしまう…その点も含めて、私の魔法はあくまで「普通の落雷を狙った物に落とせる」程度のものだ。…む?別に程度と謙遜するほどじゃない…?そうか…。」

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松原まつばら 純生よしき
魔法名[送風]
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「最後は僕だね~ん。僕の魔法は[送風]!手を突き出した方向に風を起こす!!」
「…逆に言っちゃえば、それだけなんだよねぇ。ほど、万能な風は起こせないんだよね。」
「んまっ、できるだけみんなはちゃーんと貢献するから、ヨロシク~にゃ~っ。」

──────────────────
 空は純生の言葉に首を傾げる。
「あのシスター…?」
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