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穴蔵の底へ

ついに たからを みつけたぞ!(なお当初の目的

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左から、青マイナ黒マイナ赤マイナ白マイナ、とすると。
青と白が薄い気炎を上げるたび、敵の守りが強まりかつこちらの脱力が酷くなっていく感じが強い。
そして黒マイナとサシでの勝負に持ち込まれる。動きは目で追える。敵の攻撃は正直さほどの鋭さも無く、防ぎ、弾くのは造作もない。
だがこちらの攻撃も当たらない。
剣先は敵に届く前に魔術的な防壁に阻まれ、宙空に留まる。
それを弾かれ、こちらは態勢を立て直さざるを得なくなる。
そして青と白がまた、薄く輝く気炎を上げる。
「キミはさぁ!退きなよ一旦!」
茶長低無の声がした。
ぐいっ、と首根っこ引っ掴まれ、後方へ投げられる。
茶長低無は自分とわたし、二人が部屋の外へ出ると勢いよく扉を閉めた。
驚いた。まさか助けられるとは…
この世界に来て初めての出来事ではなかろうか。
「わかった?守コス編成の強さ?」
茶長低無がさも自分の事でも語るような態度なのがイラついたが、今ばかりは助けられたのには間違いない。
「なんなのアレ…詐欺じゃん、バグなんじゃないの?攻撃通る気しないんですけど」
「アレひとりひとりずつでも相当に運用コストがかかる奴らしいしね。生前の王様はアレみたいなのの攻撃特化型を従えてたっていうんだから恐ろしいわね」
確かに、そんな連中が攻めて来られたら恐ろし過ぎる。この、攻撃を頑として通さない、を攻撃する側に置き換えるなどと…わたしでも瞬殺されてそうな気がする。
「…結構な下調べのようだけど、で、肝心のあいつらを倒す方法は?」
「戦闘開始直後に倒す順番だろうな、って検討は付けてたわ。中へ入ってすぐ、キミの前に立ちはだかった黒いの。アレをなんとかパスして他の補助スキル発動系の三人を先に倒して、時間経過と共に連中が強化されきる前に倒す」
なるほど…
あの上がる気炎はスキル発動か。
だとすればこちらの攻撃ダウンと向こうの守備アップの奴がいるな…
四人で役割割り振ってるとするとあと一人何かのスキルか何かを持ってる奴が居るのかも知れんが…
「という訳で、狙いは黒をパスして…赤」
茶長低無も得物…手斧を両手に構える。
「わたしのハンドアクスなら多少間合いが開いてても敵を狙える。キミは黒いのを防いでてくれればいいわ」
「え?あんたも戦うの?」
「言ったでしょうが、決着つけるのは別だって。そのためにもここでキミにちょろい退場とかされても困るのよ」
「…そら律儀な事で…ペイルガンもそれでいいの?」
「…私は手伝わないけど、その子の邪魔をする気もないわ」
それはそれは。協力的な事だ!
「良いだろう。そういう事なら黒いのは引き受けてやる。だが赤?の役割はなんだと踏んだの?」
「…最悪の場合、他三人がやられたら復活させる、とかの特殊なスキルかな、って」
「最悪過ぎる…まあ、確かに黒を動かして時間を稼いで倒せない状況を作り上げれば、この守コス編成どもの勝利なんだろうし、なんでもアリか」
「一度扉を閉めきれば、一旦、戦局はリセットされる…そういうルールも、この玄室内には働いているのを確認している。時間経過などではなく、【扉を開け閉めする】のがキーになっているようね」
ペイルガンの補足にわたしは、
「…ひょっとして、相当やり直した?」
茶長低無もペイルガンも目を逸らし、何も語ろうとはしなかった。
「まあいいわ、行くか!」
茶長低無がわたしの声に頷き、わたしは
扉を大きく開け放つ。
ゆったりと、四人の人影が現れる。
黒マイナは片手それぞれに剣を構え、わたしと茶長低無目掛けて駆け寄る。
青い気炎、白い気炎が上がり、脱力感が来る…
赤は…やはり赤には明確に動きと呼べるほどの動きは感じられない。
黒はわたしを相手にしようとしながらも茶長低無の手斧にも警戒の目線を飛ばす。
その黒マイナの視線をわたしは遮り剣を繰る。
「余所見してんじゃないよ?このわたしの前でさあ!」
黒を圧し、下がらせる様に剣撃を振るう。
「ナイス!それっ…!」
茶長低無のトマホゥゥゥク(*多分ブーメランはしない)が、赤マイナを直撃する。
状況が少しは変わってくれれば良かったのだが、茶長低無の読みでも、赤を先に倒すのは最後に状況をひっくり返されるのを避けるためでしかない。赤を倒し、残りも自力で倒す…
しかしその間にも黒マイナの守備プレッシャーが…あれ?さっきよりは体が軽い?
黒に守備力で圧倒されるまでにはまだ少しは粘れそうだ。
その間にも茶長低無が繰り出し続ける魔術の手斧(キングオブソーズとかがカード形態から武器形態に変わるのと同じような事なのかもだが、こいつの手斧って補給不要・弾数無限の投擲武器って事では…そんなシューティングゲームの自機みたいな!)は白、次いで青を撃破する。
黒は相変わらずの鉄壁ぶりをそれこそ堅持していたが、結果、飛んできた手斧に額を割られた。
「地味な奴」
わたしは剣を納めながら素直な感想を茶長低無に伝えた。
「キミねぇ!こういう時はまずは礼だろ!」
「まー助かったわ。さんきゅ」
礼を言ったら言ったで茶長低無は恥ずかしそうに顔を赤くしていた。
そんな事より。
遂に、わたし達とお宝の間の障害は全て無くなった…
かに見えた。
「…本当に来ちゃったんですね…ひとりで、ではないようですけど」
奥から声がした。中々に広大な室内で灯りも乏しいため、あの四マイナ以外に誰かが居る事に気付かなかったようだ。
そして声の主がゆっくりと、闇の中からこちらへ向かって歩み寄ってきた。
なんとなくは見当が付いていたが、
やはりマイナだった。
片手に桶と柄杓を携えたマイナが、そこにいた。
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