天使の神様

青伽

文字の大きさ
上 下
1 / 1

神様、神様

しおりを挟む
神様、昨日家族が増えました。
 神様、今年の木の実は豊作で、とてもおいしいです。
 神様、夫が昨日から帰って来ません。え? 狼に食べられて……どうか、もう一度会わせてください!
 神様、娘がサルに連れて行かれました。そうです二本足のサルの子供に。ああ、もう生きてはいないのですね。どうかあのサルを殺してください!
 神は死んだ命を生き返らせることや、命を奪う事はできなかった。それを聞き、悲しみに暮れる羽の生えた天使たち。
 神様、どうして鷹は私たちと同じ天使なのに、私たちを襲うのですか。
 神は後から存在した。殺さなければ生きてはいけない天使が、何故存在しているのか、神も知らなかった。
 神様、最愛の妻がサルに殺されました。二匹で寄り添っていたところを矢で射られ、怪我をした妻はサルに捕まり脚をちぎられて死んだのです。
 神はいつも通り、何もできないことを伝えようとした。しかし天使の言葉には続きがあった。
 神様、どうか僕をあのサルの子供に産まれさせてください! 同じ目に遭わせてやります。
 神は今まで何もできなかった自分を恥じた。そして願いを叶えてやった。
 神様、サルに生まれ変わらせてください。子供たちは全員サルの飼う狼に食べられました。私も生まれ変わって狼を食べてやります。
 神様、どうか俺をサルに変えてください。あの猫は食べるためではなく、楽しむためにダチをなぶり殺しました。それを見た飼い主は笑って喜んで……サルになり、全ての猫をなぶり殺してやるのです。そして笑っていたサルも許しはしません。
 神は全ての願いを叶えた。
 神は思い出していた。サルの神はある日突然に、狼の神は「他種族であろうと従え」と狼へ指示を残し、死んでしまったらしい。
 それを教えてくれた猫の神も「自分のために生きろ」と猫へ指示を残し死んでしまった。
 ある日、神の下へ親を殺した鷲がいると報告が来た。神は驚いて理由を問いただすと鷲は言った。
 私は元々ネズミです。仲の良かった妹が鷲に食べられたので、私は神様に祈り復讐を果たしたのです。
 いつの間にかネズミに神ができ、自分と同じ願いを叶え始めたようだ。
 神は今までの行いを後悔したが、間違っているとも思えなかった。
 ある日神は
 サルのように争わず、狼のように他に媚びず、猫のように自分を大事にせず、仲間同士で生きるよう天使に指示を出し、この世から消えた。
 その日から、一部の天使たちは今も世界を飛びまわり神様を探しているという
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...