恋は秘めて

青伽

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これからどうなっていくかわからないけれど

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 身体を揺すられる。
 目を覚ますと半泣きの春真がいた。
「おじーちゃん!」
 突然抱きつかれる。
「し、死んだかと思ったあ……っ」
「ごめんね、ちょっと疲れていて」
 あのまま仏間で眠っていたようだ。
 目に痛みを感じた。
 近くに鏡はないが、赤く充血しているのだろう。
「それって悠斗の所為?」
 悠斗、眠る前の事を思い出す。
「……いや、わしの所為だ」
 どこまで夢だろうか。
 現実だったのか悠斗の告白は。
 自分があんな事をしたのは。
「悠斗に何かされたら言ってね、怒っておくから」
「……悠斗君と何かあったのかい?」
 先程からやたら悠斗の話をする。
 自分の所為で喧嘩でもしたのかもしれない。
「おじいちゃん、悠斗と付き合うんだよね?」
「…………え?」
 見られていたのか、贈悟はそう思った。
「違うの? 悠斗はそう言ってたから」
 目眩がし、床に手をついた。
「……それお母さんには」
「言ってない、悠斗が誰にも言うなって」
 良かった。
 娘にはばれていない。
 覚悟を決めたはずだったが、いざとなると心臓に悪い。
「大丈夫? おじいちゃん」
 よくない、今悠斗の中で自分との関係がどうなっているのか。
 気になり始める。
「悠斗君に会いに行かないと」
「……本当に好きなんだね」
 寂しそうに春真が呟く。
「そういう意味じゃないよ、春真も好きだよ」
 勘違いしている春真を抱きしめる。
「……悠斗に怒られそう」
「そうかな」
「多分」
 この子は、きっと悠斗の事を全部知っている。
「悠斗君は、なんて言ってた?」
「……告白したらキスしてくれたって」
 悠斗君、そこまで言わなくてよかったんじゃないかな……
「おじいちゃんの事、大事にするんだってさ」
 今さら背德感と後悔が贈悟に押し寄せて来た。


 その後、特に問題は起こらなかった。
 流石に高校は行くよう、悠斗を説得した。
 悠斗は中学を卒業するまで普段通り接してきた。
 悠斗の両親には生活費と学校の費用を持つと伝えると拒否されたが。
「給料だと思って」
 と伝え、押し切った。
 娘も「父さんのお金だからと」承諾も得た。
 無事卒業も迎え順調だ、何もかも。
 しかし、それにしても。
「贈悟さん」
 二人で家へと帰る。
 悠斗は家へ入ると贈悟の手を握った。
「キスしてもいい?」
 返事を聞かず、悠斗に唇を塞がれる。
 こんな関係は、ご両親には言えない。
「んッ」
 悠斗は段々とキスがうまくなっている。
 初めに激しくしすぎたのが、いけなかったのかもしれない。
 苦しさに唇を引き離す。
 悠斗は満足そうに贈悟の胸に顔をうずめ甘えてくる。
 こうして見ると、まだまだ子供だ。
「贈悟さん」
 ふとした拍子に罪悪感に苛まれるが、悠斗に悟られないよう目を閉じた。
「俺早く大人になるからね」
「え」
 勘が鋭いのか、それとも贈悟がわかりやすいのか。
「俺今幸せだよ、贈悟さんは?」
「わしは」
 心の底から幸せとは言い難い。
 十代の子供をかどわかしている気分だ。
 ただ悠斗は幸せそうなので、それだけで――
「今、君の事を愛しているよ」
 口にした後で、初めて愛していると言葉にした事に気付く。
 先程より「幸せ」になった悠斗は今にも溶けていきそうだ。

 いつまで傍にいてくれるだろう。
 いつまで愛してくれるだろう。
 不安はあるがそれでもしばらくの間は、
「ねぇ、悠斗君」
 悠斗はうるんだ瞳で反応を見せた。
「わしは君の物になってもいいかい?」
 いらなくなったら、捨ててかまわない。
 そんな意味を込めての問いだったが、
別の意味と捉えた悠斗は完全に溶けてしまい膝から落ちていった。
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