恋は秘めて

青伽

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この気持ちを否定したい

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 贈悟に疲れが見え始めた頃、日が暮れて悠斗は三軒隣に帰って行った。
 春真は自宅まで十分ほどかかるので、薄暗い道を二人並んで歩いていく。
「おじいちゃん楽しそうだったね」
 年甲斐もなく、白熱したような気がする。
「そう見えるかい?」
「うん。また遊ぼうね」
 春真は小さな体から見上げて、笑顔を見せた。
 なんだか申し訳なさを感じる。
「おじいちゃん?」
「……また遊んでくれるかい? 悠斗君と、三人で」
 何か言いたそうだったが、春真は「うん」と頷いた。

 一人、誰もいない家に帰る。
 玄関を開けても「ただいま」と呼びかける家族はいない。
 居間からは防犯の為に点けっぱなしのテレビが、音を立てていた。
 テレビを消そうと居間へと行くと、事件の報道をしていた。
『子供を狙った性犯罪は急増しており……』
 リモコンへ伸ばした手が、止まる。
 もしかすると自分は、この犯罪者と同じなんだろうか。
 無差別なところや、連れ去っている辺りは違っているが。
 違う所を並べ上げて、結論に至る。
 ただ、それでも……同じなんだろう。
『続いてのニュースです。赤ちゃんパンダの公開が今日から始まりました』
 映し出された双子のパンダの映像に、気持ちが和らいだ。
 動き回る一匹に、もう一匹が追って行く。
 ……ああ、春真と悠斗に少し似ている。
 そう気付いた瞬間、とっさにテレビの電源を落とした。
 おかしい。君の事が、頭から離れない。
 ……名前で呼ばれたぐらいで、ただそれくらいの事で。
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