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名前呼び
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一ヶ月くらい前の話だ。
「ねえ、春真のおじいちゃん」
いつも通り悠斗は春真と遊びに来たのだが、春真は塾で先に帰ってしまい悠斗一人になっていた。
贈悟は、帰りたがらない悠斗の話し相手になっていた。
「名まえ『柊 贈悟』っていうんだよね」
何故そんな事を聞くのか、不思議に感じたが隠す事もない。
「そうだよ」
「春真と同じだね」
名字の事だろう。
「まぁ娘が婿を入れ……名字を変えなかったからね」
贈悟としてはどちらでもよかったのだが、一人娘は気にしていたようだ。
「じゃ、ぞうごさんって呼んでいい?」
「え?」
「ダメ?」
この年で名前を呼ぶものも中々いない。嫌でもなかったが……
そこまで考えて、理由を悟る。
「いいよ『春真のおじいちゃん』では長かっただろう?」
きょとんとした顔を、悠斗はしている。
「違うよ。そういうんじゃなくて、名前で呼びたいだけ」
いつもの元気はどこへやら。悠斗は小さな頬を染めながら、そう答えた。
「そうかそうか、ありがとう。悠斗君」
子供特有のあどけなさに、思わず笑みがこぼれる。
悠斗の頭を撫でていると、耳元に寄ってきた。
「……ぞうごさん」
そう呼ばれたあの時、違和感を得た。
慣れぬ所為かと思っていたが、その日から彼への想いがほんの少しずつ変わっていった。
呼ばれた瞬間は、流す事も出来る。
だがふとした拍子に、胸を締め付けられる。
そんな時は、決まって妻の仏壇に線香を上げた。
そうすると何故か落ち着くのだ。
「ねえ、春真のおじいちゃん」
いつも通り悠斗は春真と遊びに来たのだが、春真は塾で先に帰ってしまい悠斗一人になっていた。
贈悟は、帰りたがらない悠斗の話し相手になっていた。
「名まえ『柊 贈悟』っていうんだよね」
何故そんな事を聞くのか、不思議に感じたが隠す事もない。
「そうだよ」
「春真と同じだね」
名字の事だろう。
「まぁ娘が婿を入れ……名字を変えなかったからね」
贈悟としてはどちらでもよかったのだが、一人娘は気にしていたようだ。
「じゃ、ぞうごさんって呼んでいい?」
「え?」
「ダメ?」
この年で名前を呼ぶものも中々いない。嫌でもなかったが……
そこまで考えて、理由を悟る。
「いいよ『春真のおじいちゃん』では長かっただろう?」
きょとんとした顔を、悠斗はしている。
「違うよ。そういうんじゃなくて、名前で呼びたいだけ」
いつもの元気はどこへやら。悠斗は小さな頬を染めながら、そう答えた。
「そうかそうか、ありがとう。悠斗君」
子供特有のあどけなさに、思わず笑みがこぼれる。
悠斗の頭を撫でていると、耳元に寄ってきた。
「……ぞうごさん」
そう呼ばれたあの時、違和感を得た。
慣れぬ所為かと思っていたが、その日から彼への想いがほんの少しずつ変わっていった。
呼ばれた瞬間は、流す事も出来る。
だがふとした拍子に、胸を締め付けられる。
そんな時は、決まって妻の仏壇に線香を上げた。
そうすると何故か落ち着くのだ。
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