2 / 3
美女終了
しおりを挟む
嘆き悲しむ娘婿から、娘の遺体を無理に引き取った。
娘の部屋へ台を置き、その台の上へ冷たくなった娘を寝かせた。
老人はじっと冷たくなった娘を見下ろす。
娘婿は『何故死んだのかわからない』と言っていた。しかし義父である老人には、娘が何を考えて亡くなったか、容易に想像できた。
せめて、一声かけていれば、死なずに済んだであろうか。
何故会いに行かなかったのか、と聞かれたならば、時間がなかったから、と答えるだろう。
だが、無理をすれば会うこともできた。
合わせる顔などなかったが。
「お前は、実の娘ではないから、儂が非情な頼みをしたと考えておるようだが、それは断じて違う。儂はーー」
言葉に詰まり、涙を流す。
「お前が、実の娘であっても、同じ目に遭わせたのだっ」
なんの言い訳にもならない。
要するに娘が想像するよりも、人でなしだと、言っているだけだ。
もしも、もしもお前が望むのであれば
「来世では、儂はお前の腹から生まれよう。さすれば間違いなく血を分けた親子であろう」
老人は携えた短刀で腕を斬り、誓いを立てる。
娘の腹にかけた血が、身体を伝い寝台を濡らす。まるで、拒否されているように感じる。
「いやか、ふむ? いや、か……」
その場に崩れるように膝を付く。涙は止めどなく溢れる。
「わしはッおまえが、よい。が」
返事をする者は既になく、時間だけが過ぎて行った。
娘の部屋へ台を置き、その台の上へ冷たくなった娘を寝かせた。
老人はじっと冷たくなった娘を見下ろす。
娘婿は『何故死んだのかわからない』と言っていた。しかし義父である老人には、娘が何を考えて亡くなったか、容易に想像できた。
せめて、一声かけていれば、死なずに済んだであろうか。
何故会いに行かなかったのか、と聞かれたならば、時間がなかったから、と答えるだろう。
だが、無理をすれば会うこともできた。
合わせる顔などなかったが。
「お前は、実の娘ではないから、儂が非情な頼みをしたと考えておるようだが、それは断じて違う。儂はーー」
言葉に詰まり、涙を流す。
「お前が、実の娘であっても、同じ目に遭わせたのだっ」
なんの言い訳にもならない。
要するに娘が想像するよりも、人でなしだと、言っているだけだ。
もしも、もしもお前が望むのであれば
「来世では、儂はお前の腹から生まれよう。さすれば間違いなく血を分けた親子であろう」
老人は携えた短刀で腕を斬り、誓いを立てる。
娘の腹にかけた血が、身体を伝い寝台を濡らす。まるで、拒否されているように感じる。
「いやか、ふむ? いや、か……」
その場に崩れるように膝を付く。涙は止めどなく溢れる。
「わしはッおまえが、よい。が」
返事をする者は既になく、時間だけが過ぎて行った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
江戸の夕映え
大麦 ふみ
歴史・時代
江戸時代にはたくさんの随筆が書かれました。
「のどやかな気分が漲っていて、読んでいると、己れもその時代に生きているような気持ちになる」(森 銑三)
そういったものを選んで、小説としてお届けしたく思います。
同じ江戸時代を生きていても、その暮らしぶり、境遇、ライフコース、そして考え方には、たいへんな幅、違いがあったことでしょう。
しかし、夕焼けがみなにひとしく差し込んでくるような、そんな目線であの時代の人々を描ければと存じます。
梅すだれ
木花薫
歴史・時代
江戸時代の女の子、お千代の一生の物語。恋に仕事に頑張るお千代は悲しいことも多いけど充実した女の人生を生き抜きます。が、現在お千代の物語から逸れて、九州の隠れキリシタンの話になっています。島原の乱の前後、農民たちがどのように生きていたのか、仏教やキリスト教の世界観も組み込んで書いています。
登場人物の繋がりで主人公がバトンタッチして物語が次々と移っていきます隠れキリシタンの次は戦国時代の姉妹のストーリーとなっていきます。
時代背景は戦国時代から江戸時代初期の歴史とリンクさせてあります。長編時代小説。長々と続きます。

三国志〜終焉の序曲〜
岡上 佑
歴史・時代
三国という時代の終焉。孫呉の首都、建業での三日間の攻防を細緻に描く。
咸寧六年(280年)の三月十四日。曹魏を乗っ取り、蜀漢を降した西晋は、最後に孫呉を併呑するべく、複数方面からの同時侵攻を進めていた。華々しい三国時代を飾った孫呉の首都建業は、三方から迫る晋軍に包囲されつつあった。命脈も遂に旦夕に迫り、その繁栄も終止符が打たれんとしているに見えたが。。。
三国志「街亭の戦い」
久保カズヤ
歴史・時代
後世にまでその名が轟く英傑「諸葛亮」
その英雄に見込まれ、後継者と選ばれていた男の名前を「馬謖(ばしょく)」といった。
彼が命を懸けて挑んだ戦が「街亭の戦い」と呼ばれる。
泣いて馬謖を斬る。
孔明の涙には、どのような意味が込められていたのだろうか。
空蝉
横山美香
歴史・時代
薩摩藩島津家の分家の娘として生まれながら、将軍家御台所となった天璋院篤姫。孝明天皇の妹という高貴な生まれから、第十四代将軍・徳川家定の妻となった和宮親子内親王。
二人の女性と二組の夫婦の恋と人生の物語です。
旅路ー元特攻隊員の願いと希望ー
ぽんた
歴史・時代
舞台は1940年代の日本。
軍人になる為に、学校に入学した
主人公の田中昴。
厳しい訓練、激しい戦闘、苦しい戦時中の暮らしの中で、色んな人々と出会い、別れ、彼は成長します。
そんな彼の人生を、年表を辿るように物語りにしました。
※この作品は、残酷な描写があります。
※直接的な表現は避けていますが、性的な表現があります。
※「小説家になろう」「ノベルデイズ」でも連載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる