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Sortie-02:騎士たちは西欧より来たりて
第八章:This moment, we own it./08
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それから程なくして水族館を出ると、アリサと翔一の二人は一旦ミレーヌたちと別れ、駐車場に停めたチャージャーの方に戻っていった。
というのも、嵩張って邪魔になる荷物を車のトランクに放り込む為だ。その嵩張る荷物というのは……まあ、お察しの通り先程ミュージアムショップで翔一がアリサにプレゼントした、あのぬいぐるみ三匹が雑に放り込まれている大きな袋なのだが。
とにかく、それを車に放り込む為にアリサたちは一旦ミレーヌらと別れ、チャージャーを停めた駐車場に戻っていったというワケだ。
そして、取り残された宗悟にミレーヌといえば――――水族館のすぐ傍、海が望める横長のベンチに腰掛け、眼前に広がる港湾地帯の景色を二人で眺めていた。
僅かに陽炎が揺れる水平線、遠くに見えるのは巨大なコンテナ船の影。他に見えるものといえば、対岸にある埠頭の……派手な紅白に塗り分けられた大きなガントリー・クレーンのシルエットと、そして小さくさざ波の立つ水面ぐらいなものか。
賑やかな喧噪を背後に、聞こえるのは海鳥たちの鳴き声。海岸線を望む、目の前に広がる景色は……それこそ蓬莱島や、対岸から島を望めるあの海岸のように綺麗な景色というワケではなかったが。しかし、それでも肌を柔に撫でる潮風の感触は心地良い。
「アリサちゃんたち、楽しそうだよな」
そんな景色をベンチに座ったままでぼうっと眺めながら、宗悟が呟いた。
ミレーヌはそれにああ、と頷いて肯定し、続けて「お似合いの二人だよ」と……済ました笑顔で言葉を返す。
「……んで、ミレーヌはどうなんだ?」
「どうって、何がだい?」
「楽しいのかって話さ。ミレーヌは今、俺たちとこうしていて……ちゃんと、楽しめてるのか?」
宗悟の問いかけに、ミレーヌは少し沈黙した後で「……楽しいよ、楽しすぎるぐらいに」と俯き気味の顔で答えて。その後で「でも」と言葉を続ける。
「同時に……こうも思うんだ。僕らがこんなに楽しんでしまっていて、本当に良いのかなって。今も……今もきっと、この蒼穹の上では……誰かが、命懸けで戦っているかもしれないというのに」
そんな、何処か自罰的な彼女の呟きに対し、宗悟は「良いんじゃねーの?」と普段通りの軽い調子で返す。その後で、彼はこうも続けて言った。
「今みたいに平和な時間、他でもない俺たち自身が身体張って守ってきた時間なんだ。だから……俺もミレーヌも、その時間を楽しんだって誰も咎めたりしないぜ。守ってきた分、俺たちだって楽しんで良いと……そう思うんだ、少なくとも俺は」
「宗悟……」
「それに、もしも文句を言う奴が居たとしてもだ。そんな奴、俺が黙らせてやるよ。文句なんか言わせねえ」
「ふっ……なんだか君らしい答えだね、そういうの」
「ああ、かもな」
宗悟の言葉に、ミレーヌがフッと薄く微笑み。それに宗悟もニヤリとした笑みを返す。
――――守ってきた分、楽しんだっていい。
そうだ、当たり前のことなのだ。誰でもない自分たちが、あの真空の宇宙で戦い抜いて……そうして、今まで守ってきた平和な時間なのだから。だったら、守ってきた自分たちが、少しぐらい……この平穏を楽しんだって構わないはずだ。バチなんて、当たるワケがない。
簡単なことだ。こんなこと、宗悟に言われるまでもなく、自分で気付くべきことなのに。
そう思うと、ミレーヌは自らに対し少しの不甲斐なさを感じるとともに――――気付かせてくれた彼に対して、深い感謝の気持ちと。そして……彼女が宗悟に対して抱いていた親愛の情が、自然と更に深いものになっていた。
「おっと……戻ってきたみたいだぜ」
二人でそんな言葉と、そして薄い笑みを交わし合っていると。そうしていれば、遠くにアリサと翔一の姿を見つけた宗悟が呟いた。どうやら荷物を置いて、駐車場から戻ってきたらしい。思っていたよりも少しだけ早いお帰りだった。
遠くから歩み寄ってくる二人の姿を横目に見て、呟いた宗悟はよっこいしょとベンチから立ち上がると。そのままくるりと後ろに振り向き、ベンチに腰掛けていたミレーヌの方にサッと手を差し伸べる。
「ってことで、まだまだお楽しみはこれからってワケよ。だから行こうぜ、ミレーヌ?」
「ふっ……どうやら、そうみたいだね。だったらエスコートをお願いしよう、頼めるかな?」
「頼まれなくても、だぜ」
差し伸べられた彼の手。そっと彼の手を取ったミレーヌに、宗悟がニッと笑いかける。柔らかく穏やかで、それでいて頼もしい……どうしようもなく彼らしい、そんな笑顔を。
というのも、嵩張って邪魔になる荷物を車のトランクに放り込む為だ。その嵩張る荷物というのは……まあ、お察しの通り先程ミュージアムショップで翔一がアリサにプレゼントした、あのぬいぐるみ三匹が雑に放り込まれている大きな袋なのだが。
とにかく、それを車に放り込む為にアリサたちは一旦ミレーヌらと別れ、チャージャーを停めた駐車場に戻っていったというワケだ。
そして、取り残された宗悟にミレーヌといえば――――水族館のすぐ傍、海が望める横長のベンチに腰掛け、眼前に広がる港湾地帯の景色を二人で眺めていた。
僅かに陽炎が揺れる水平線、遠くに見えるのは巨大なコンテナ船の影。他に見えるものといえば、対岸にある埠頭の……派手な紅白に塗り分けられた大きなガントリー・クレーンのシルエットと、そして小さくさざ波の立つ水面ぐらいなものか。
賑やかな喧噪を背後に、聞こえるのは海鳥たちの鳴き声。海岸線を望む、目の前に広がる景色は……それこそ蓬莱島や、対岸から島を望めるあの海岸のように綺麗な景色というワケではなかったが。しかし、それでも肌を柔に撫でる潮風の感触は心地良い。
「アリサちゃんたち、楽しそうだよな」
そんな景色をベンチに座ったままでぼうっと眺めながら、宗悟が呟いた。
ミレーヌはそれにああ、と頷いて肯定し、続けて「お似合いの二人だよ」と……済ました笑顔で言葉を返す。
「……んで、ミレーヌはどうなんだ?」
「どうって、何がだい?」
「楽しいのかって話さ。ミレーヌは今、俺たちとこうしていて……ちゃんと、楽しめてるのか?」
宗悟の問いかけに、ミレーヌは少し沈黙した後で「……楽しいよ、楽しすぎるぐらいに」と俯き気味の顔で答えて。その後で「でも」と言葉を続ける。
「同時に……こうも思うんだ。僕らがこんなに楽しんでしまっていて、本当に良いのかなって。今も……今もきっと、この蒼穹の上では……誰かが、命懸けで戦っているかもしれないというのに」
そんな、何処か自罰的な彼女の呟きに対し、宗悟は「良いんじゃねーの?」と普段通りの軽い調子で返す。その後で、彼はこうも続けて言った。
「今みたいに平和な時間、他でもない俺たち自身が身体張って守ってきた時間なんだ。だから……俺もミレーヌも、その時間を楽しんだって誰も咎めたりしないぜ。守ってきた分、俺たちだって楽しんで良いと……そう思うんだ、少なくとも俺は」
「宗悟……」
「それに、もしも文句を言う奴が居たとしてもだ。そんな奴、俺が黙らせてやるよ。文句なんか言わせねえ」
「ふっ……なんだか君らしい答えだね、そういうの」
「ああ、かもな」
宗悟の言葉に、ミレーヌがフッと薄く微笑み。それに宗悟もニヤリとした笑みを返す。
――――守ってきた分、楽しんだっていい。
そうだ、当たり前のことなのだ。誰でもない自分たちが、あの真空の宇宙で戦い抜いて……そうして、今まで守ってきた平和な時間なのだから。だったら、守ってきた自分たちが、少しぐらい……この平穏を楽しんだって構わないはずだ。バチなんて、当たるワケがない。
簡単なことだ。こんなこと、宗悟に言われるまでもなく、自分で気付くべきことなのに。
そう思うと、ミレーヌは自らに対し少しの不甲斐なさを感じるとともに――――気付かせてくれた彼に対して、深い感謝の気持ちと。そして……彼女が宗悟に対して抱いていた親愛の情が、自然と更に深いものになっていた。
「おっと……戻ってきたみたいだぜ」
二人でそんな言葉と、そして薄い笑みを交わし合っていると。そうしていれば、遠くにアリサと翔一の姿を見つけた宗悟が呟いた。どうやら荷物を置いて、駐車場から戻ってきたらしい。思っていたよりも少しだけ早いお帰りだった。
遠くから歩み寄ってくる二人の姿を横目に見て、呟いた宗悟はよっこいしょとベンチから立ち上がると。そのままくるりと後ろに振り向き、ベンチに腰掛けていたミレーヌの方にサッと手を差し伸べる。
「ってことで、まだまだお楽しみはこれからってワケよ。だから行こうぜ、ミレーヌ?」
「ふっ……どうやら、そうみたいだね。だったらエスコートをお願いしよう、頼めるかな?」
「頼まれなくても、だぜ」
差し伸べられた彼の手。そっと彼の手を取ったミレーヌに、宗悟がニッと笑いかける。柔らかく穏やかで、それでいて頼もしい……どうしようもなく彼らしい、そんな笑顔を。
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