115 / 142
Sortie-02:騎士たちは西欧より来たりて
第八章:This moment, we own it./03
しおりを挟む
そうして、翔一の家を出てからきっかり一時間と十五分……とはいかず、少し混んでいたから一時間半ぐらい掛かってしまったが。とにかく、アリサのチャージャーは目的地である賑やかな港湾地帯に辿り着いていた。
バリバリとド派手なOHVサウンドを惜しげもなく響かせながら、適当な駐車場の方へとチャージャーの鼻先を向ける。アリサが選んだのは港湾地帯の片隅にある、屋根も何も無い露天の有料駐車場だ。敷地はそれなりに広くて、見たところ駐車場自体もそこまで混んでいないから、停める場所には困らなさそうだ。
そんな屋外駐車場のゲートへとチャージャーを突っ込ませると、下がったままのバーの前で車を停めたアリサが駐車券を……取ることは出来ず。右側の助手席に座っていた翔一が窓を開けて、彼女の代わりに手を伸ばして駐車券を取ってやった。
この辺りは、右ハンドル前提の日本国内で左ハンドルの外車を乗り回す不便さの典型的な例だ。もし翔一みたいな同乗者が居なければ、アリサは一度チャージャーを降りて駐車券を取りに行くか、さもなくば無理矢理に右側へ身を乗り出すしかなかっただろう。
とにかく、代わりに翔一が駐車券を取ってやれば、車の鼻先で行く手を遮っていたバーが跳ね上がり。アリサは翔一から受け取った駐車券をジャケットの胸ポケットへ雑に突っ込みつつ、チャージャーを駐車場の中に進めていく。
駐車場の中をドデカいボディで徘徊すること数分、アリサは割と端の方にある適当な場所を見繕い、バック・ギアに入れるとチャージャーをその駐車スペースに尻から突っ込んでやる。
そうして突っ込んだ駐車スペース、一台分の幅が割に広く取ってあるはずなのだが……それでも、チャージャーは殆どスペース枠内ギリギリにどうにかこうにか収まっているといった風だった。最近の日本車は衝突安全性などの兼ね合いでアメ車並みにデカくなっているから、それに対応する幅の取り方だといえ……流石に七〇年代のアメリカン・マッスルではキッツキツもいいところだ。まあ、だからこそアリサは駐車場でも外れの方の、特にガラガラな一帯を狙って停めたのだが。
エンジンを切り、キーを引き抜いてドアを開け。停車したチャージャーから四人が続々と降りていく。直上に近づき始めた頭上の太陽からジリジリとした日差しが照り付ける中、宗悟とミレーヌの後部座席組はさあ行こうと張り切っている風だったが……チャージャーの横でうーんと軽く伸びをするアリサの方は、流石に少しばかり疲れ気味な様子でもあった。
「何だか悪いな、君にばかり」
そんな彼女の様子をふと横目に見て、チャージャーの鼻先に寄りかかる翔一が言う。
「気にする必要なんか無いわよ。久々の遠出ってのもあるし、アタシも何だかんだ楽しいしね」
すると、軽く肩を揺らすアリサが彼にそう返した。そんな彼女の言葉を耳にして、翔一が「そうか」と薄い笑みを浮かべる。
「おーい、お二人さんよー! 早くしねえと置いてっちまうぞー?」
アリサと二人でそんな風な言葉を交わし合っている内に、宗悟とミレーヌはいつの間にか先に遠くまで歩いて行ってしまっていて。振り返った宗悟が声を張り上げて呼び立ててくるから、翔一とアリサは一度お互いに顔を見合った後「行こうか」「そうね、此処でグズグズしていてもしょうがないし」と言って、微かな笑みを交わし合うと。傍らの黒いチャージャーを離れ、先に行った彼らの後を追い二人で歩き始めた。
バリバリとド派手なOHVサウンドを惜しげもなく響かせながら、適当な駐車場の方へとチャージャーの鼻先を向ける。アリサが選んだのは港湾地帯の片隅にある、屋根も何も無い露天の有料駐車場だ。敷地はそれなりに広くて、見たところ駐車場自体もそこまで混んでいないから、停める場所には困らなさそうだ。
そんな屋外駐車場のゲートへとチャージャーを突っ込ませると、下がったままのバーの前で車を停めたアリサが駐車券を……取ることは出来ず。右側の助手席に座っていた翔一が窓を開けて、彼女の代わりに手を伸ばして駐車券を取ってやった。
この辺りは、右ハンドル前提の日本国内で左ハンドルの外車を乗り回す不便さの典型的な例だ。もし翔一みたいな同乗者が居なければ、アリサは一度チャージャーを降りて駐車券を取りに行くか、さもなくば無理矢理に右側へ身を乗り出すしかなかっただろう。
とにかく、代わりに翔一が駐車券を取ってやれば、車の鼻先で行く手を遮っていたバーが跳ね上がり。アリサは翔一から受け取った駐車券をジャケットの胸ポケットへ雑に突っ込みつつ、チャージャーを駐車場の中に進めていく。
駐車場の中をドデカいボディで徘徊すること数分、アリサは割と端の方にある適当な場所を見繕い、バック・ギアに入れるとチャージャーをその駐車スペースに尻から突っ込んでやる。
そうして突っ込んだ駐車スペース、一台分の幅が割に広く取ってあるはずなのだが……それでも、チャージャーは殆どスペース枠内ギリギリにどうにかこうにか収まっているといった風だった。最近の日本車は衝突安全性などの兼ね合いでアメ車並みにデカくなっているから、それに対応する幅の取り方だといえ……流石に七〇年代のアメリカン・マッスルではキッツキツもいいところだ。まあ、だからこそアリサは駐車場でも外れの方の、特にガラガラな一帯を狙って停めたのだが。
エンジンを切り、キーを引き抜いてドアを開け。停車したチャージャーから四人が続々と降りていく。直上に近づき始めた頭上の太陽からジリジリとした日差しが照り付ける中、宗悟とミレーヌの後部座席組はさあ行こうと張り切っている風だったが……チャージャーの横でうーんと軽く伸びをするアリサの方は、流石に少しばかり疲れ気味な様子でもあった。
「何だか悪いな、君にばかり」
そんな彼女の様子をふと横目に見て、チャージャーの鼻先に寄りかかる翔一が言う。
「気にする必要なんか無いわよ。久々の遠出ってのもあるし、アタシも何だかんだ楽しいしね」
すると、軽く肩を揺らすアリサが彼にそう返した。そんな彼女の言葉を耳にして、翔一が「そうか」と薄い笑みを浮かべる。
「おーい、お二人さんよー! 早くしねえと置いてっちまうぞー?」
アリサと二人でそんな風な言葉を交わし合っている内に、宗悟とミレーヌはいつの間にか先に遠くまで歩いて行ってしまっていて。振り返った宗悟が声を張り上げて呼び立ててくるから、翔一とアリサは一度お互いに顔を見合った後「行こうか」「そうね、此処でグズグズしていてもしょうがないし」と言って、微かな笑みを交わし合うと。傍らの黒いチャージャーを離れ、先に行った彼らの後を追い二人で歩き始めた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
エンシェントソルジャー ~古の守護者と無属性の少女~
ロクマルJ
SF
百万年の時を越え
地球最強のサイボーグ兵士が目覚めた時
人類の文明は衰退し
地上は、魔法と古代文明が入り混じる
ファンタジー世界へと変容していた。
新たなる世界で、兵士は 冒険者を目指す一人の少女と出会い
再び人類の守り手として歩き出す。
そして世界の真実が解き明かされる時
人類の運命の歯車は 再び大きく動き始める...
※書き物初挑戦となります、拙い文章でお見苦しい所も多々あるとは思いますが
もし気に入って頂ける方が良ければ幸しく思います
週1話のペースを目標に更新して参ります
よろしくお願いします
▼表紙絵、挿絵プロジェクト進行中▼
イラストレーター:東雲飛鶴様協力の元、表紙・挿絵を制作中です!
表紙の原案候補その1(2019/2/25)アップしました
後にまた完成版をアップ致します!
幻想遊撃隊ブレイド・ダンサーズ
黒陽 光
SF
その日、1973年のある日。空から降りてきたのは神の祝福などではなく、終わりのない戦いをもたらす招かれざる来訪者だった。
現れた地球外の不明生命体、"幻魔"と名付けられた異形の怪異たちは地球上の六ヶ所へ巣を落着させ、幻基巣と呼ばれるそこから無尽蔵に湧き出て地球人類に対しての侵略行動を開始した。コミュニケーションを取ることすら叶わぬ異形を相手に、人類は嘗てない絶滅戦争へと否応なく突入していくこととなる。
そんな中、人類は全高8mの人型機動兵器、T.A.M.S(タムス)の開発に成功。遂に人類は幻魔と対等に渡り合えるようにはなったものの、しかし戦いは膠着状態に陥り。四十年あまりの長きに渡り続く戦いは、しかし未だにその終わりが見えないでいた。
――――これは、絶望に抗う少年少女たちの物語。多くの犠牲を払い、それでも生きて。いなくなってしまった愛しい者たちの遺した想いを道標とし、抗い続ける少年少女たちの物語だ。
表紙は頂き物です、ありがとうございます。
※カクヨムさんでも重複掲載始めました。
ガチャ戦機フロンティア・エデン~無職の40おっさん、寂れた駄菓子屋で500円ガチャを回したら……異世界でロボットパイロットになる!?~
チキンとり
SF
40歳無職の神宮真太郎は……
昼飯を買いに、なけなしの500円玉を持って歩いていたが……
見覚えの無い駄菓子屋を見付ける。
その駄菓子屋の軒先で、精巧なロボットフィギュアのガチャマシンを発見。
そのガチャは、1回500円だったが……
真太郎は、欲望に負けて廻す事にした。
それが……
境界線を越えた戦場で……
最初の搭乗機になるとは知らずに……
この物語は、オッサンが主人公の異世界転移ロボット物SFファンタジーです。
INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜
SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー
魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。
「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。
<第一章 「誘い」>
粗筋
余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。
「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。
ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー
「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ!
そこで彼らを待ち受けていたものとは……
※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。
※SFジャンルですが殆ど空想科学です。
※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。
※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中
※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。
戦場立志伝
居眠り
SF
荒廃した地球を捨てた人類は宇宙へと飛び立つ。
運良く見つけた惑星で人類は民主国家ゾラ連合を
建国する。だが独裁を主張する一部の革命家たちがゾラ連合を脱出し、ガンダー帝国を築いてしまった。さらにその中でも過激な思想を持った過激派が宇宙海賊アビスを立ち上げた。それを抑える目的でゾラ連合からハル平和民主連合が結成されるなど宇宙は混沌の一途を辿る。
主人公のアルベルトは愛機に乗ってゾラ連合のエースパイロットとして戦場を駆ける。
おじさんと戦艦少女
とき
SF
副官の少女ネリーは15歳。艦長のダリルはダブルスコアだった。 戦争のない平和な世界、彼女は大の戦艦好きで、わざわざ戦艦乗りに志願したのだ。 だが彼女が配属になったその日、起こるはずのない戦争が勃発する。 戦争を知らない彼女たちは生き延びることができるのか……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる