蒼空のイーグレット

黒陽 光

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Sortie-02:騎士たちは西欧より来たりて

第四章:第501機動遊撃飛行隊、その名はイーグレット/03

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 ――――まずは、風見宗悟の話をしよう。
 風見宗悟、現在は国連統合軍のESPパイロットで、階級は少尉。彼の有する超能力はテレパシーに超感覚といった基本的なESP能力の他、物体を自由自在に操るサイコキネシス。そして……彼が『風の妖精』という異名をとる一番の要因であるエアロキネシス能力。つまり、風を司る能力だ。
 といっても、その能力はただ風を物理的に操るのみに留まらない。他にも気の流れや、気配などを自在に読み取ったり……と、能力がどれほど幅広いモノかは当の宗悟本人ですら把握しきれていないほどだ。
 だから……と言うと変だが、当然のように宇宙空間でも――――物理的な風の操作は、風の無い宇宙では当たり前だが不可能なものの、しかし能力そのものは行使できる。便宜的にエアロキネシスと呼ばれているだけで、かなり幅の広い能力なのだ。同時にかなり特殊で稀有な能力で……現状、彼以外にこの能力を発現したESPは一人として確認されていない。少なくとも、統合軍は彼以外にエアロキネシス能力者を見つけ出してはいないのだ。
 それほどまでに珍しく、凄まじい超能力を有する彼だが。実を言うと先天的な、生まれつきの超能力者であったにも関わらず、長らくその能力のことに気付いていなかったそうだ。
 ――――自身の能力のことを知らなかった彼が、自分がヒトにない特別な力を持っていることに気が付き。そしてESPパイロットとして統合軍入りした理由わけを話すには、彼の生い立ちから辿っていく必要がある。
 名前の通り、風見宗悟は日本生まれの日本育ちだ。八歳を過ぎるまでは、ちゃあんと日本の群馬県でごく普通の子供として育ってきたそうだ。
 そんな彼だが、八歳を過ぎた頃に日本を離れることになる。理由はひとえに両親の仕事の関係だ。だから幼い彼は八歳の時に両親と、そしてたった一人の可愛い妹とともにフランスは花の都、首都パリに渡っていった。
 国は変われども、家族は変わらない。慣れない海外暮らしで色々と苦労や不便はあったものの……しかし優しい両親と可愛い妹、家族四人暮らしの家庭は暖かく。それはそれは幸せな日々を送っていたそうだ。
 ――――だが、そんな彼の幸せな日々は、ある日突然崩れ去ってしまった。
 原因は極々単純で、ありふれたもの。単なる交通事故だ。家族四人で車に乗り合わせ、父の運転でハイウェイを走っている最中に……何台も絡む大事故に遭遇。宗悟たち風見一家の乗っていた車は大型トレーラーに激突され、ぐちゃぐちゃになってしまった。そう……まるで、踏み潰した空き缶のように。
 当然、父も母も妹も即死だった。当たり前だ、そんな凄惨な状況で生きている方があり得ない。
 しかし――――彼は、彼だけは生存していたのだ。それも、無傷の状態で。
 事故の瞬間、彼は自覚の無かった自身の能力……そう、エアロキネシスの能力を無意識の内に行使し、自身の周りを強烈な風の防護壁で包み込むことで防御。そうして彼は……独りだけ無傷で生き残ってしまったのだ。
 生き残った彼は、大好きだった父も母も、そして何よりも大事だった妹も喪った彼は。この世にたった独りきり、独りぼっちのまま生きていくことを余儀なくされたのだった。
 そんな彼の――――傍から見れば奇跡的としか思えない生還は、一時期こそ奇跡の生還を遂げた子供として地元紙がこぞって取り上げていたが。しかし程なくして統合軍が彼のことを察知すると、すぐに報道管制が敷かれ、以降は不自然なぐらいに全く報じられなくなった。
 宗悟が超能力を行使して生存したことを突き止めた国連統合軍は、すぐに彼をスカウトに掛かった。
 生きる意味も見失い、病院のベッドで日々を死人のような眼で送っていた彼は、殆ど惰性でそのスカウトを了承。結果的にこうして統合軍のESPパイロットとなり、世界の裏側で外敵と戦う存在となる道を選んだのだった。
 統合軍にスカウトされ、SPパイロット候補生となり。深い悲しみに暮れる彼は、毎日を死人のように生きていたが――――しかし、そんな時だった。
 ――――――運命を変えてくれる彼女と、ミレーヌ・フランクールと出逢ったのは。
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