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Sortie-01:黒翼の舞う空
第十三章:繰り返さない為に/02
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それから暫くの間、二人は夜明け前のまどろんだ空をぼうっと見上げながら。誰も居ない街の中、歩道橋の上でただ……黙ったまま、そこに佇んでいた。
聞こえるのは柔らかな風の音と、そしてアリサの手元から聞こえる……蓋を開いた懐中時計から聞こえる、ささやかなオルゴールの音色だけ。夜明けを間近に控えた街はあまりにも静かで、そして――――どうしようもないぐらいに、物哀しかった。
「……そういえば」
手のひらの中に収まる金の懐中時計。ついさっきまでは壊れていた、でも翔一が直してくれたその懐中時計から聞こえる、小さなオルゴールの奏でるメロディを聴きながら。アリサはふと、何気なく傍らの翔一に語り掛ける。
「アンタもこの曲、懐かしいって言ってたわよね」
翔一は「ああ」と静かに頷き返す。
「父さんが好きで、よく聴いていたんだ。子供の頃から、父さんの部屋に行くと、いつもいつもこの曲が流れていたから……今でも、よく覚えているんだ」
「…………もしかして」
そんな風に翔一が、昔を懐かしみながら話してやると。するとアリサはその話の最中、何かに思い当たったようで。立てた人差し指をそっと唇の辺りに触れさせながら、軽く唸って思案する。
そうして数秒の間、思い悩んだ後で。そっと翔一の方に横目の視線を投げ掛けると、彼に対してアリサはこう問いかけた。
「ねえ翔一、ひとつ変なコトを訊かせて貰いたいんだけれど」
「……なんだ?」
「資料でチラッと読んだ覚えがあるけれど……アンタのパパって、確かもう亡くなってるんだったたかしら」
「ああ」
「それって……まさか、五年前?」
それにも翔一は「ああ」と頷き返し、彼女から飛んで来た問いを肯定してみせる。するとアリサは、更に続けて翔一に質問を投げ掛けてきた。まるで、自分の推理が正しいことを証明してみせるかのように。
「ちなみに、職業はなんだった?」
――――偶然であって欲しい。自分の思い過ごしであって欲しい。
そう思いながら、アリサは恐る恐る彼に問いかけていた。
「空自のパイロットだったよ。……ああっと、航空自衛隊。JASDF。日本の軍隊……だと少し語弊がある言い方か。とにかくエアフォース、戦闘機のパイロットだったらしい」
だが――――彼が自分に告げた答えは、そんなもので。予想通りだった答えに内心ドキリとしつつも、アリサはまだ確実じゃないと自分に言い聞かせながら、最後の質問を目の前の彼に向かって投げ掛けた。
「…………不躾な質問だけれど、死因は?」
「詳しいことは分からない。ただ、訓練中の不幸な事故死とだけ」
――――訓練中の、不幸な事故死。
ああ……間違いない。百パーセントではないにせよ、ちゃんと統合軍の記録を調べて裏を取らなければ確実とは言えないにせよ。しかし……九九・九パーセント、自分の推測は合っているのだろう。加えて、もうひとつの推測も…………。
「……はぁーっ」
そう思うと、アリサは大きな溜息をつかざるを得なかった。
そんな風に溜息をつく自分に対し、翔一がどうしたと首を傾げてくるから。顔を上げたアリサは「いい? これはあくまで、アタシの推測だけれど」と前置きをしてから、今まで自分の頭に過ぎっていた……殆ど確定に近くなった推測を、彼に告げる。
「多分……アンタのパパも、統合軍のパイロットだったかもしれない」
「えっ……?」
きょとんとする翔一の反応も、無理もないものだった。当然だ。いきなりこんなことを言われて、戸惑わないはずがない。
それを内心で理解しつつも、しかしアリサは戸惑う翔一の反応を意図的に無視しつつ、淡々と言葉を並べていく。
「ちょうど五年前よ、例のオホーツク事変は。アレに出撃した、統合軍指揮下の多国籍軍タスクフォース。そこに加わっていて、そして未帰還だったパイロットは皆……表向きには、訓練中の不幸な事故死ってことになっているの。
…………詳しいことは、ちゃんと軍のデータベースを照会してみないと分からない。だから最後に教えて頂戴、翔一。アンタのパパ……名前は?」
――――もうひとつの推測は、どうか勘違いであって欲しい。どうか、これだけは。
「……雄二だ。桐山、雄二」
しかし、そんな彼女の淡い期待は、すぐに彼の口から飛び出してきたある男の名によって打ち砕かれた。
「――――ああ、なんてこと」
……桐山雄二。
その名を翔一に告げられた途端、確かにその名を耳にした途端。アリサの顔からさあっと血の気が引いていく。ああ、やっぱり自分の推測は……正しかった。二つ目の推測も、正しかったんだ。
絶句する彼女に、尚も戸惑う翔一が「どういうことだ……?」と恐る恐る問うてみると。アリサは肩をふるわせながら、至極複雑そうな顔で彼にこう告げた。
「ユウジ・キリヤマ……ああ、間違いない。間違いないわ。アンタのパパは、アタシのパパの……マーティン・メイヤード中佐の相棒だったのよ」
「――――!?」
「桐山少佐、間違いないわ。アタシのパパの親友で、相棒。あの日……五年前のあの日に、一緒の機体に乗り込んで……戦死してるの、二人とも」
「そんな、そんな馬鹿な……っ!?」
「当時最新鋭の試作機、まだ人類がたった二機しか持っていなかった空間戦闘機。XSF‐2の試作一号機に乗って、ね……。
アタシのパパも、親友の相棒も。二人とも珍しい男性ESPだったって、お爺様から聞かされている。それに、桐山少佐の話も……統合軍のことは伏せて、だけれど。でも子供の頃、パパからよく聞かされてたわ。いつもクールで冷静で、頭が切れて。ヒトより何歩も引いたところがあるけれど、でも気の良い奴で、最高の相棒だ……って。
…………だから、アンタの名前を初めて聞いた時。アンタのファミリーネームを聞いた時に、まさかとは思っていたけれど。でも……ハッ、何よこれ。何なのよこれ。こんなのって、こんなのってアリなの……?」
「…………僕たちの間に、そんな」
眼を見開いて絶句し、ただただ立ち尽くしたまま。うわ言のように呟く翔一に、アリサは「運命的よね」と皮肉げに笑ってみせて。でもその後で表情にまた影を差すと、続けて彼女は翔一に対してこんなことを口走った。互いの間にある見えない縁を、因縁にも似たようなものを感じつつも……それでも、拒絶の意志を露わにした言葉を。
「でも……それでも。例えアンタとアタシの間にどんな縁があったとしても。悪いけれど、金輪際アタシは誰も後ろに乗せないって決めてるの」
もう――――ソフィアの二の舞は、御免だから。
「例え、その相手が……翔一。他ならぬアンタでも、ね」
「…………」
「アンタのことは割と気に入ってるのよ、翔一。アンタは優しいし、何処までも冷静で、凄く気配りも出来る。空の上でだって、アンタの飛び方は綺麗よ。まだまだ半人前な部分はあるけれど、それでもセンスは抜群。アンタほど楽しそうに空を飛ぶような奴、アタシは他に知らない」
――――もしかしたら、彼こそがソフィアが言っていた存在なのかもしれない。死に際に彼女が遺したあの言葉通りの、自分にとっての翼になってくれるような。そんな……そんな存在なのかも知れない。彼は、桐山翔一は。
一瞬、ほんの一瞬だけ、彼女の脳裏にはそんな考えが過ぎる。
だが、それでも…………。
「でもね、それでも……やっぱり、駄目なの」
「アリサ……」
表情に濃い影を差した、辛そうで哀しそうな彼女を前に。今にも泣き出しそうなほどに張り詰めた、そんなアリサを前に……しかし翔一には、彼女に掛けるべき言葉を見出すことが出来ず。また彼女の名をそっと呟くのみで、彼は何ひとつ、彼女に言ってやることが出来ないでいた。
もどかしい。こんな風な彼女を前にして、何も出来ない自分がもどかしい。
父が本当は統合軍のパイロットで、そしてアリサの父親と親友で、相棒でもあった。その事実は確かに衝撃的で、未だ翔一の胸中を強く揺さぶり続けているが……しかし彼にとって何よりも辛く、そして悔いるべき点は、何よりもそこだった。彼女に何もしてやれない、慰めや気の利いた言葉ひとつ掛けてやれない自分が、不甲斐なくて……どうしようもなく、もどかしい。
「アリサ、僕は――――」
それでも、何か言ってやろうと。そう思い翔一が破れかぶれに口を開いた瞬間、言葉を紡ぎ出そうとした瞬間――――その言葉は、強烈な耳鳴りに似た感覚に遮られた。
「これは……っ!?」
何処か身に覚えのあるような、でもまるで違う感覚。甲高い耳鳴りのような感覚を頭の中に覚えると、翔一とアリサは二人揃って歩道橋の上で数歩たたらを踏んでよろめいた。
「チッ、来ちゃったのね……! 予報より随分と早い……!!」
翔一がこの甲高い耳鳴りめいた感覚に戸惑っていると、アリサが大きく舌打ちをしてひとりごちる。
そんな……どうやら事情と原因を心得ているらしい彼女に、翔一が「来たって、何が……!?」と問いかけると。すると彼女はキッと鋭い視線をこちらに向け、彼に対してこう告げた。
「敵よ、敵! この感覚は……間違いない、開いたのよ! 何処かに、レギオンの超空間ゲートがね……!!」
――――矢のように過ぎ去る時間も、唐突に襲い来る敵も。何もかも、誰も彼もが戸惑いを待ってなどくれない。迷っている暇を、悩んでいる暇を、決して待ってなどくれないのだ。
突然の敵襲は、夜明けを目前に控えたまどろみの空に。桐山翔一には決断も説得も、何もかもをする暇すら与えられぬまま……ただ彼は、巻き込まれていく。この世界を包み込む、静かにして巨大な戦乱の渦中に。
(第十三章『繰り返さない為に』了)
聞こえるのは柔らかな風の音と、そしてアリサの手元から聞こえる……蓋を開いた懐中時計から聞こえる、ささやかなオルゴールの音色だけ。夜明けを間近に控えた街はあまりにも静かで、そして――――どうしようもないぐらいに、物哀しかった。
「……そういえば」
手のひらの中に収まる金の懐中時計。ついさっきまでは壊れていた、でも翔一が直してくれたその懐中時計から聞こえる、小さなオルゴールの奏でるメロディを聴きながら。アリサはふと、何気なく傍らの翔一に語り掛ける。
「アンタもこの曲、懐かしいって言ってたわよね」
翔一は「ああ」と静かに頷き返す。
「父さんが好きで、よく聴いていたんだ。子供の頃から、父さんの部屋に行くと、いつもいつもこの曲が流れていたから……今でも、よく覚えているんだ」
「…………もしかして」
そんな風に翔一が、昔を懐かしみながら話してやると。するとアリサはその話の最中、何かに思い当たったようで。立てた人差し指をそっと唇の辺りに触れさせながら、軽く唸って思案する。
そうして数秒の間、思い悩んだ後で。そっと翔一の方に横目の視線を投げ掛けると、彼に対してアリサはこう問いかけた。
「ねえ翔一、ひとつ変なコトを訊かせて貰いたいんだけれど」
「……なんだ?」
「資料でチラッと読んだ覚えがあるけれど……アンタのパパって、確かもう亡くなってるんだったたかしら」
「ああ」
「それって……まさか、五年前?」
それにも翔一は「ああ」と頷き返し、彼女から飛んで来た問いを肯定してみせる。するとアリサは、更に続けて翔一に質問を投げ掛けてきた。まるで、自分の推理が正しいことを証明してみせるかのように。
「ちなみに、職業はなんだった?」
――――偶然であって欲しい。自分の思い過ごしであって欲しい。
そう思いながら、アリサは恐る恐る彼に問いかけていた。
「空自のパイロットだったよ。……ああっと、航空自衛隊。JASDF。日本の軍隊……だと少し語弊がある言い方か。とにかくエアフォース、戦闘機のパイロットだったらしい」
だが――――彼が自分に告げた答えは、そんなもので。予想通りだった答えに内心ドキリとしつつも、アリサはまだ確実じゃないと自分に言い聞かせながら、最後の質問を目の前の彼に向かって投げ掛けた。
「…………不躾な質問だけれど、死因は?」
「詳しいことは分からない。ただ、訓練中の不幸な事故死とだけ」
――――訓練中の、不幸な事故死。
ああ……間違いない。百パーセントではないにせよ、ちゃんと統合軍の記録を調べて裏を取らなければ確実とは言えないにせよ。しかし……九九・九パーセント、自分の推測は合っているのだろう。加えて、もうひとつの推測も…………。
「……はぁーっ」
そう思うと、アリサは大きな溜息をつかざるを得なかった。
そんな風に溜息をつく自分に対し、翔一がどうしたと首を傾げてくるから。顔を上げたアリサは「いい? これはあくまで、アタシの推測だけれど」と前置きをしてから、今まで自分の頭に過ぎっていた……殆ど確定に近くなった推測を、彼に告げる。
「多分……アンタのパパも、統合軍のパイロットだったかもしれない」
「えっ……?」
きょとんとする翔一の反応も、無理もないものだった。当然だ。いきなりこんなことを言われて、戸惑わないはずがない。
それを内心で理解しつつも、しかしアリサは戸惑う翔一の反応を意図的に無視しつつ、淡々と言葉を並べていく。
「ちょうど五年前よ、例のオホーツク事変は。アレに出撃した、統合軍指揮下の多国籍軍タスクフォース。そこに加わっていて、そして未帰還だったパイロットは皆……表向きには、訓練中の不幸な事故死ってことになっているの。
…………詳しいことは、ちゃんと軍のデータベースを照会してみないと分からない。だから最後に教えて頂戴、翔一。アンタのパパ……名前は?」
――――もうひとつの推測は、どうか勘違いであって欲しい。どうか、これだけは。
「……雄二だ。桐山、雄二」
しかし、そんな彼女の淡い期待は、すぐに彼の口から飛び出してきたある男の名によって打ち砕かれた。
「――――ああ、なんてこと」
……桐山雄二。
その名を翔一に告げられた途端、確かにその名を耳にした途端。アリサの顔からさあっと血の気が引いていく。ああ、やっぱり自分の推測は……正しかった。二つ目の推測も、正しかったんだ。
絶句する彼女に、尚も戸惑う翔一が「どういうことだ……?」と恐る恐る問うてみると。アリサは肩をふるわせながら、至極複雑そうな顔で彼にこう告げた。
「ユウジ・キリヤマ……ああ、間違いない。間違いないわ。アンタのパパは、アタシのパパの……マーティン・メイヤード中佐の相棒だったのよ」
「――――!?」
「桐山少佐、間違いないわ。アタシのパパの親友で、相棒。あの日……五年前のあの日に、一緒の機体に乗り込んで……戦死してるの、二人とも」
「そんな、そんな馬鹿な……っ!?」
「当時最新鋭の試作機、まだ人類がたった二機しか持っていなかった空間戦闘機。XSF‐2の試作一号機に乗って、ね……。
アタシのパパも、親友の相棒も。二人とも珍しい男性ESPだったって、お爺様から聞かされている。それに、桐山少佐の話も……統合軍のことは伏せて、だけれど。でも子供の頃、パパからよく聞かされてたわ。いつもクールで冷静で、頭が切れて。ヒトより何歩も引いたところがあるけれど、でも気の良い奴で、最高の相棒だ……って。
…………だから、アンタの名前を初めて聞いた時。アンタのファミリーネームを聞いた時に、まさかとは思っていたけれど。でも……ハッ、何よこれ。何なのよこれ。こんなのって、こんなのってアリなの……?」
「…………僕たちの間に、そんな」
眼を見開いて絶句し、ただただ立ち尽くしたまま。うわ言のように呟く翔一に、アリサは「運命的よね」と皮肉げに笑ってみせて。でもその後で表情にまた影を差すと、続けて彼女は翔一に対してこんなことを口走った。互いの間にある見えない縁を、因縁にも似たようなものを感じつつも……それでも、拒絶の意志を露わにした言葉を。
「でも……それでも。例えアンタとアタシの間にどんな縁があったとしても。悪いけれど、金輪際アタシは誰も後ろに乗せないって決めてるの」
もう――――ソフィアの二の舞は、御免だから。
「例え、その相手が……翔一。他ならぬアンタでも、ね」
「…………」
「アンタのことは割と気に入ってるのよ、翔一。アンタは優しいし、何処までも冷静で、凄く気配りも出来る。空の上でだって、アンタの飛び方は綺麗よ。まだまだ半人前な部分はあるけれど、それでもセンスは抜群。アンタほど楽しそうに空を飛ぶような奴、アタシは他に知らない」
――――もしかしたら、彼こそがソフィアが言っていた存在なのかもしれない。死に際に彼女が遺したあの言葉通りの、自分にとっての翼になってくれるような。そんな……そんな存在なのかも知れない。彼は、桐山翔一は。
一瞬、ほんの一瞬だけ、彼女の脳裏にはそんな考えが過ぎる。
だが、それでも…………。
「でもね、それでも……やっぱり、駄目なの」
「アリサ……」
表情に濃い影を差した、辛そうで哀しそうな彼女を前に。今にも泣き出しそうなほどに張り詰めた、そんなアリサを前に……しかし翔一には、彼女に掛けるべき言葉を見出すことが出来ず。また彼女の名をそっと呟くのみで、彼は何ひとつ、彼女に言ってやることが出来ないでいた。
もどかしい。こんな風な彼女を前にして、何も出来ない自分がもどかしい。
父が本当は統合軍のパイロットで、そしてアリサの父親と親友で、相棒でもあった。その事実は確かに衝撃的で、未だ翔一の胸中を強く揺さぶり続けているが……しかし彼にとって何よりも辛く、そして悔いるべき点は、何よりもそこだった。彼女に何もしてやれない、慰めや気の利いた言葉ひとつ掛けてやれない自分が、不甲斐なくて……どうしようもなく、もどかしい。
「アリサ、僕は――――」
それでも、何か言ってやろうと。そう思い翔一が破れかぶれに口を開いた瞬間、言葉を紡ぎ出そうとした瞬間――――その言葉は、強烈な耳鳴りに似た感覚に遮られた。
「これは……っ!?」
何処か身に覚えのあるような、でもまるで違う感覚。甲高い耳鳴りのような感覚を頭の中に覚えると、翔一とアリサは二人揃って歩道橋の上で数歩たたらを踏んでよろめいた。
「チッ、来ちゃったのね……! 予報より随分と早い……!!」
翔一がこの甲高い耳鳴りめいた感覚に戸惑っていると、アリサが大きく舌打ちをしてひとりごちる。
そんな……どうやら事情と原因を心得ているらしい彼女に、翔一が「来たって、何が……!?」と問いかけると。すると彼女はキッと鋭い視線をこちらに向け、彼に対してこう告げた。
「敵よ、敵! この感覚は……間違いない、開いたのよ! 何処かに、レギオンの超空間ゲートがね……!!」
――――矢のように過ぎ去る時間も、唐突に襲い来る敵も。何もかも、誰も彼もが戸惑いを待ってなどくれない。迷っている暇を、悩んでいる暇を、決して待ってなどくれないのだ。
突然の敵襲は、夜明けを目前に控えたまどろみの空に。桐山翔一には決断も説得も、何もかもをする暇すら与えられぬまま……ただ彼は、巻き込まれていく。この世界を包み込む、静かにして巨大な戦乱の渦中に。
(第十三章『繰り返さない為に』了)
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