蒼空のイーグレット

黒陽 光

文字の大きさ
上 下
50 / 142
Sortie-01:黒翼の舞う空

第十二章:アリサ・メイヤード/02

しおりを挟む
 統合軍に入ったアリサは、すぐにメキメキとその頭角を現し始め。ESPパイロットの訓練過程を終えて実戦部隊に配属される頃には、もう彼女の手の中には漆黒の翼があった。亡き父が駆っていたのと同じ翼が、憎き仇敵を滅ぼし尽くす為の黒き翼が。
 ――――YSF‐2/A≪グレイ・ゴースト≫、先行量産型八号機。
 シリアルナンバー、S00‐0107番機。それこそが、彼女が手にした翼だった。
 そんな復讐の為の翼を手に入れると同時に、願ってやまなかった黒翼を手に入れるのと同時に。彼女は、その翼の後席に座る唯一無二の相棒も手に入れていた。
 …………ソフィア・ランチェスター。
 訓練過程の頃から共に過ごしてきた親友だ。階級は……当時は確か、同じ少尉だったと記憶している。
 天真爛漫で活発な性格をしていて、仕草ひとつひとつが可愛らしく見えてしまうような感じの、ソフィアはそんな可憐な女の子だった。ウェーブ掛かったセミロングの髪は焦げ茶色で、瞳は海のように綺麗な蒼色。背丈は一五九センチぐらいだったから、一八五センチの凄まじい長身なアリサと横並びになると、まるで大人と子供のような身長差だったのを今でも覚えている。よくそのことで彼女をからかってやったものだ。
 そんなソフィアだが、能力の方はテレパシーに超感覚の二つのみで、ESPパイロットとしては極々基本的な能力しか有していなかった。
 だが、そのたった二つの能力がかなり高いレベルで、しかもバランス良く纏まっていて。どちらかといえば能力特化型なアリサとは、ソフィアはあらゆる意味で正反対。そういう意味で、アリサを上手く補助してくれる彼女とは良いコンビだった。
 まさに凸凹コンビという奴だ。見た目的にも、性格的にも、そして能力的にも。アリサとソフィアは本当に正反対な二人だったが、だからこそ良いコンビで居られたのかもしれない。実際、ソフィアと組んで≪グレイ・ゴースト≫で実戦に出始めてから……僅か半年も経たない内に、彼女の機体の尾翼には赤い薔薇を模ったパーソナル・エンブレムが施されていたのだ。エースと呼ばれる中にアリサが加え入れられたことを何よりも示す、彼女だけのエンブレムが。
 ソフィアと組んで飛んだ、幾百もの戦場。僅かな期間ではあったが、ソフィアと組んで撃墜した敵の数は余裕で三桁に届くほどだ。それほどまでに、彼女はアリサにとってこれ以上ないほど息の合ったパートナーであり。そして同時に……掛け替えのない戦友で、そしてたった一人の親友だったのだ。今でも胸を張って言える。ソフィア・ランチェスターは確かに、自分にとって最高の親友だったと。
 いつだって、彼女と一緒に飛んできた。いつだって、彼女と同じ空を飛んでいた。いつだって……自分の後ろにはソフィアが居て。どんな時だって、独りぼっちじゃなかった。空の上に居る限り、絶対に独りきりになることなんて無かった。
 死ぬときも多分、ソフィアと一緒なんだろうと、当時のアリサはそう思っていた。それでも構わない、とも。
 だが――――運命というものは時に残酷で、そしてあまりに非情で。二人はある大規模な作戦の最中、共に歩いていたその道を分かつことになってしまう。生と死という二つの道を、アリサ・メイヤードとソフィア・ランチェスターの二人は分かつことになってしまったのだ…………。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

零空(レイクウ) Empty Sky イノセント・スカイ

M921
SF
戦争はどこで起きても不思議ではない。 何が火種で起きるかわからない 一体何が正義で何が悪なのかそれさえもわからない。 傭兵…金で買われ戦場へ行き任務を遂行する まるでロボットのように。 そこに私情はない。 命はチェスの駒と一緒… 金で作られた翼でこの空を舞い叩き落とすだけ 私たちは傭兵。そこに命はない…… あらすじ ある日東京上空に国籍不明の戦闘機が出現 自衛隊も出撃するが手も足も出ず地上も占領されてしまう。 そこで日本政府より傭兵部隊であるフェニックス隊、リュコス隊へ国籍不明部隊を東京から追い出してほしいとの依頼が入る 一体どこの国なのか、目的はなんなのか。 そして、命とはなんなのか。 何を思い空を飛ぶ?金のためか?己の思想か? 愛するもののためか? 鋼の翼で不死鳥が空を舞う 「フェニックス隊!エンゲージ!!」 《ウィルコ!》 世界観は地球をもう一回り大きくして実際ある国と架空の国を織り交ぜている感じです。 パラレルワールドとして見てください。 ※本作はフィクションです。実際にある団体、組織とは何も関係ありません。ご了承の方のみ閲覧ください。

処理中です...