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Chapter-03『BLACK EXECUTER』
第一章:戸惑い、揺れ動く紅蓮の乙女/05
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「でやぁぁぁぁぁっ!!」
地を蹴って踏み込み、腰部スラスターを吹かして飛び上がったアンジェが左脚のストライクエッジを煌めかせながら、まずはトータスの方へと鋭い蹴りを叩き込んだ。
「――――?」
「硬い!?」
だが、トータスの甲羅に直撃したアンジェの左脚。正確には左脚の神姫装甲で煌めくストライクエッジは……しかしその刃を甲羅の表面に軽く食い込ませただけで、その甲羅を叩き割ることはなく。ガンッと鈍い衝撃をアンジェの脚に伝えるだけで、トータスに致命傷を負わせることは叶わなかった。
「でも、これなら!!」
初撃を敢えなく弾かれてしまったアンジェだったが、しかし彼女はめげることなく。腰のスラスターを吹かしつつ空中で器用に身体を捻ると、やはりスラスター噴射で勢いを付けつつ二度、三度と続けざまにトータスに向かって脚のストライクエッジで蹴りを叩き込んでいく。
「そんな……硬すぎるよ!?」
しかし――――そんな連撃を以てしても、アンジェの脚ではトータスの甲羅に掠り傷を付けることしか叶わず。その事実にアンジェが唖然としていると、するとトータスはバッと振り向きざまに太い腕を振るい、その腕でアンジェの身体を殴打した。
「がぁっ!?」
トータスの腕に殴られ、アンジェが吹っ飛んでいく。背中から地面に落下し、ごろんごろんと何度か転がった後で……どうにか彼女は起き上がる。
「アンジェさん!? くっ……!!」
そんな風にアンジェが吹っ飛んでいったのを見て、遥は咄嗟に彼女のフォローに回ろうとしたが。しかし……今まさに相手にしているグラスホッパーは、どうやらそれを許してくれそうにもないらしい。
アンジェがトータスに斬り込んだのを見て、自分はグラスホッパーの相手をしようと決めた遥だったが。グラスホッパーが繰り出す巧みな徒手格闘と一進一退の攻防を繰り返すばかりで、今の今まで効果的なダメージを与えられていない。
当然、アンジェのフォローに回る隙もない。遥は歯噛みをしつつ……グラスホッパーの繰り出してくる回し蹴りをウィスタリア・エッジでいなしつつ、隙を見てカウンターの斬撃を叩き込んでやる。
「……大丈夫だよ、遥さん。そこまで大したダメージじゃないから……!!」
そうして遥がグラスホッパーと刃を交わし合っている間にも、アンジェは再び立ち上がっていて。軽く汚れた口元を左手の甲で拭いながら……闘志の消えていない瞳で目の前のトータスをジッと見据えた。
(思っていたよりも、威力自体は弱かった。殆ど受け身で勢いは受け流せたから……僕自身はそんなダメージじゃない)
――――トータスの攻撃力は、見た目よりずっと貧弱だ。
殴られたときは流石にヤバいと思ったアンジェだったが、しかしイザ実際に受けてみると、あの太い腕の凶悪な見た目ほどの衝撃じゃあなかったのだ。
実際、アンジェは派手な吹っ飛び方をしただけで、ほぼダメージは負っていないも同然だった。
どうやらあのトータス・バンディット、防御力に特化した性質のようだ。
そんなトータスの腕から繰り出される殴打、幾ら人間相手には即死級の殴打でも……相手が神姫であるというのなら話は別。威力はグラスホッパーの蹴りの十分の一以下、それよりもっと低いと見て間違いないだろう。
――――だとすれば。
だとすれば、アンジェにも十二分に勝ち目はある。問題はあの意味不明な防御力をどう突破するかだが……アンジェには手札が三枚あるのだ。こんな時の為の、フォームチェンジという手札が。
「はっ……!」
アンジェはさっき変身したときと同じように、左腕を胸の前に構える。
すると――――アンジェの左腕にあるミラージュ・ブレス、その下部にあるエレメント・クリスタルが緋色に光り始めたではないか。
「そっちが硬さを勝ち誇るのなら――――」
同時にブレス上部の丸い水晶、エナジーコアも光り出して強烈な唸り声を上げると。するとアンジェの身体が一瞬、閃光に包まれて……そして次の瞬間には、もう彼女は別の姿へと変わり果てていた。
「――――僕は、それを上回る一撃を君に叩き込む! 魂を込めた、全開の一撃をっ!!」
グッと強く握り締める彼女の拳は、もう先程までのものとはまるで違っていて。その腕には巨大な、それこそミラージュ・ブレスではないが……しかしガントレットのようなものとしか形容のしようがない、そんな武装が彼女の拳を包み込んでいた。
スカーレット・フィスト。
彼女の両の拳を極限まで強化し、烈火の如き一撃を叩き込むことだけに全力を注ぎ込んだ、格闘戦用の固定武装。全てを叩き壊し、突破する一撃を叩き込むことだけに特化した……今のアンジェの両腕は、そんな大型ガントレットに包まれていた。
――――スカーレットフォーム。
それこそが、今アンジェが姿を変えたものの名。神姫ヴァーミリオン・ミラージュ、二つ目の戦闘フォーム。ミラージュの特性である圧倒的な速度を犠牲に、防御力と格闘戦の圧倒的な威力に特化した……近距離戦用フォーム。それこそがこのスカーレットフォームと、専用武装『スカーレット・フィスト』だった。
「アンジェさん……!!」
「遥さんは、そっちの相手をお願い。こっちは僕に任せて」
「……分かりました、お気を付けて!」
グラスホッパーと何閃も刃を交わし合いながら、チラリとこちらを振り向いた遥に……アンジェは自信満々といった顔でそう告げて。遥の返す言葉を聞きながら、グッと握り締めた両の拳で構えを取る。
両脚を肩幅ぐらいまで開き、重心を低く構え。調子を見るように腰のスタスターをパッパッと短噴射させつつ……何事かと見つめてくるトータス・バンディットとアンジェが睨み合う。
「僕の覚悟……受けきれるのなら、受け止めてみせろっ!!」
地を蹴って踏み込み、腰部スラスターを吹かして飛び上がったアンジェが左脚のストライクエッジを煌めかせながら、まずはトータスの方へと鋭い蹴りを叩き込んだ。
「――――?」
「硬い!?」
だが、トータスの甲羅に直撃したアンジェの左脚。正確には左脚の神姫装甲で煌めくストライクエッジは……しかしその刃を甲羅の表面に軽く食い込ませただけで、その甲羅を叩き割ることはなく。ガンッと鈍い衝撃をアンジェの脚に伝えるだけで、トータスに致命傷を負わせることは叶わなかった。
「でも、これなら!!」
初撃を敢えなく弾かれてしまったアンジェだったが、しかし彼女はめげることなく。腰のスラスターを吹かしつつ空中で器用に身体を捻ると、やはりスラスター噴射で勢いを付けつつ二度、三度と続けざまにトータスに向かって脚のストライクエッジで蹴りを叩き込んでいく。
「そんな……硬すぎるよ!?」
しかし――――そんな連撃を以てしても、アンジェの脚ではトータスの甲羅に掠り傷を付けることしか叶わず。その事実にアンジェが唖然としていると、するとトータスはバッと振り向きざまに太い腕を振るい、その腕でアンジェの身体を殴打した。
「がぁっ!?」
トータスの腕に殴られ、アンジェが吹っ飛んでいく。背中から地面に落下し、ごろんごろんと何度か転がった後で……どうにか彼女は起き上がる。
「アンジェさん!? くっ……!!」
そんな風にアンジェが吹っ飛んでいったのを見て、遥は咄嗟に彼女のフォローに回ろうとしたが。しかし……今まさに相手にしているグラスホッパーは、どうやらそれを許してくれそうにもないらしい。
アンジェがトータスに斬り込んだのを見て、自分はグラスホッパーの相手をしようと決めた遥だったが。グラスホッパーが繰り出す巧みな徒手格闘と一進一退の攻防を繰り返すばかりで、今の今まで効果的なダメージを与えられていない。
当然、アンジェのフォローに回る隙もない。遥は歯噛みをしつつ……グラスホッパーの繰り出してくる回し蹴りをウィスタリア・エッジでいなしつつ、隙を見てカウンターの斬撃を叩き込んでやる。
「……大丈夫だよ、遥さん。そこまで大したダメージじゃないから……!!」
そうして遥がグラスホッパーと刃を交わし合っている間にも、アンジェは再び立ち上がっていて。軽く汚れた口元を左手の甲で拭いながら……闘志の消えていない瞳で目の前のトータスをジッと見据えた。
(思っていたよりも、威力自体は弱かった。殆ど受け身で勢いは受け流せたから……僕自身はそんなダメージじゃない)
――――トータスの攻撃力は、見た目よりずっと貧弱だ。
殴られたときは流石にヤバいと思ったアンジェだったが、しかしイザ実際に受けてみると、あの太い腕の凶悪な見た目ほどの衝撃じゃあなかったのだ。
実際、アンジェは派手な吹っ飛び方をしただけで、ほぼダメージは負っていないも同然だった。
どうやらあのトータス・バンディット、防御力に特化した性質のようだ。
そんなトータスの腕から繰り出される殴打、幾ら人間相手には即死級の殴打でも……相手が神姫であるというのなら話は別。威力はグラスホッパーの蹴りの十分の一以下、それよりもっと低いと見て間違いないだろう。
――――だとすれば。
だとすれば、アンジェにも十二分に勝ち目はある。問題はあの意味不明な防御力をどう突破するかだが……アンジェには手札が三枚あるのだ。こんな時の為の、フォームチェンジという手札が。
「はっ……!」
アンジェはさっき変身したときと同じように、左腕を胸の前に構える。
すると――――アンジェの左腕にあるミラージュ・ブレス、その下部にあるエレメント・クリスタルが緋色に光り始めたではないか。
「そっちが硬さを勝ち誇るのなら――――」
同時にブレス上部の丸い水晶、エナジーコアも光り出して強烈な唸り声を上げると。するとアンジェの身体が一瞬、閃光に包まれて……そして次の瞬間には、もう彼女は別の姿へと変わり果てていた。
「――――僕は、それを上回る一撃を君に叩き込む! 魂を込めた、全開の一撃をっ!!」
グッと強く握り締める彼女の拳は、もう先程までのものとはまるで違っていて。その腕には巨大な、それこそミラージュ・ブレスではないが……しかしガントレットのようなものとしか形容のしようがない、そんな武装が彼女の拳を包み込んでいた。
スカーレット・フィスト。
彼女の両の拳を極限まで強化し、烈火の如き一撃を叩き込むことだけに全力を注ぎ込んだ、格闘戦用の固定武装。全てを叩き壊し、突破する一撃を叩き込むことだけに特化した……今のアンジェの両腕は、そんな大型ガントレットに包まれていた。
――――スカーレットフォーム。
それこそが、今アンジェが姿を変えたものの名。神姫ヴァーミリオン・ミラージュ、二つ目の戦闘フォーム。ミラージュの特性である圧倒的な速度を犠牲に、防御力と格闘戦の圧倒的な威力に特化した……近距離戦用フォーム。それこそがこのスカーレットフォームと、専用武装『スカーレット・フィスト』だった。
「アンジェさん……!!」
「遥さんは、そっちの相手をお願い。こっちは僕に任せて」
「……分かりました、お気を付けて!」
グラスホッパーと何閃も刃を交わし合いながら、チラリとこちらを振り向いた遥に……アンジェは自信満々といった顔でそう告げて。遥の返す言葉を聞きながら、グッと握り締めた両の拳で構えを取る。
両脚を肩幅ぐらいまで開き、重心を低く構え。調子を見るように腰のスタスターをパッパッと短噴射させつつ……何事かと見つめてくるトータス・バンディットとアンジェが睨み合う。
「僕の覚悟……受けきれるのなら、受け止めてみせろっ!!」
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