上 下
28 / 131
Chapter-01『覚醒する蒼の神姫、交錯する運命』

第五章:もしも、誰かの笑顔を守れるのなら/01

しおりを挟む
 第五章:もしも、誰かの笑顔を守れるのなら


「ん? なんだろ……?」
 三人で商店街を歩いている最中、周囲の様子が段々とおかしくなり始めていることに最初に気付いたのは、他でもないアンジェだった。
「何かの祭りか……ってそういう時期でもないしな」
「うーん、何かな……?」
 歩く三人の前方から、何やら大勢の人の群れが駆けてきている。
 一見すると、それは祭りのようにも見える光景。だが奇妙な点は、走る人々が明らかに全速力である点と、そして皆が皆、一様に血相を変えている点だ。まるで何かから必死に逃れようとしているような、そんな人の群れが戒斗たちの方に押し掛けて来ていた。
 それを眺めながら呑気に呟く戒斗と、うーんと不思議そうに首を傾げるアンジェ。
「なんだろうな、事故でも起こったのか……?」
 戒斗も戒斗で、本当に何が起こったのかと不思議そうに首を傾げる。
「本当に、どうしたんでしょうね――――っ!?」
 そんな二人の横で、遥もバイクを押しながら首を傾げようとした……その瞬間だった。
 ――――遥が、あの耳鳴りのような甲高い感触を頭の中に感じたのは。
「この感覚……まさかっ!?」
 間違いない。幾度もこの感覚を経験してきた自分が、何十、何百という敵を人知れず倒してきた自分が、この奇妙な感覚を間違えるはずがない。
 これは――――間違いなく、バンディットの気配を感じた時の感覚だ。
(そんな、こんな時に……!!)
 すぐにでも駆け出したくなった遥だったが、しかし今はグッと堪える。
 何せ、すぐ傍には戒斗とアンジェが居るのだ。二人に自分が神姫であることを知られるワケにはいかない。
 いいや、それ以前に……あの騒ぎから察するに、バンディットが出現したのは此処からそう離れていない場所だろう。きっとあの群衆は、現れたバンディットから逃げてきた人々なんだ。
 敵はすぐ傍にまで迫っている。だとすれば、まず自分が最優先にすべきことは。
 …………戒斗とアンジェを、逃がさなければ。
「お二人とも、早く逃げてくださいっ!!」
 そう思うと、遥は必死の形相で二人に呼び掛けていた。
「えっ? ちょっ、遥!?」
「遥さん、どうしちゃったの?」
「いいから! 戒斗さんもアンジェさんも、一刻も早く此処から離れてください!!」
 だが、状況がイマイチ把握出来ていない二人は困惑した顔をするのみで。遥は戒斗の肩を掴んで彼を激しく揺さぶりながら、必死の形相で二人に訴えかけた。
「逃げてください! でないと……」
「でないと、どうしたってんだよ遥――――」
 と、戒斗が自分の肩を掴んで揺らしてくる遥に戸惑い気味に訊き返そうとした、その時だった。
 ――――遠くから、何かが破裂するような音が聞こえてきたのだ。
「ねえカイト、これって……!?」
「ああ……銃声だ……!!」
 それは、明らかに銃声だった。
 しかも一度じゃない、何度も何度も。一度収まったかと思いきや、今度はタタタタタ……と連続発射する音まで聞こえてきたではないか。
 拳銃だけじゃない、フルオート・ウェポンの発砲音まで聞こえてきたとあっては……今まで困惑していた戒斗もアンジェも、流石にこれはただ事ではないと悟ったようだった。
「カイト、遥さんの言うとおりだよ。此処に居たら危ない、逃げよう……?」
「……そうだな、逃げようアンジェ」
「早く、お二人ともこっちに!!」
 二人が深刻な顔で頷き合っているのを見て、すぐさま遥は二人の手を取り、そうしてバイクを置いて逃げようとしたのだが――――。
「っ!?」
「わぁっ!?」
「……そんな、早すぎる」
「――――フシュルルルル……」
 そうして逃げようとした途端、三人の目の前に何かが降ってきて。不気味な声を上げて降り立った異形を前に、三人は一様に驚いていた。
 ――――スパイダー・バンディット。
 応戦した警官三人を始末したスパイダーが定めた次なる標的は、他でもない戒斗たちだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

ああ、もういらないのね

志位斗 茂家波
ファンタジー
……ある国で起きた、婚約破棄。 それは重要性を理解していなかったがゆえに起きた悲劇の始まりでもあった。 だけど、もうその事を理解しても遅い…‥‥ たまにやりたくなる短編。興味があればぜひどうぞ。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた

リオール
恋愛
だから? それは最強の言葉 ~~~~~~~~~ ※全6話。短いです ※ダークです!ダークな終わりしてます! 筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。 スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。 ※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

処理中です...