上 下
52 / 430
第一章『戦う少年少女たちの儚き青春』

Int.52:純白の炎と紅蓮の焔、激突する魂の一閃③

しおりを挟む
「っ!?」
 微かな衝撃を感じると同時に、FSA-15Eストライク・ヴァンガードのコクピット内に鳴り響くけたたましい警報音。今まであれほど元気よく吹かしていたスラスタは途端に息切れを起こしその勢いを衰えさせ、機体の速度と高度が加速度的に低下していく。
「ちょっと、どうしたのよっ!?」
 イレギュラー過ぎる事態に、流石のステラとて混乱の色を隠せない。スラスタは幾ら吹かそうがうんともすんとも言わず、視界の端に網膜投影されるのは無情な背部スラスタ・ユニットの破壊判定表示のみ。
(なんでよ!? アイツが持ってたのは、ダブルオー・キャニスターの散弾砲でしょ……っ!?)
 そこまで考えて、漸くステラは気が付いた。
 奴が撃ったのは、ダブルオー・キャニスター弾ではない。撃っていたのはあくまで牽制と囮。本命の方はスラッグを装填していて、たった今FSA-15Eストライク・ヴァンガードのスラスタを撃ち抜いたのだ……!
 APFSDSかHESH(粘着榴弾)か、HEAT-MPかまでの詳しい弾種は分からない。だが考えられるとすればやはりスラッグ弾の直撃以外には考えられない。ダブルオー・キャニスターの豆粒程度では、この距離でスラスタを一撃で撃破することなど不可能なのだ。
 ともかく、ステラはもう空中での三次元機動が使えなくなる。なんとかしてアイツも、一緒に地面へ道連れにしなくては……!
「ああもうっ! こんなことやりたくないけど……!」
 でも、仕方ない――――!
 ステラは意を決し両肩のサブ・スラスタを吹かすと、なけなしの推進剤を全部燃やし一気に地面へ機体の背中を叩き付ける。
「っっっ!!」
 強烈な衝撃がFSA-15Eストライク・ヴァンガードを揺さぶり、コクピット・シートに座るステラも大きく揺さぶる。吐き気すら覚える強烈な衝撃だが、ステラは歯を食い縛ってそれに耐えた。
 FSA-15Eストライク・ヴァンガードのあまりに突拍子のない落下に拍子抜けをし、一真の≪閃電≫が勢い余ってステラ機の真上を通り過ぎる。ステラはニッと不敵な笑みを浮かべ、両腕の突撃機関砲の砲口を≪閃電≫の背中に向けた。
「素人にしちゃあ、悪くない一撃だったわ。褒めてあげる」
 両手に握り締める操縦桿の、そのトリガーに人差し指を掛けるステラ。
「でもね――――」
 そして、トリガーを引き絞り、
「一歩、詰めが甘かったわよッ!!!」
 ステラの視界の中で激しすぎる閃光が瞬くと、蒼穹を往く一真の≪閃電≫、その背中へ向け大量の20mmペイント砲弾が殺到した。




「きゃあっ!?」
 そんな二機の様子をライブ中継で眺めていた美弥が、思わず悲鳴を上げて両手で顔を覆いしゃがみ込んだ。
「ちょっとオイ、今のやべーんじゃねえのか!?」
 流石の白井も狼狽し、マジな顔で声を上げる。
「…………」
 しかし瀬那は無言のまま、腕組みをし試合の推移を見守っていて。彼女の見るモニタの中では、背中に大量の20mmペイント砲弾を喰らった一真の≪閃電≫がその白い装甲のあちこちをピンク色の塗料で汚し、地面に墜落していく口径が映し出されていた。
「……スラスタ、やられたね」
「うむ」隣の霧香が呟く言葉に、瀬那が軽く頷いて同意する。
「だが、一真も彼奴あやつのスラスタを仕留めた。もしこれで撃墜判定をまだ喰らってないとしたら、勝負はこれで五分になる」
「……得意の空中、三次元機動戦を封じられたからね、あの。ひょっとしたら、瀬那。一真にも、勝機、あるかもよ……?」
「撃墜判定を頂いてなければ、だがな。どのみちこうなってしまえば、我々に出来るのは祈ること以外にない……」
 腕組みをしながら、瀬那は隣に立つ己が従者・霧香と共にただその推移を見守る。胸の奥では、彼の勝利を祈り続けながら。
(一真よ、其方は斯様かようなところで朽ちる男ではなかろう。立て、立って彼奴あやつと、ステラと決着を付けてみせよ)
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界災派 ~1514億4000万円を失った自衛隊、海外に災害派遣す~

ス々月帶爲
ファンタジー
元号が令和となり一年。自衛隊に数々の災難が、襲い掛かっていた。 対戦闘機訓練の為、東北沖を飛行していた航空自衛隊のF-35A戦闘機が何の前触れもなく消失。そのF-35Aを捜索していた海上自衛隊護衛艦のありあけも、同じく捜索活動を行っていた、いずも型護衛艦2番艦かがの目の前で消えた。約一週間後、厄災は東北沖だけにとどまらなかった事を知らされた。陸上自衛隊の車両を積載しアメリカ合衆国に向かっていたC-2が津軽海峡上空で消失したのだ。 これまでの損失を計ると、1514億4000万円。過去に類をみない、恐ろしい損害を負った防衛省・自衛隊。 防衛省は、対策本部を設置し陸上自衛隊の東部方面隊、陸上総隊より選抜された部隊で混成団を編成。 損失を取り返すため、何より一緒に消えてしまった自衛官を見つけ出す為、混成団を災害派遣する決定を下したのだった。 派遣を任されたのは、陸上自衛隊のプロフェッショナル集団、陸上総隊の隷下に入る中央即応連隊。彼等は、国際平和協力活動等に尽力する為、先遣部隊等として主力部隊到着迄活動基盤を準備する事等を主任務とし、日々訓練に励んでいる。 其の第一中隊長を任されているのは、暗い過去を持つ新渡戸愛桜。彼女は、この派遣に於て、指揮官としての特殊な苦悩を味い、高みを目指す。 海上自衛隊版、出しました →https://ncode.syosetu.com/n3744fn/ ※作中で、F-35A ライトニングⅡが墜落したことを示唆する表現がございます。ですが、実際に墜落した時より前に書かれた表現ということをご理解いただければ幸いです。捜索が打ち切りとなったことにつきまして、本心から残念に思います。搭乗員の方、戦闘機にご冥福をお祈り申し上げます。 「小説家になろう」に於ても投稿させて頂いております。 →https://ncode.syosetu.com/n3570fj/ 「カクヨム」に於ても投稿させて頂いております。 →https://kakuyomu.jp/works/1177354054889229369

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜

華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日  この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。  札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。  渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。  この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。  一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。  そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。 この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。 この作品はフィクションです。 実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。

クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります

まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。 そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。 選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。 あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。 鈴木のハーレム生活が始まる!

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます

竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論 東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで… ※超注意書き※ 1.政治的な主張をする目的は一切ありません 2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります 3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です 4.そこら中に無茶苦茶が含まれています 5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません 6.カクヨムとマルチ投稿 以上をご理解の上でお読みください

軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~

takahiro
キャラ文芸
 『船魄』(せんぱく)とは、軍艦を自らの意のままに操る少女達である。船魄によって操られる艦艇、艦載機の能力は人間のそれを圧倒し、彼女達の前に人間は殲滅されるだけの存在なのだ。1944年10月に覚醒した最初の船魄、翔鶴型空母二番艦『瑞鶴』は、日本本土進攻を企てるアメリカ海軍と激闘を繰り広げ、ついに勝利を掴んだ。  しかし戦後、瑞鶴は帝国海軍を脱走し行方をくらませた。1955年、アメリカのキューバ侵攻に端を発する日米の軍事衝突の最中、瑞鶴は再び姿を現わし、帝国海軍と交戦状態に入った。瑞鶴の目的はともかくとして、船魄達を解放する戦いが始まったのである。瑞鶴が解放した重巡『妙高』『高雄』、いつの間にかいる空母『グラーフ・ツェッペリン』は『月虹』を名乗って、国家に属さない軍事力として活動を始める。だが、瑞鶴は大義やら何やらには興味がないので、利用できるものは何でも利用する。カリブ海の覇権を狙う日本・ドイツ・ソ連・アメリカの間をのらりくらりと行き交いながら、月虹は生存の道を探っていく。  登場する艦艇はなんと57隻!(2024/12/18時点)(人間のキャラは他に多数)(まだまだ増える)。人類に反旗を翻した軍艦達による、異色の艦船擬人化物語が、ここに始まる。  ――――――――――  ●本作のメインテーマは、あくまで(途中まで)史実の地球を舞台とし、そこに船魄(せんぱく)という異物を投入したらどうなるのか、です。いわゆる艦船擬人化ものですが、特に軍艦や歴史の知識がなくとも楽しめるようにしてあります。もちろん知識があった方が楽しめることは違いないですが。  ●なお軍人がたくさん出て来ますが、船魄同士の関係に踏み込むことはありません。つまり船魄達の人間関係としては百合しかありませんので、ご安心もしくはご承知おきを。かなりGLなので、もちろんがっつり性描写はないですが、苦手な方はダメかもしれません。  ●全ての船魄に挿絵ありですが、AI加筆なので雰囲気程度にお楽しみください。  ●少女たちの愛憎と謀略が絡まり合う、新感覚、リアル志向の艦船擬人化小説を是非お楽しみください。またお気に入りや感想などよろしくお願いします。  毎日一話投稿します。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...